日産エクストレイルG e-4ORCE(4WD)/エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)/エクストレイルAUTECHスポーツスペックe-4ORCE(4WD)/エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)
振らなければ当たらない 2025.08.21 試乗記 「日産エクストレイル」のマイナーチェンジモデルが登場。揺れる日産の救世主となるか注目だが、フェイスリフトのみならずインフォテインメントの改良やモデルラインナップの拡充など、さすがに力が入っているのは間違いない。テストコースでの印象をリポートする。最先端工場だったのに
横須賀市の日産追浜工場周辺の朝の混雑はいつもどおりだった。それでも、何となく活気が感じられないように見えたのは、あと2年ちょっとで追浜工場が閉鎖されるとの発表の直後だったせいか、あるいはすでに稼働率が低下しているためだったからかもしれない。
ご存じのように日産はグループ全体で従業員2万人削減、世界7カ所の工場閉鎖を軸としたリストラ策を打ち出して経営再建に取り組み始めたところで、2025年7月には追浜工場も含まれると明らかにされた。追浜工場は1961年に操業開始した日産の主力工場であり、溶接ロボットや混流ラインをいち早く導入してきた最先端のマザー工場だった。15年前にゴーン元会長が大見えを切ったとおりに運べば、その後年間10万台規模で「リーフ」を生産していたはずなのに、結局フル生産になることはなかった。思えばあれが分かれ道だったのかもしれない。
そういえば、「MID4」の撮影の手伝いに駆り出されたのも追浜のテストコースだった。追浜工場の海沿いに位置するテストコースは、2007年に販売会社向けのイベントなどにも使用できるように改修され「グランドライブ」としてオープンした。今のところこちらは閉鎖されないといわれているが、工場本体がなくなってからもテストコースだけを維持するのは現実的ではないだろう。一般には公開されていない施設ゆえ、発売前のプロトタイプ試乗会にもしばしば使用される場所である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
中身は基本的に変化なし
今回もそのグランドライブでの試乗会ということで、これはもしや第3世代の「e-POWER」を搭載するエクストレイルに乗れるのか、と期待したものの、実際には現行型エクストレイルのマイナーチェンジモデルだった。マイナーチェンジの内容は多岐にわたるが、基本的にはバリエーションの追加とインフォテインメントシステムのアップデートなどが主なものだった。正直ちょっと肩透かしな感じである。
現行型をおさらいしておくと、2000年にデビューした初代から数えて通算4代目のエクストレイル(T33型)の発売は3年前(海外向けよりだいぶ遅れた)。日本仕様はエンジンで発電し、フロントモーターまたは前後2基のモーターで駆動するシリーズハイブリッドの「e-POWER」のみに絞られたが、その発電用エンジンとして新たにKR15DDT型1.5リッター3気筒直噴VCターボをエクストレイルに初採用したことが最大の特徴だった。VCターボとはコンロッドにリンク機構を加えることで可変圧縮比(8:1~14:1)を実現、燃費とパワーの両立を狙った意欲作である。
日産・横浜工場で生産される同ユニットのリンク機構には高度なコーティング技術が採用され、シリンダーウォールにはポルシェやメルセデス、それに「日産GT-R」などと同様のプラズマ溶射コーティングが施されている。発電専用に使うにはもったいないほどぜいたくで先進的なエンジンなのである(海外向けにはエンジン車もあり)。
「NISMO」に「AUTECH」に「ロッククリーク」
今回、VCターボエンジン(最高出力140PS/最大トルク250N・m)そのものや、前後モーターのスペック(前:204PS/後ろ:136PS)に変更はなし。スタンダードモデルのラインナップは従来どおり「S」「X」「G」の3グレード、ツインモーターの4WDとなる「e-4ORCE」にも同じく3種類のグレードが設定され、X e-4ORCEにのみ3列シート7人乗り仕様も用意される。こちらはコスメティックスの手直しに加えて、インフォテインメントシステムにGoogleを搭載したこと、インテリジェントアラウンドビューモニターを採用したことが新しい。
さらに「ロッククリーク」と称するオフロード志向を強調した新グレードが設定された。従来の「エクストリーマーX」よりもさらに明確なタフギア感を押し出したモデルで、専用の内外装と防水シートなどの特別装備を持つ。またこれまでの「AUTECH」仕様に加えて、新たに「AUTECHスポーツスペック」と「NISMO」仕様も登場。前者は上質さと爽快感を、後者は速さと高揚感を追求し、内外装のみならず、専用のスプリング/ダンパーを採用し、4WDのe-4ORCE制御も専用設定となる。
ただしロッククリークも含めてこれらはすべてスタンダードのグレードではなく、日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)扱いとなる。何だかちょっとややこしいが、ひとつの車種で(パワートレインも同じ)スポーツからプレミアム、さらにはアウトドア志向までさまざまにつくり分けなければならないところに、モデル数が少ない日産の苦しい台所事情がうかがえる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いいクルマなんだけど
試乗できたモデルはすべて4WDだったが、基本的にスムーズで静かで、しかも車速とエンジン回転の伸びが自然にシンクロする感覚は従来どおり。3気筒にもかかわらず、リンク機構のおかげで滑らかに気持ちよく回り、エンジンが始動してもうるさく感じないエクストレイルは他のe-POWER車とは別格である。
ただし、20インチタイヤと専用の足まわりを装着するNISMOおよびAUTECHスポーツスペックと標準車との明確な違いは正直感じられなかった。グランドライブは直線部分では100km/h、コーナーでは30~50km/hという制限速度が設けられており、そこを数周した限りではどのクルマもまったく安定して素直に操作に応えてくれる。他に比べて新しいこともあるが、素性のよさは日産車一ではないだろうか。
