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商用車という名の国民車! 「トヨタ・ハイエース」はなぜ大人気なのか?

2025.09.08 デイリーコラム 工藤 貴宏
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実は世界的に売れている!

それにしても、「ハイエース」は多すぎではないだろうか?

ハイエースはトヨタの商用バン(一部仕様は乗用登録のワゴン)のことで、同車を見ない日などないといえるほどたくさん走っている。それは何も日本国内に限った話ではなく、東南アジアやアフリカなども「バンといえばハイエース」という国がたくさんあるのは聡明(そうめい)な読者諸兄はご存じのとおり。世界各国で現場を支える、縁の下の力持ちといっていいだろう。海外での人気と密接な関係にある盗難車ランキングで、ハイエースが常にトップ争いをしていることも、その証しだ。

ところでハイエースのライバルといえば「日産キャラバン」だ。けれど、筆者の知る限り、世界中の国や地域においてキャラバンがハイエースより売れている国はメキシコくらい。そのメキシコを除くと「ハイエースじゃなきゃダメ」という人がたくさんいるのだ。

といっても、日本がここまで“ハイエースばかり”の状況になったのはここ20年ほどのこと。具体的にいえば、2004年にフルモデルチェンジして5世代目の「200系」が登場してからだ。それまではキャラバンだって今よりも多く見かけたけれど、気がつけばすっかりハイエースに駆逐されてしまった感があると思うのは、筆者だけではないに違いない。

というわけで今回のテーマは「なぜハイエースはこんなに人気なのか?」である。

登山家ジョージ・マロリーの言葉を借りれば、人々がハイエースを買う理由は「そこにハイエースがあるからだ」ということになるだろう。しかし現実にはキャラバンだって目の前にあるわけで、「そこにキャラバンがあるからだ」という人がもっといてもおかしくはない。

でもそんな状況にもかかわらずハイエースばかりが売れているのには何か理由があるからにほかならない。じゃあその理由は一体何なのさ? という話である。

長いモデルライフのなかで、たびたびマイナーチェンジが実施されてきた「ハイエース」。2024年の商品改良では、専用ボディーカラーやマットブラックフロントグリルを特徴とする“アースカラーパッケージ”(写真)も新たに設定された。
長いモデルライフのなかで、たびたびマイナーチェンジが実施されてきた「ハイエース」。2024年の商品改良では、専用ボディーカラーやマットブラックフロントグリルを特徴とする“アースカラーパッケージ”(写真)も新たに設定された。拡大
2025年8月下旬、某日の東京・駒沢通りの様子。ほかのクルマと重なって写っていないものを含めて、一度に5台の「ハイエース」が視界に入った。“当たり前の存在”になっているとはいえ、あらためて見ると、その数は実に多い。
2025年8月下旬、某日の東京・駒沢通りの様子。ほかのクルマと重なって写っていないものを含めて、一度に5台の「ハイエース」が視界に入った。“当たり前の存在”になっているとはいえ、あらためて見ると、その数は実に多い。拡大
「トヨタ・ハイエース」最大のライバル「日産キャラバン」。しかし、キャラバンの近年の販売台数は年間1万5000台程度であり、ハイエースはその2~3倍と、大きく差をつけている。
「トヨタ・ハイエース」最大のライバル「日産キャラバン」。しかし、キャラバンの近年の販売台数は年間1万5000台程度であり、ハイエースはその2~3倍と、大きく差をつけている。拡大
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見た目のよさとコスパが決め手

筆者の見立ては、まずスタイリングだ。200系ハイエースがデビューしたときの衝撃は今なお忘れられない。それまでの商用車のイメージを過去のものとしたカッコよさだったからだ。

実はハイエースのユーザーには個人事業主が多いのだという。彼らは仕事にハイエースを使うだけでなく、休日にはプライベートでも遊びにハイエースを活用。そのため単なる道具ではなく、愛着が持て、見た目も所有欲を満たすようなクルマを求めるのだ。仕事で使うクルマなのにドレスアップ仕様を多く見かけるのはその何よりの証しである。

彼らのクルマ選びは一般的な社用車選びとは違うので、個人的な好みでクルマを選ぶ。そこでスタイリッシュなハイエースというわけである。例えば200系の最上級モデル「スーパーGL」。初めて見たときは、ドアミラーまでメッキが施されていて、そのきらびやかなことに驚いた。そんなカッコよさに、多くのバンユーザーが引きつけられたというわけだ。

キャラバンも後のフルモデルチェンジでスタイリッシュな見た目になったけれど、出遅れたといわざるを得ない。そこまでの時間でハイエースはブランド化どころか神格化に成功。そのリードは日がたつごとに広がったというのが正解だろう。

えっ、ハイエースが人気なのはそうじゃなくてリセールバリューが高いから……!?

