ホンダの「スーパーONE」はどんなカスタマーに向けたBEVなのか?
2026.03.18 デイリーコラム「N-ONE e:」をよりスポーティーに
それは非常に難しい問題だ。
ホンダが2026年(夏くらい?)に発売を予定している電気自動車(BEV)のスポーツモデル「スーパーONE」である。
ホンダ好き、スポーツカー好きの筆者としては期待せずにはいられないモデルだが、いっぽうで筆者のような好事家はきょうび少数派。つまりスーパーONEを買う層がなかなかイメージしづらいのだ。「スズキ・スイフトスポーツ」みたいに“ガソリンエンジンで手ごろな価格の本格スポーツ”だったら多くの人が飛びつくとは思うんだけど。
……といってもまだスーパーONEをよくご存じないと思うので、まずは概要を説明しておこう。ベースは「N-ONE e:」である。つまり軽自動車の電気自動車。しかしそこからの変更は多岐におよび、まずはスタイル。
ブリスターフェンダーをはじめとしたボディーワークにより「ブルドッグ」の愛称で親しまれた「シティ ターボII」をほうふつとさせるアグレッシブなスタイリングをつくり出している。まるでチューニングカーみたいな雰囲気でいかにもなオーラが漂い、お世辞抜きにいい仕事をしたと思う。ちなみに全幅拡大により軽自動車枠をはみ出している。
軽自動車枠をはみ出したことで、パワートレインはN-ONE e:の64PS(軽自動車の自主規制枠の最大値)からパワーアップすることがアナウンスされている。呪縛から解き放たれて80PSくらいだろうか。なかには「約100PS」なんて予測しているメディアもあるけれど、そんなに? 今後の情報を待つしかない。
もちろん、サスペンションやハンドリングもそれに合わせてチューニング。日常の足に割り切ったN-ONE e:とは違う、スポーティーという価値を足したモデルなのだ。N-ONE e:をベースにした突然変異のエボモデルといっていいだろう。
イメージできるユーザー像
いや、ホンダの狙いは分かっている。
「ホンダにはスポーツカーが欲しい!」という外野の声。
「ホンダにはスポーツカーがないと!」という内側の声。
そして「BEV化に舵を切ったホンダの将来計画」(だいぶ路線が変わりそうですが……)。
その3つが重なった結果、スーパーONEが登場したというわけだ。ある意味ホンダらしい、思い切った商品企画である。筆者も2025年のジャパンモビリティショーで見たとき、まさか市販前提車両だとは思わなかったほどだから。
で、誰が買うの? ……なんて言ってはいけない。それを見定めようというのが今回のコラムなのだ。
筆者がイメージするユーザーは3タイプ。
1:スポーティーなホンダのBEVが欲しい人
2:個性的な国産BEVが欲しい人
3:スタイルやキャラクターにほれて欲しくなった人
1や2がどれくらいいるかは分からないが、筆者が注目したいのは3。スーパーONEはライバル不在。ベクトルが同じなのは「アバルト500e」くらいか?
もしかすると、注目が集まる可能性はあるけれど、その数が多いかどうかはふたを開けてみないと分からない。
拡大 |
臨機応変な立ち回りを
ただ、今の市場を考えると「BEVだけ」というのは足かせになる可能性がある。だからもっと門戸を広くする必要があるのではないだろうか。
筆者の提案は、エンジン車の追加だ。
BEV化の流れが足踏みしている今、必要なのはエンジン車。例えばステランティスはもともとBEVしか計画していなかった車種にマイルドハイブリッドとしてエンジン搭載車を追加したじゃないか。MINIにだってポルシェにだってそういう車種がある。
なになに? こだわりを曲げるなんて許されないって?
そんなことあるわけがない。今の自動車業界に求められるのは状況に応じた臨機応変な方向転換だ。日本の企業は決定を守ることに固執しがちだが、そうじゃない。計画を撤回するのは悪いことじゃない。次々と変化する流れに逆らわないことが大切なのだ。
だからスーパーONEも「状況に応じて変えました」としてガソリン車を追加すればいいじゃないか。「N-ONE RS」のターボエンジンとMTを詰め込んでしまえ!
