スズキが10年先を見据えた取り組み「技術戦略2025」を発表
2025.09.09 自動車ニューススズキは2025年9月9日、10年先を見据えた経営戦略としての取り組み「技術戦略2025」を発表した。
同年2月に、2025年度から2030年度までの期間を視野に入れた新中期経営計画を発表し、コーポレートスローガンとして「By Your Side」を設定したスズキ（関連記事）。
今回の技術戦略2025では、従来の環境・エネルギー問題への対応に加え、人々の移動に関わる社会課題にも同社の技術を駆使して積極的に取り組むことを表明。生活に密着したインフラモビリティー企業として、これまで行動理念としてきた「現場・現物・現実（3現主義）」に加え、「原理・原則（2原）」を取り入れた「3現・2原」を新たに掲げ、「エネルギー極少化」と「本質価値極大化」を実現し、“Right x Light Mobile Tech（ライトライト モビルテック）”として、ユーザーに寄り添う価値を提供していくという。
技術戦略2025において、スズキが具体的に取り組む主な項目は以下のとおり。
【軽くて安全な車体】
安全で軽量な「HEARTECT（ハーテクト）」をさらに進化させ、軽量化技術によるエネルギーの極少化に取り組むなかで、2024年に掲げた「100kgの軽量化を目指す」という目標に対し、約80kgの軽量化を達成できる見通し。今後も、性能を担保しながら“ちょうどいい全体最適”を行い、部品の一つひとつ、ボルトの一本に至るまで突き詰め、目標達成に向けて開発を進める。
【効率の良いICE（Internal Combustion Engine）、CNF（Carbon Neutral Fuel）技術】
2024年に発表した「スーパーエネチャージ」を、車体の軽さを生かしたハイブリッドシステムとして先行開発しており、掲げていた目標性能を達成できる見込み。さらに、これまでのエンジン開発で培った、高速燃焼と低フリクション技術に磨きをかけ、その技術を横展開した高効率エンジンの新開発を進めている。カーボンニュートラル燃料車については、インドでは二輪車の「ジクサーSF 250 FFV（フレックス燃料車）」の量産を2025年1月に開始し、四輪車では各モデルのE20燃料への対応を実施。四輪車もFFV対応エンジン搭載モデルを2025年度内に投入できるよう開発を進める。
【バッテリーリーンな電気自動車（BEV）およびハイブリッド車（HEV）】
小さく効率の良い電動ユニットや、小さく軽い電池など、スズキの行動理念のひとつである「小・少・軽・短・美」を体現し、エネルギーを極少化した電動車開発を進める。スズキ初のBEVである「eビターラ」はその第1弾。二輪車では、インドで発表した「eアクセス」も“ちょうどいいEVスクーター”として各国で投入予定。
【SDV（Software Defined Vehicle）ライト】
eビターラより、ちょうどいい高性能電装品の実現手段として、SDVライトの考え方を適用。今後も各モデルのユーザーにちょうどいい機能を厳選し、価値ある電装品を搭載していく。
【リサイクルしやすい易分解設計】
リサイクルや再利用を前提とした分解しやすい製品設計を行うだけでなく、軽量化設計の「Sライトプロジェクト」と連携した樹脂部品の減量や、リサイクルを促進する材料統合、分解不要なモノマテリアル化を推進。再生プラスチックの活用技術も進化させ、順次製品に導入していく。
また、カーボンニュートラルに向けたトライアルとして、以下の3点に取り組んでいることがアナウンスされた。
【チームスズキCNチャレンジ】
2024年に引き続き鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した「チームスズキCNチャレンジ」は、ライダー以外はすべてスズキ社員で構成したチームで、カーボンニュートラル社会の実現に向けた「エネルギー極少化」を技術哲学とした技術を開発すると同時に、社員の挑戦する意欲を高め、強いチームワークを醸成。マシンは、タイヤ、オイル、カウル、ブレーキをはじめとした部品にサステナブルな材料を採用し、100％サステナブル燃料を使用して挑戦しており、今後もレースを通して環境負荷低減の可能性をはじめとしたサステナビリティーへの取り組みを推進する。
【バイオガス事業】
2025年7月、スズキのバイオガス事業が、国際連合工業開発機関（UNIDO）が公募した産業協力プログラムに採択されている。現在建設中のバイオガスプラントは2025年より順次稼働を開始。供給されるバイオガスは、インド乗用車市場の約2割を占めるCNG車の燃料として使用可能であり、温室効果ガスの排出抑制にも貢献する。また本事業は、エネルギー自給率の向上や、新たな雇用創出に加え、牛ふんの買い取りや牛ふんから作る有機肥料を通じて農村の所得や生活水準、生産性の向上につながると考えられる。今回の採択を受け、日本の技術を導入した新たなバイオガスプラントの建設に向けて、引き続き取り組む。
【スズキ・スマートファクトリー】
製造領域でもカーボンニュートラル社会の実現に向けて「スズキ・スマートファクトリー」と名づけたプロジェクトを進める。デジタル技術を活用して操業を“見える化”し、品質と生産性を向上させることで製造のエネルギー極少化を推進。2025年6月に稼働を開始した湖西工場の新塗装工場では、この取り組みにより使用エネルギーを大幅に削減している。
（webCG）
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