日産が新型「キックス」の価格を発表 ライバルSUVと比べてみると?
2024.09.12 デイリーコラムプラットフォームを刷新
北米で発売される新型「日産キックス」の価格が2024年8月に発表された。それによれば北米仕様車の車両価格は2万1830ドル(約315万円)からとのこと。今回は、この北米版新型キックスと、今後導入されるだろう日本仕様について考えてみたい。
ご承知のとおり現在日本で販売されている現行型キックスは、2020年6月に発売された。ボディーサイズが全長×全幅×全高=4290×1760×1610mmで、ホイールベースが2620mmとなるコンパクトSUVだ。
海外市場向けには何種類かの自然吸気エンジンが搭載されていたが、日本では1.2リッター直3の発電専用エンジンと駆動用モーターを組み合わせた「e-POWER」一択。基本となる車台はルノーが開発を主導したグローバルプラットフォームの「CMF-A」や「CMF-B」ではなく、「マーチ」や新興国向け小型車に採用されてきた「Vプラットフォーム」の進化版だった。
それに対して新型の北米仕様には、前述したグローバルプラットフォームCMF-Bが用いられた。ボディーは全長×全幅×全高=4366×1800×1630mmと、わずかに大型化。ホイールベースも2657mmと、37mm延長されている。
北米仕様のパワーユニットは今のところ最高出力141PSの2リッター直4自然吸気エンジンのみで、トランスミッションは最新の「エクストロニックCVT」。駆動方式は、北米向けキックスとしては初めてフルタイム4WDも設定され、そのドライビングモードには滑りやすい路面向けの「SNOW」が追加された。
運転支援システムは、全方位運転支援システム「セーフティーシールド360」が全車に標準装備とされ、スポーティーな「SR」グレードは、北米向けキックスとしては初めて「プロパイロット」も搭載している。
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北米での価格は約315万円から
新型キックスのエクステリアデザインは、幅広なスタンスとフェンダーが、比較的すっきりとしたイメージの上半身といい意味で対照をなしている。「ハイエンドスニーカーのソールにインスパイアされた」という複雑な3次元形状のサイドシルも、絶妙なバランス感の構築に一役買っている。
インテリアは、タフで堅固な印象が強いエクステリアに対して「繊細でしゃれたデザイン」といったところで、近年の「ノート」や「ノート オーラ」の雰囲気にどことなく近い。北米仕様の標準メーターは7インチだが、スポーティーな上級グレードSRでは12.3インチにアップグレードされ、2つの表示モード(伝統的なクラシックモードと、機能豊富な拡張ビューモード)を備えることになる。
新型日産キックスの北米における車両価格は以下のとおり。
- S:2万1830ドル(約315万円)
- S AWD:2万3330ドル(約337万円)
- SV:2万3680ドル(約342万円)
- SV AWD:2万5330ドル(約366万円)
- SR:2万6180ドル(約378万円)
- SR AWD:2万7680ドル(約400万円)
日本市場への導入時期は未定であり、そもそも導入されるかどうかも不明なわけだが、導入されるとしたら2025年春ごろだろうか。2025年夏あるいは2025年中的なスケジュールになってしまう可能性もあるが、ライバルと目される「ホンダ・ヴェゼル」が好調な今、日産もあまりチンタラしている時間的余裕はないはずだ。
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ライバルに対するアドバンテージは?
新型キックスが日本へも導入された場合、ライバルとなるのは前述したヴェゼルと、依然売れ行き好調な「トヨタ・ヤリス クロス」ということになるだろう。
もちろん「日本仕様の価格次第」ではあるが、新型キックスは、日本市場においてライバルたちと互角、または互角以上に戦える資質を持ったコンパクトSUVであるように思える。
現在日本で販売されているキックスは活発なe-POWERユニットとコンパクトクラスとしては広めな室内が魅力となるナイスなSUVだが、新興国向けプラットフォームを採用しているという点がカーマニアかいわいにマイナスイメージであった。
Vプラットフォームの進化版も決して悪いものではなく、ややラフな印象についても「これはこれで悪くない! むしろ青春時代を思い出して元気になれる!」的に言い換えることはできる。だがその言い換えは「自動車ライターとしての客観的評価」であり、「自分のカネを出して買うモノ」として考える場合には、個人的には検討対象から外すことになるのが現在のキックスだ。
だが新型には「ルノー・ルーテシア」などと同じCMF-Bプラットフォームが採用されたことで、乗り味についての印象は大きく好転しているはず。そしてデザインはご覧のとおりのイケてる感じとなり、ボディーサイズおよび室内寸法も、BセグメントのSUVとしてはより十分なものとなった。ここは「いいクルマだが、ちょっと狭い」という欠点を抱えるヤリス クロスに対しての大きなアドバンテージであり、キックスに似たサイズ感であるヴェゼルに対しても高い戦闘力を持つことになるはずだ。
とはいえ、すべては価格次第だろう。北米での価格が日本円にして約315万円であるベースグレードの日本仕様が、e-POWER化に伴って350万円を超えるようなら「……ちょっと狭いけど、お安いヤリス クロスにしとくか」と考える人も多そうだ。しかし中間グレードのSVに相当するグレードでも、e-POWER化したうえで、300万円台半ばぐらいの価格で日本に導入できたなら──ヤリス クロスとヴェゼルを食う可能性は大いにあるだろう。
(文=玉川ニコ/写真=日産自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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