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マツダCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン(4WD/8AT)

あともう少し 2025.01.06 試乗記 高平 高輝 大きな期待とは裏腹に賛否両論の仕上がりだったマツダのラージモデル商品群だが、第2弾にして新たなフラッグシップの「CX-80」は発売を遅らせてまでつくり込みを重ねてきたという。乗り心地をはじめとした数々の課題はどこまで解消されたのか、400km余りのドライブで検証した。
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「CX-60」のその後

できれば避けたいなあ、と思っていると、まず間違いなく電話がかかってくることを「webCGの法則」という(内輪の話です)。お題はCX-80だという。案の定である。マツダのラージ商品群第2弾にして3列シートのフラッグシップSUVだ。だが、それ以前にあのCX-60のロングホイールベース版でしょ、との思いがよぎる。あれやこれやの問題はちゃんと改善されているのだろうか?

ちょうど2年前の今ごろ、今回のCX-80と同じ直6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドを積むCX-60について「今買うべきクルマではない」と書いた(参照)。だいぶご批判もいただきました。俺が買ったクルマにケチつけるな、というもっともな意見ですが、私としてはラフで粗雑なトランスミッション制御や乗り心地を見て見ぬふりはできなかったのです。いや、気にならない方はもちろんそれでいいんです。でも、その後はランニングチェンジで手直しされたばかりか、度重なるリコールが行われたことはご存じのとおり。ほらねやっぱり、と言いたいわけじゃないけれど、振り返ればやはり完成形ではない状態で発売されたと判断せざるを得ないのである。

販売状況もその経緯を正直に反映している。発売直後には月間4000台を超えた販売台数もその後急落。2024年に入ってからは500台前後にとどまり、その座をCX-60に譲るはずだった「CX-5」にもまったくかなわない状況が続いている。CX-5のロング版である「CX-8」は生産終了したが、CX-5は売れているのだからやめるにやめられない、ということか。

国内では「CX-60」に続くラージモデル商品群の第2弾として導入される「マツダCX-80」。グリル内の3本のシルバーラインが前から見たときの80の識別点だ。
国内では「CX-60」に続くラージモデル商品群の第2弾として導入される「マツダCX-80」。グリル内の3本のシルバーラインが前から見たときの80の識別点だ。拡大
ボディーの全長はほぼ5mの4990mm。3120mmのホイールベースは「トヨタ・センチュリー(セダン)」より30mm大きい。フロントよりもリアのほうがドアが長いクルマはそうそうない。
ボディーの全長はほぼ5mの4990mm。3120mmのホイールベースは「トヨタ・センチュリー(セダン)」より30mm大きい。フロントよりもリアのほうがドアが長いクルマはそうそうない。拡大
394万3500円~712万2500円の価格帯で全18モデルをラインナップする「マツダCX-80」。この試乗車はマイルドハイブリッドディーゼル「XDハイブリッド」の中間グレード「エクスクルーシブモダン」(車両本体価格596万7500円)。
394万3500円~712万2500円の価格帯で全18モデルをラインナップする「マツダCX-80」。この試乗車はマイルドハイブリッドディーゼル「XDハイブリッド」の中間グレード「エクスクルーシブモダン」(車両本体価格596万7500円)。拡大
3.3リッター直6ディーゼルターボエンジンは最高出力254PSと最大トルク550N・mを発生。マイルドハイブリッド付きのほうがエンジン単体でもパワフルだ。
3.3リッター直6ディーゼルターボエンジンは最高出力254PSと最大トルク550N・mを発生。マイルドハイブリッド付きのほうがエンジン単体でもパワフルだ。拡大
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シフトショックはほぼ解消したが……

3列シートのCX-80は、結局予定よりほぼ1年遅れでの登場となった。6気筒ディーゼルターボとそのマイルドハイブリッド仕様、そして4気筒ガソリンのプラグインハイブリッドという3種類のパワーユニットをラインナップするが、イチ押しと目される「XDハイブリッド」は最高出力254PS/3750rpmと最大トルク550N・m/1500-2400rpmを生み出す3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボに加えて48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載。トルクコンバーターの代わりに多板クラッチを備えた8段ATの4WDのみとなる。エンジンと16.3PS/153N・mの最高出力とトルクを発生するモーターのスペックはCX-60と同一だ。