確かにそれも否定できない。新車価格はハイエースのほうが若干安い水準だが、逆に手放すときのリセールバリューはハイエースのほうが高くなる傾向にある。つまりコスパが高いのだ。

2004年8月23日にデビューした、現行世代の「トヨタ・ハイエース」。1967年登場の初代から数えて5代目にあたる。
2004年8月23日にデビューした、現行世代の「トヨタ・ハイエース」。1967年登場の初代から数えて5代目にあたる。拡大
「ハイエース」のオーナーは個人事業主が多く、仕事もプライベートもこれ一台という使われ方が広く求められる。そのため自己表現としてのドレスアップも盛んで、毎年開催されるカスタマイズカーの祭典「東京オートサロン」でもさまざまな展示車両が見られる。写真は東京オートサロン2024の出展車の例。
「ハイエース」のオーナーは個人事業主が多く、仕事もプライベートもこれ一台という使われ方が広く求められる。そのため自己表現としてのドレスアップも盛んで、毎年開催されるカスタマイズカーの祭典「東京オートサロン」でもさまざまな展示車両が見られる。写真は東京オートサロン2024の出展車の例。拡大
「ハイエース」は、オプションパーツも豊富だ。写真は2025年9月1日に発売されるTOM'Sのハイエース用「スタイリングパーツセット」の装着車。「機能性と美しさを両立した『GEAR』(=使うための道具であり、魅せるためのスタイル)として、ハイエースの可能性を広げる」とアピールされる。
「ハイエース」は、オプションパーツも豊富だ。写真は2025年9月1日に発売されるTOM'Sのハイエース用「スタイリングパーツセット」の装着車。「機能性と美しさを両立した『GEAR』(=使うための道具であり、魅せるためのスタイル)として、ハイエースの可能性を広げる」とアピールされる。拡大

世代交代が待ち遠しい

ブランド性もあるうえに、コスパが高い。もう最強である。盗まれやすいから車両保険にはしっかり入っておかないと……だけれど。

ところで、人気を確実なものとした現行モデル200系は、デビューしてからもう20年が経過。何を隠そう、歴代ハイエースのなかで最も息の長い世代となっている。

さすがにフルモデルチェンジのうわさも定期的に流れるし、海外では次世代の300系に切り替わっているものの、いまだに国内向けの新型が姿を見せないことにモヤモヤしているハイエースファンも少なくないようだ。

その理由としてうわさされているのは、フルモデルチェンジすると前面衝突時の安全性能に対応するためにノーズを伸ばさなければならず、現状のボディーサイズだと荷室が狭くなるというもの。だから国内向けの新型は難しく、トヨタは大いに悩んでいると思われる。

そこをどう舵取りして次期型につなげるのか? それこそがトヨタ車体の腕の見せ所であるとともに、次期型がどれだけ魅力的なハイエースとなるのかとても楽しみである。きっと筆者なんかよりも、ハイエースのオーナーのほうが、もっと楽しみだろうけれど。

ところで、最後に一つだけ。実は最新型のキャラバンにはハイエースには設定のない「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」が用意されている。だから高速道路を走ることが多い人とマッチングがいい……ということだけはお伝えして、ハイエース人気についての文章を締めたいと思う。

(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、日産自動車、webCG/編集=関 顕也)

海外のトヨタのウェブサイトでは、「NEW HIACE」と呼ばれるセミボンネット型のバンが散見される。国内でも同モデルが新型「ハイエース」として販売されるのか、それとも従来の200系との併売になるのか、現時点ではわからない。
海外のトヨタのウェブサイトでは、「NEW HIACE」と呼ばれるセミボンネット型のバンが散見される。国内でも同モデルが新型「ハイエース」として販売されるのか、それとも従来の200系との併売になるのか、現時点ではわからない。拡大
日産は2025年8月25日、一部仕様変更した「キャラバン」を発売。これを機に、ガソリンエンジン搭載モデルにはクラス初をうたう「インテリジェントクルーズコントロール」が搭載された。
日産は2025年8月25日、一部仕様変更した「キャラバン」を発売。これを機に、ガソリンエンジン搭載モデルにはクラス初をうたう「インテリジェントクルーズコントロール」が搭載された。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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