ドゥカティ・ハイパーモタード698モノ(6MT)
アナタの本気に応えてくれる 2025.05.23 JAIA輸入二輪車試乗会2025 超軽量な車体をパワフルなエンジンで振り回す「ドゥカティ・ハイパーモタード」。その最新モデルが「ハイパーモタード698モノ」だ。車重はわずかに151kg! それを77.5PSの単気筒エンジンで駆るだいご味をリポートする。挑戦的な走りにこそ価値がある
ドゥカティ・ハイパーモタードは筆者にとって、同級生のような親近感を覚えるバイク。ファーストモデルがデビューした2007年は、自分が初めて二輪専門誌の編集部に身を寄せて数年後のことだし、初代のときも2代目のときも、欧州でのローンチへ行くチャンスにめぐまれた。「こんなオレでも海外試乗!」のドキドキワクワクはいまでもハッキリ覚えている。しかしあらかじめ誤解のないよう言っておくと、同級生だから付き合いやすい、いわんやフレンドリーという意味では決してない。ハイパーモタードはいつもお高くとまっている、ちょっと面倒くさそうな猛禽(もうきん)類系美人だからだ。
単気筒になったハイパーモタードに試乗するのは今回が初めてなのだが、過去のモデルに比べて変わった印象の最たるものが、まさにそのエンジンのキャラだった。ビュンビュン回って底なしのスムーズネスとハイパワーを発揮したかつてのL型2気筒。それがシングルになって、いったいどう変わったのだろう? 「もしかしたら牙を抜かれたのか?」と想像した自分は、ごめんなさい。あきらかに浅薄でした。1万回転手前でフルパワーの77.5PSを発生する単気筒エンジンは、目が覚めるほどシャープで……身に余るほどのパンチ力を発揮する。フルスロットルなんて怖くて、面白半分にはできない!
新開発の水冷単気筒659ccエンジン「スーパークアドロ・モノ」は、ドゥカティLツインのなかでも最も高性能といわれた、「1299パニガーレ」に搭載された高出力エンジンがベースだという。ピストンや燃焼室形状、チタンバルブなど、さまざまな要素がパニガーレ由来だ。しかも3000rpmから最大トルクの7割を発生させ、さらに一次振動をキャンセルするバランスカウンターシャフトも備えている。低回転での扱いやすさと振動の小ささは、短い試乗時間であっても十分に感じることができた。
しかし、このエンジンの本領は高回転域にある。そして残念ながら、筆者のスキルで77.5PSの本領を発揮させることはまったくできなかった。付け加えると、ハイパーモタード史上最も軽量な151kgというライトボディーも、走りのパフォーマンスに素晴らしく効いているように思う。スロットルオン/オフ時の姿勢変化で少々戸惑わせつつ、より過激に、まるでライダーを煽(あお)るかのようにレスポンスすることこそが、このマッチョマンの性的嗜好なのだ。マシンコンセプトの大枠は、スーパーモタードのスタイルを大胆に引用した公道仕様のスーパースポーツということになるだろうし、この新型でもそこにブレはなかった。
歴代のハイパーモタードに共通することだが、この698モノの足つきも、さしてよくはない。でもそんなことは大した問題ではなく、180万円近い対価を払うライダーにとっては、足つきなんてささいなことより、その抜きんでた走行パフォーマンスとかみつくようなファイティングポーズにこそ、他をもって代えがたい価値がある。敷居は高いしお高くもとまっているけれど、あなたの「なんとかオレの手中に収めて存分に振り回したい!」という静かな決意に、ハイパーモタード698モノは、キッチリ全力で応えてくれるはずである。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1443mm
シート高:864mm
重量:151kg(燃料除く)
エンジン:659cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:77.5PS(57kW)/9750rpm
最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:177万8000円~
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇
【トップページへ戻る】
【前】GASGAS SM700(6AT)
【次】ドゥカティ・スクランブラー ナイトシフト(6MT)

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
-
BMW S1000RR(6MT) 2025.6.6 リッタークラスの4気筒エンジンに、ウイングレット付きのカウルを備えた「BMW S1000RR」に試乗。そのパフォーマンスは意外やストリートでも楽しめるものだったが、走っていると、やっぱりサーキットの景色が頭に浮かんでしまうのだった。
-
トライアンフ・スピードツイン1200RS(6MT) 2025.6.1 排気量1.2リッターの、巨大なパラツインエンジンを搭載した「トライアンフ・スピードツイン1200RS」。どう猛さとジェントルさを併せ持つブリティッシュロードスターは、ストリートを楽しむバイクの最適解ともいえる一台に仕上がっていた。
-
ロイヤルエンフィールド・ベア650(6MT) 2025.5.30 インドの老舗、ロイヤルエンフィールドが世に問うた新型スクランブラー「ベア650」。スペック的には尖(とが)ったところのない一台だが、このマシンが日本でも注目を集めている理由はなにか? どこか懐かしくもある、“普通のバイク”ならではの魅力に触れた。
-
ドゥカティ・スクランブラー ナイトシフト(6MT) 2025.5.25 人気の「ドゥカティ・スクランブラー」シリーズから、カフェレーサースタイルの「ナイトシフト」に試乗。伝統のLツインエンジンを搭載した軽快なロードスポーツは、どんなシーンでも乗りやすく、それでいてドゥカティらしいスポーツ性も備えたマシンだった。
-
GASGAS SM700(6MT) 2025.5.18 競技の世界で名をはせるスペインのGASGAS(ガスガス)。彼らが初めて手がけたストリートマシンが、この「SM700」だ。700cc級の特大単気筒エンジンと、150kgを切る軽さが自慢のモタードは、腕っこきでないと乗りこなせない、手ごわい一台に仕上がっていた。
-
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ロータス・エメヤR編
2025.12.3webCG Movies往年のピュアスポーツカーとはまるでイメージの異なる、新生ロータスの意欲作「エメヤR」。電動化時代のハイパフォーマンスモデルを、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんはどう見るのか、動画でリポートします。 -
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.3デイリーコラムトヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。











