日産自動車が90%超の大幅減益 大規模リストラと三菱自動車株の売却で今後はどうなる?
2024.11.28 デイリーコラム有名企業の1年分に匹敵する売り上げが吹っ飛んだ
さまざまな報道を通じて先刻ご承知のことと思うが、日産自動車の状況が厳しい。まぁ日産が苦境に陥るのは「定期」のような気がしないでもないが、日産の2024年4~9月期連結業績は、営業利益が前年同期比90%減(!)の329億円となり、通期予想も大幅に下方修正された。第1四半期の時点では「通期で営業利益5000億円」という、前年比で1000億円減にとどまる見立てをした日産だったが、今回は1500億円にまで下方修正されているのだ。さらにグローバルで生産能力を20%削減するほか、人員を9000人削減するリストラ計画も策定。そして提携先である三菱自動車の持ち株34%のうち10%を売却することも発表されている。
2024年3月に策定された中期経営計画「The Arc」では「2026年度までに、2023年度比100万台の販売増と営業利益率6%以上を目指す」「2026年度までに16車種の電動車両を含む30車種の新型車を投入」などと景気のいい話をしていた日産だったが、楽観的な計画は、わずか8カ月で絵に描いた餅となった。
今回、再び日産が苦境に立たされることになった要因は「米国と中国での販売不振による採算の悪化」であるとされている。特にアメリカ市場における収益悪化は激しい。2023年4~9月期の連結営業損益は2413億円の黒字だったが、2024年の4~9月期は41億円の赤字に。ちょっとした有名企業の1年分の売り上げに相当する金額(2454億円)が、半期で吹っ飛んでしまった計算だ。
果たして日産は今後どうなるのか? あまりにも定期的に思える「日産の苦境」だが、今度という今度は完全復活できるのだろうか?
もちろん未来のことなど誰にもわからないわけだが、個人的には「……ちょっと難しいのではないか?」とも感じている。なぜならば、大変失礼ながら今現在の日産は「手に入れたいブランド」では決してなく、また「ぜひ手に入れたいクルマ」もそのラインナップになかなか見当たらないからだ。
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安いから売れるわけではない
まずはグローバルで見た場合の稼ぎ頭である、アメリカにおける日産のブランド力と商品力について考えてみよう。といっても筆者は在日日本人であるため、アメリカに住まう方々が何を「いい!」と感じるものなのか、正味のところはわからない。だがアメリカ市場における自動車ディーラーへのインセンティブ(販売奨励金)の額を見れば、アメリカの人々が日産ブランドとその車両を内心でどう見ているかは、おおよそ見当がつく。
調査会社によれば、2024年6月の日産の一台あたりインセンティブ額は約4000ドル(約60万円)で、これはトヨタの2.5倍、ホンダの1.6倍であったという。つまり今、アメリカにおける日産車とは「安いから(値引きがデカいとか、ローン金利0%のキャンペーンをやってるから)選ぶブランド」になっているのだ。あるいは、北米における主力車種である「ローグ」(日本名「エクストレイル」)の苦戦から考えると、「安くても積極的には選ばないブランド」になってしまっている可能性すらあるだろう。
そうなったとき、販売台数を回復させるためにさらなるインセンティブをじゃんじゃん追加していくと(つまりエンドユーザーがさらに安く購入できるように仕向けていくと)、ブランドというものは簡単に死ぬ。筆者は消費財メーカーに勤務していた時代、そういった“死亡例”を嫌というほど見てきた。
モノは、安いから売れるわけではない。いや値引きをすれば一時的には売れるのだが、すぐにまた売れなくなる。それゆえ、多額のインセンティブを用意することではなく「エンドユーザーが本当に欲しいと思えるモノ」をつくるのが、業種を問わず、メーカーのやるべき仕事なのだ。
だが状況を見る限り日産は、稼ぎ頭である北米市場において“それ”ができていないのだろう。したがって「……ちょっと難しいのではないか?」と思うのである。
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「技術の日産」アピールには意味がない?
そして日本市場においても、日産のラインナップには「これでなきゃダメなんだ!」とエンドユーザーに思わせるモデルがなかなか見当たらない。
もちろん「GT-R」や「フェアレディZ」は、人にそう思わせる一台ではあるのだが、あまりにもニッチである。イメージリーダーとしては機能しても、企業の経営を支える“数字”にはなり得ない。数字が稼げるカテゴリーにおける「これでなきゃダメなんだ!」と思える日本仕様の日産車は、筆者が見る限りでは「ノート」および「ノート オーラ」だけだ。この2車種は、「他のブランドにはこういった“小さなハイセンスモデル”がない」という意味で代替がきかない。それ以外の車種は──もちろんいずれも悪いモデルではないのだが、残念ながら「他車での代替もおおむね可能である」と言えてしまう。
ならば日産という会社は今後どうすればいいのか──という問題の詳細については、筆者は語るべき言葉を持たない。巨大グローバル企業のかじ取りをどうすべきかなど、筆者にわかるはずもないからだ。
ただしひとつだけ言えるというか思うのは、「技術の日産」的なプレゼンスおよび方向性は、さすがにもうやめたほうがいいのではないか? ということだ。
日産は昔から、自社の技術に相当な自信を持っているのかもしれない。だが、ごく一部のマニアを除いたほとんどのエンドユーザーがクルマに求めているのは「技術そのもの」ではない。いやもちろん技術は大切なのだが、人は「その技術が自分の生活にもたらすもの」に興味を持つのだ。
それゆえ「技術の日産」アピールには意味がないばかりか、もしも日産の社内が「人々が抱えているjob(片づけるべき仕事)を解決する」というマーケティングの超基本ではなく、「とにかく技術でぶっちぎればいい」という思想に凝り固まっているとしたら(……そんなことはないと信じたいが)、今後も日産の再浮上はないだろう。
ただ、繰り返しになるが「そんなことはない」と信じたい。いちカーマニアとしてjob解決型ニューモデルの登場と、日産の復活を期待している。
(文=玉川ニコ/写真=日産自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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