大きく重く(CX-60比で+150kg以上)なっているにもかかわらず、モーターアシストのおかげで出足は力強く(それに比べるとディーゼルターボは排気量の割にはちょっと低速のピックアップが物足りない)、その先の加速もなかなかたくましい。直6にしては滑らかさが若干足りない感じはするが、それよりも気になるのはトルコンレスのトランスミッションの変速マナーである。

CX-60でもオープンロードを走る場合には問題なし。というか、自分のペースで飛ばせるような山道や郊外のすいた道路では、ダイレクトで切れの良い変速は気持ちいいといってもいいぐらいだったのだが、街なかや流れの遅いバイパスのような環境、つまりわずかな加減速を繰り返す、または停止するために緩やかに減速というような場面では、迷いながら断続したあげくにガコンというシフトショックを生じることが多かった。CX-80ではそれがほぼ解消していた。正確には交通量が多いバイパスを走行中、2、3度コツンというショックを感じたが、気にならないぐらいのレベルといっていい。

ただし、低速ではどこかで動物がうなっているような「グルグルグー」という異音はまだ聞こえるし、回生制御ももう一段洗練させるべきである。直列6気筒+マイルドハイブリッドのパワートレインでこのような例は他にない(もっとも他はプレミアムブランドだが)。すっきり解消といかないのは何か特段の理由があるのだろうか。

エンジン縦置きのラージプラットフォームの足まわりはフロントがダブルウイッシュボーンでリアがマルチリンク。街なかをはじめ、ドイツのアウトバーンやニュルブルクリンクなどでも検証を重ねて鍛えたという。
エンジン縦置きのラージプラットフォームの足まわりはフロントがダブルウイッシュボーンでリアがマルチリンク。街なかをはじめ、ドイツのアウトバーンやニュルブルクリンクなどでも検証を重ねて鍛えたという。拡大
キャビンは最新のマツダ車らしい明るく上質感のある空間だ。「エクスクルーシブモダン」では随所にナッパレザーが使われる。
キャビンは最新のマツダ車らしい明るく上質感のある空間だ。「エクスクルーシブモダン」では随所にナッパレザーが使われる。拡大
前席にはヒーター&ベンチレーションを完備。ステアリング調整が電動というのもぜいたくだ。
前席にはヒーター&ベンチレーションを完備。ステアリング調整が電動というのもぜいたくだ。拡大
「CX-80」の2列目にはベンチシート(3人掛け)とセンターウォークスルーシート(2人掛け)もあるが、「エクスクルーシブモダン」は立派なセンターコンソールを備えた豪華なキャプテンシート(2人掛け)を装備。ヒーター/ベンチレーション機能も付いている。
「CX-80」の2列目にはベンチシート(3人掛け)とセンターウォークスルーシート(2人掛け)もあるが、「エクスクルーシブモダン」は立派なセンターコンソールを備えた豪華なキャプテンシート(2人掛け)を装備。ヒーター/ベンチレーション機能も付いている。拡大
3列目シートは2人掛け。ミニバンほどではないが全長5m級だけあって普通に使える広さとサイズだ。
3列目シートは2人掛け。ミニバンほどではないが全長5m級だけあって普通に使える広さとサイズだ。拡大

乗り心地は納得できる

もうひとつの心配ごと、乗り心地については思っていたよりも改善されていた。路面の段差を乗り越えた際など、ごくまれに突き上げを感じることがないわけではないが、CX-60のような粗野で引っかかりを感じる上下動ではない。発売スケジュールを遅らせてまで手直しをした効果が表れているといえよう。むしろ人によっては、もっとビシッと締まったダンピングが好ましいというかもしれないが、ホイールベース(および全長)がCX-60より250mm長いこともあってスタビリティーは確保されているから、全長5mの大型SUVとしてふさわしいセッティングだと感じた。

