スズキeビターラZ(4WD)
BEVライフの一歩目に 2026.03.28 試乗記 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。BEVがより身近に
いわゆる“登録車”のうち、価格が安いBEVといえば、「ヒョンデ・インスター」や「BYDドルフィン」といった輸入ブランドのモデルが幅を利かせている。その実力は侮れず、コストパフォーマンスの高さが際立つのは皆さんもご存じだろう。ただ、いざ買うとなるとなじみがあり、ディーラーも多い日本のブランドを選びたいという人は少なくないかもしれない。そんな気持ちに応えてくれそうなのが、2026年1月に発売されたスズキeビターラだ。
400万円を切る399万3000円からという価格設定は、日本ブランドの登録車のBEVとしては最安だ。これに従来のCEV補助金の127万円(※)を適用すると、実質272万3000円という安さになる。最上級グレードの「Z 4WD」(492万8000円)でも実質363万8000円で、4WDのBEVがこの価格で手に入るのは、実に魅力的だ。
それだけに、私を含めてeビターラに関心を持つ人は多いに違いない。そこで、今回はeビターラ Z 4WDをお借りして、いつもより少し長めのドライブを楽しむことにした。
試乗したeビターラ Z 4WDは、前後にモーターを搭載する電動4WDモデルで、システム最高出力135kW(184PS)を発生。バッテリーには容量61kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、一充電走行距離(WLTCモード)は472kmの実力を誇る。コンパクトSUV型のBEVとしては、十分すぎるスペックといえるだろう。
※2026年4月1日以降のCEV補助金については、本稿執筆時点では未発表。
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インド生まれの世界戦略車
本題に入る前に、eビターラについて簡単におさらいしておこう。このクルマは、新開発のBEV専用プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)-e」を採用するコンパクトSUV型BEVで、スズキは世界戦略BEVの第1弾と位置づけている。生産はインドのスズキ・モーター・グジャラート社が担当。ここではトヨタ版の姉妹車である「アーバンクルーザー」もつくられている。
そんな生い立ちのeビターラをあらためて目の当たりにすると、全長4275mmとコンパクトSUVの枠に収まるボディーサイズながら、塊感のあるスタイリングや前後のオーバーハングを切り詰めたパッケージなどにより、実際のサイズ以上に力強さや存在感を発している。『スター・ウォーズ』の“ストームトルーパー”を思わせるフロントマスクも、押し出しが強く精悍(せいかん)さが際立つ。いっぽう、フロントマスクとは打って変わってシンプルで端正なリアビューは、個人的に好きなポイントだ。
インテリアは、メーターディスプレイとセンターディスプレイを横一列に配置したデジタルコックピットを採用。ブラックとブラウンを基調とした配色は見栄えがいいが、よく見るとプラスチックっぽさが目立ち、やや上質さに欠けるのが惜しいところだ。
後席はこのクラスとしては十分な余裕があり、足元にもゆとりがある。荷室はボディーサイズ相応で、必要に応じて後席を倒したりスライドさせたりすれば、スペースを拡大できるのが便利だ。
アクセル操作は穏やかに
さっそく運転席に腰を下ろすと、想像とは裏腹に硬い座り心地に驚かされる。それでも、不思議と背中や腰が痛くならないのが救いである。
センターコンソールにあるシフトセレクターを回してさっそく走りだすと、アクセルペダルを穏やかに踏み込み、ゆっくり戻すように操作するかぎり、とてもスムーズな加減速をみせる。発進から中速域までの加速は十分力強く、日常的な走行では不足を感じることはない。速度が90km/hを超えるあたりから加速の伸びはやや穏やかになるものの、実用域では必要十分な性能といえる。
気になったのが、アクセルペダルを急に踏み込んだり、急に戻したりしたときの挙動で、加速、減速ともに反応がひと呼吸遅れるような感覚があるのだ。とくにドライブモードで「スポーツ」を選ぶと、加速した際にそれが顕著で扱いにくいと思った。
回生ブレーキは「イージードライブペダル」がオフの状態でも弱い回生が働く設定となっている。いっぽう、オンにするとセンターディスプレイの「充電ブースト」メニューで弱・中・強の3段階から選んだ強さが適用され、中や強ならアクセルペダルの操作だけでほぼ速度調整が可能だった。ワンペダルドライブではないので、アクセルから完全に足を離しても車両を停止させることはできないが、逆にクリープ機能が常に働くため、低速域での取り回しは自然で扱いやすい。
細かいところでは、メーターディスプレイにはブレーキランプの点灯状況を表示する機能があるため、回生減速時の後続車への合図を確認できるのが便利だ。
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ヨーロッパ的な味つけの足まわり
eビターラのサスペンションは、ドイツあたりをターゲットにしているのか、やや硬めの味つけ。これで日本の一般道を走ると、荒れた路面を通過した際にサスペンションが入力を受け止めきれず、ショックを伝えがちだ。とくに前席で硬さが目立つ。個人的にはもう少しマイルドな乗り味が好みだが、現状でも我慢できないというほどではなく、SUVとしては許容できるレベルに収まっている。
いっぽう、スピードが上がると乗り心地の硬さは和らいでくる。BEV専用プラットフォームによる低重心化の効果もあり、高速走行時の姿勢は落ち着いていて、直進性もまずまずといったところ。
残念ながらワインディングロードを走る機会はなかったが、ステアリングを操作してからクルマが向きを変える一連の動きに、ドライバーとの一体感が希薄なのが気になった。とはいえ、そんなことを気にするドライバーはほんのひと握りだろう。
試乗の途中で、何度か急速充電する機会があった。比較的バッテリー残量が少ない状況で、90kW充電器、150kW充電器ともに30分の充電量は30kWh程度。実用における受電能力は平均60kWというところか。もう少し受電能力が高いとうれしいのだが。
そのいっぽうで、eビターラにはバッテリーの昇温/冷却機能が標準で備わり、一年を通じて安定した急速充電ができるのは見逃せないポイントだ。さらに、このeビターラ Z 4WDの場合、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援機構はもちろんのこと、ナビゲーションシステムやインフィニティのプレミアムサウンドシステム、ガラスルーフなども標準で装備されていて、コストパフォーマンスの高さも見どころである。
ということで、BEVのエントリーカーとしては十分な資質を備えているeビターラ。気軽にBEVライフを始めたい人は、購入候補として覚えておきたい一台である。
(文=生方 聡/写真=峰 昌宏/編集=堀田剛資/車両協力=スズキ)
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テスト車のデータ
スズキeビターラZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1800×1640mm
ホイールベース:2700mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:174PS(128kW)
フロントモーター最大トルク:193N・m(19.7kgf・m)
リアモーター最高出力:65PS(48kW)
リアモーター最大トルク:114N・m(11.6kgf・m)
システム最高出力:184PS(135kW)
システム最大トルク:307N・m(31.3kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ2 SUV)
一充電走行距離:472km(WLTCモード)
交流電力量消費率:144Wh/km
価格:492万8000円/テスト車=507万1440円
オプション装備:ボディーカラー<ランドブリーズグリーンパールメタリック ブラック2トーンルーフ>(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(3万4100円)/ETC車載器(1万5400円)/ドライブレコーダー(3万8940円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1857km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:730.5km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.0km/kWh(200Wh/km、車載電費計計測値)
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◆【試乗記】スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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