歴代の記念モデルでたどる「マツダ・ロードスター」の35年
2024.10.22 デイリーコラム初代の誕生から35年
「マツダ・ロードスター35周年記念車」が発表された。10月19日(土)、20日(日)の2日にわたって富士スピードウェイで開催された「MAZDA FAN FESTA(マツダファンフェスタ)2024 at FUJI SPEEDWAY」の初日、土曜日のことだった。
“人馬一体”を掲げた初代ロードスターのデビューは1989年2月のシカゴオートショー。海外名「MX-5ミアータ」は、無関係だけど、日本全国の宮田さんになんとなくうれしい思いをもたらした。国内発売は同年9月。それから10年の歳月があっという間に流れ、1998年の年の瀬、10周年記念車が発表された。それは「イノセントブルーマイカ」なる濃紺のボディー色をまとった2代目のNB型で、内装は黒を基調にブルーを組み合わせたツートン。世界統一仕様のこれは、国内向けが500台、海外向けが7000台の限定だった。
20周年記念車は2009年7月発売で、こちらは3代目NC型のボディーを「クリスタルホワイトパールマイカ」という白地で包み、レカロの赤と黒のバケットシートを真ん中に置いて、あたかも日の丸のごとしだった。発表の時点でシリーズ累計生産台数は86万台に達し、ギネスの世界記録「小型オープンスポーツカーカテゴリー生産台数世界一(80万台以上)」に認定されてもいた。リーマンショック直後の世界恐慌のさなか、ニッポンの心意気を見せたのだった。
その5年後、25周年記念車が発売された。同じくNC型をベースに、国内はわずか25台の限定で、ロードスターの存続が危ぶまれていた時期だったかもしれない。ボディー色は広島カープの色でもある「ソウルレッドプレミアムレッド」、ルーフはブラックの、いかにも熱きスポーツカー。内装にはオフホワイトのレザーシートがおごられていた。おまけにピストン、コネクションロッド、フライホイールなどエンジンの回転系には厳選部品を使用。ルーフは意外や自動折りたたみ式ハードトップのみだった。
30周年記念車は2019年4月発売で、現行ND型がベースだった。ND型は2015年デビューだから、すでに4年を経ていた。ボディー色は専用色の「心が沸き立つ一日の始まりを予感させる、朝焼けのような『レーシングオレンジ』」で、レカロのシート、ビルシュタインのダンパー(MT車のみ)、ブレンボのフロントブレーキキャリパーと、世界の一流品を標準装備。世界限定3000台で、国内はリトラクタブルハードトップの「RF」と合わせて150台(のちに249台に拡大)。価格はMTのみのソフトトップで368万2800円。ロードスターはこの時点で累計生産台数100万台超に到達。朝焼けのようなレーシングオレンジ色は、日出る国の広島から世界の熱狂的ファンに向けての贈り物だった。
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35周年記念車のテーマは「熟成」
さて、では35周年記念車はどんな装いとされたのか? 担当した岩内義人チーフデザイナーによると、「ヴィンテージ方向」でまとめたものだという。ボディー色は上品かつあでやかな「アーティザンレッドプレミアムメタリック」、ソフトトップは麻のような味わいの素材のベージュで、ドアを開けるとタン(淡い茶色)の世界が広がっている。ボディー側面のドアの後ろにシリアルナンバー入りの「35th ANNIVERSARY」のバッジが貼られ、シートのヘッドレスト部分に35周年記念ロゴが入る。記念ロゴの月桂(げっけい)樹の葉っぱはマツダのMマークになっている。
台数のしばりはない。注文したひと、すべてが購入できる。価格は未発表ながら、ソフトトップで300万円台後半、RFで400万円前半を予定しているという。
デザインのポイントは「熟成」。これは2015年にデビューの現行ND型ロードスターが来年10周年、2023年のマイナーチェンジで熟成が極まるタイミングをとらえてのことで、深みのある赤のボルドーから鮮やかな赤のバーガンディーまで光の当たり具合によって色を変えるアーティザンレッドはすなわちワインレッドの心。岩内チーフデザイナーによると、裏テーマは「ワインとチーズ」だそうで、なるほど熟成を思わせる。欧米でのほうがウケるかも……。
なお、ロードスター35周年記念車の発表の場で、次のNE型についても語られている。現在のロードスターの開発責任者である齋藤茂樹主査は「なんにもやっていない」と明言。マイナーチェンジを施したばかりだし、「まだまだ当分来ない」という。いずれにせよ、次のロードスターも、「だれが乗っても楽しい」「軽快」で「アフォーダブル」というところは変わらない、と齋藤主査。1989年、初代ロードスターが発売された年にマツダに入社した齋藤青年は、実はロードスターには関心がなかった。「RX-7」のファンだったからだ。ところが、当時のロードスターの主査の貴島孝雄さんからこう言われて、NB型から関わることになる。
「軽さはひとの琴線に触れるんだよ」
現行ND型の次の仕様の開発は進めているという。それは往年のファンの楽しめるような装いで、例えば、初代NA型にあった「Vスペシャル」、グリーンのボディー色にタンの革シート、のようなトラッド仕様になるかもしれない……というような会話が岩内チーフデザイナーも交え、MCの竹岡 圭さんとの間でなされていた。マツダ・ロードスターの魅力は、ひとの琴線に触れるところにあるのだ。
(文=今尾直樹/写真=マツダ、鈴木ケンイチ/編集=藤沢 勝)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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