実際に国内販売台数は平均すると月に2000台前後で決して悪い数字ではない。ランキングでも「ノート」「セレナ」に続いて上位50台に入っている数少ない日産車のひとつである。ただし、今回のマイナーチェンジでも全体的に価格が上昇している(社内調査ではライバルに対して割高というユーザーの声があったというが)。プレミアムを狙えば値段が高くなるのも当然だが、思い切って装備を簡略化し、価格を抑えたベーシックでカジュアルな、初代や2代目のような道具感を強調したグレードを設定する方向性はなかっただろうか。パワートレインがe-POWER一本という方針も再考の余地はないのだろうか。どんなことをしても、なりふり構わず出塁する。そういうひたむきさ、泥臭さを、とりわけ商品企画の偉い人に持ってもらいたいものである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
日産エクストレイルG e-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1840×1720mm
ホイールベース:2705mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:144PS(106kW)/4400-5000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2400-4000rpm
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4501-7422rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3505rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/4897-9504rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4897rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3 SUV)
燃費:18.1km/リッター(WLTCモード)
価格:494万6700円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1840×1720mm
ホイールベース:2705mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:144PS(106kW)/4400-5000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2400-4000rpm
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4501-7422rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3505rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/4897-9504rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4897rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3 SUV)
燃費:--km/リッター
価格:475万6400円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産エクストレイルAUTECHスポーツスペックe-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4705×1840×1720mm
ホイールベース:2705mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:144PS(106kW)/4400-5000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2400-4000rpm
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4501-7422rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3505rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/4897-9504rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4897rpm
タイヤ:(前)255/45R20 101V/(後)255/45R20 101V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:--km/リッター
価格:590万1500円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4705×1840×1720mm
ホイールベース:2705mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:144PS(106kW)/4400-5000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2400-4000rpm
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4501-7422rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3505rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/4897-9504rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4897rpm
タイヤ:(前)255/45R20 101V/(後)255/45R20 101V(ミシュラン・パイロットスポーツEV)
燃費:--km/リッター
価格:596万2000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。 -
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。


























