さすがに俊敏とはいえないけれど、リニアで安定感があるコーナリングも長いホイールベースを持つSUVとして妥当であり、多少飛ばしても不安はない。ただし、CX-60同様、ロックトゥロックが3回転以上も回るステアリングはちょっと遅いなあと感じるときもある。ちなみに最小回転半径は5.8mと、長いホイールベースの割にはまずまずである(CX-60は5.4m)。

「CX-60」ではリアサスがうまくストロークしていない感じがあったが、思っていたよりもよくなっていた。
「CX-60」ではリアサスがうまくストロークしていない感じがあったが、思っていたよりもよくなっていた。拡大
センターコンソールやドアパネルなどには光沢のあるウッド調パネルが貼られる。シフトセレクターまわりの樹脂は国産車だとピアノブラックのケースが多いが、マット調にするのがマツダ流。
センターコンソールやドアパネルなどには光沢のあるウッド調パネルが貼られる。シフトセレクターまわりの樹脂は国産車だとピアノブラックのケースが多いが、マット調にするのがマツダ流。拡大
メーターは12.3インチのフル液晶タイプ。東京からずっと上り基調の道のりで静岡の朝霧高原まで行って撮影したため燃費が14.3km/リッターと表示されているが、帰りの下りで盛り返し、最終的な車載燃費計の数値は16.3km/リッターだった。
メーターは12.3インチのフル液晶タイプ。東京からずっと上り基調の道のりで静岡の朝霧高原まで行って撮影したため燃費が14.3km/リッターと表示されているが、帰りの下りで盛り返し、最終的な車載燃費計の数値は16.3km/リッターだった。拡大

クルマは巧遅を尊ぶ

トランスミッション関係のリコールを繰り返した結果、予期せぬ変速ショックは大幅に減ったことは前述したが、その代わりということなのか、当初のCX-60の特長というべき好燃費は明らかに後退したようだ。CX-60のXDハイブリッドのWLTCモード燃費は21.0km/リッターで、実際にも高速道路を巡航すると20km/リッターを楽に超えたものだが、CX-80(こちらのWLTCモードは19.0km/リッター)はせいぜい16km/リッターぐらいだった。これも大きな4WDのSUVとしては決して悪い数字ではないが、CX-60ほどの驚きはない。もしかするとクラッチ/モーター制御の改良とトレードオフということなのだろうか。

渋滞や低速走行でのドライバビリティーの洗練度はまだ太鼓判を押すほどではないが、総じてCX-80の完成度には正直ひと安心である。拙速は巧遅に勝るということわざもあるが、クルマの場合は多少遅くなってもいいから万全の状態であってほしい。いまさら言うまでもないが、後から改善されたとしても、ユーザーはその度に買い替えるわけにはいかないのである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=マツダ)

3列目使用時でも荷室の容量は258リッターを確保。重ねればゴルフバッグが横向きに2つ積める(6人乗車で2つかという議論はあるが)。
3列目使用時でも荷室の容量は258リッターを確保。重ねればゴルフバッグが横向きに2つ積める(6人乗車で2つかという議論はあるが)。拡大
3列目シート格納時の荷室容量は687リッター。シートの背面は完全にフラットになる。
3列目シート格納時の荷室容量は687リッター。シートの背面は完全にフラットになる。拡大
荷室の床下にはトノカバーを固定できる。斜めにしてまで収納できるようにしたところに執念を感じる。
荷室の床下にはトノカバーを固定できる。斜めにしてまで収納できるようにしたところに執念を感じる。拡大

テスト車のデータ

マツダCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm
ホイールベース:3120mm
車重:2120kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:254PS(187kW)/3750rpm
エンジン最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/1500-2400rpm
モーター最高出力:16.3PS(12kW)/900rpm
モーター最大トルク:153N・m(15.6kgf・m)/200rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンスSUV)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:596万7500円/テスト車=623万1500円
オプション装備:ボディーカラー<マシングレープレミアムメタリック>(5万5000円)/電動パノラマサンルーフ<チルトアップ機構付き>(12万1000円) ※以下、販売店オプション ナビゲーション用SDカード(8万8000円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:5798km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:401.5km
使用燃料:23.6リッター(軽油)
参考燃費:17.0km/リッター(満タン法)/16.3km/リッター(車載燃費計計測値)

マツダCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン
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