軽自動車枠を超えているので、最高出力を64PSに抑える必要なんてなし(どうやらホンダの0.66リッターターボエンジンは80PSくらいまでなら制御系の変更だけで実現するとかしないとか)。
あのスタイルでガソリンターボ+MTならシティ ターボIIの再来みたいな感じで、BEV専用モデルよりも多く売れるはず。筆者だって欲しい。それでN-ONEカップのようなナンバー付きレースをやっちゃったりして。
拡大 |
軽と小型車では補助金の額が違う
ところで値段も難しい。価格は明らかになっていないが、N-ONE e:の上級グレードから100万円アップくらいで収まるだろうか(だとしたら420万円くらい?)。
しかし、実際のN-ONE e:とスーパーONEの価格差は、車両価格よりも小さくなる。補助金が関わってくるからだ。軽自動車と小型車ではBEVを対象とした補助金の額が違うのだ。
あくまで現時点での補助金額(しかも2025年度分は終了した)だが、軽自動車が最大55万円なのに対して小型車/普通車は最大125万円を受けられる。もしN-ONE e:とスーパーONEの価格差が100万円あったとしても、補助金の活用により実質価格が30万円まで縮まる可能性もある(もし価格差が150万円なら実質80万円差)。だったらアリかもスーパーONE。
ちなみに東京都には都独自のBEV補助金があり、ホンダ車だと40万円。仮に車両価格が420万円だったら、国からの補助金を(現在同様の125万円と仮定して)使えば実質295万円。東京都民ならさらに補助金があって255万円。その価格で手に入るなら、BEVのエボモデルも悪くないかも。
えっ「N-ONE e:よりも航続距離が短いのでは……」って? そんなの気にしても仕方ない。だってクルマ好きにとって大切なのは楽しいことでしょう? 見た目も走りも。
(文=工藤貴宏/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)
拡大 |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
これが日産復活の切り札! いいクルマを速くつくる「ファミリー戦略」とは何か?NEW 2026.9.14 日産が車両開発の新たな重要施策にかかげる「ファミリー戦略」とは何か? 従来のクルマづくりとはどこが異なり、われわれユーザーはどんな恩恵を受けるのか。その内容を識者が分かりやすく解説する。
-
徹底比較! 新型三菱パジェロ VS. トヨタ・ランドクルーザー 2026.9.11 いよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。日本での公道デビューはもう少し先となるが、現状で公開されている情報から読み取れることはなにか? クロカン界の王者「トヨタ・ランドクルーザー“250”/“300”」との比較を通し、その実像に迫る。
-
1年目の通知表 新型「ホンダ・プレリュード」の販売実績は想定どおり? 2026.9.10 ホンダが新型「プレリュード」を発売してから1年。デビュー1周年記念モデルともいうべき特別仕様車「2027リミテッドエディション」も登場した。現在までの販売実績を確認しながら、その人気や評判を探ってみた。
-
「レガシィ」登場からブーム到来、そして終焉へ 国産ステーションワゴン興亡史(後編) 2026.9.9 国産ステーションワゴン興亡史の後編。国産ワゴンの金字塔「スバル・レガシィ ツーリングワゴン」が1989年にデビューしたものの、やがて市場の人気はミニバンに流れ、退潮傾向が鮮明に。各社とも個性的なモデルの投入で最後の踏ん張りを見せるのだが……。
-
ブーム再到来はあるか!? 国産ステーションワゴン興亡史(前編) 2026.9.7 かつて日本でも一世を風靡(ふうび)したステーションワゴンだが、すっかりSUVの陰に押しやられてしまい、今ではモデルラインナップもごくわずかだ。ここでは国産ワゴン興亡の歴史を追う。ブーム再到来のきっかけのひとつ(!?)になれば幸いである。
-
NEW
第344回:アンパンマンよりばいきんまん
2026.9.14カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。メルセデス・ベンツの新型「CLAシューティングブレーク」が気になってしかたがない。理由はその特徴的なフロントフェイス。左右の目玉(ヘッドランプ)がつながったデザインがたまらない。果たして実車の印象は? -
NEW
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】
2026.9.14試乗記「スズキ・ジムニー ノマド」でロングドライブ。本格クロカンとして悪路での走りに定評あるジムニーの5ドア・ロングボディー版は、カジュアルなSUVとしても使えるのか。多くの人が多くの時間を過ごすであろうオンロードにおける日常的シーンで、その実力を確かめた。 -
NEW
これが日産復活の切り札! いいクルマを速くつくる「ファミリー戦略」とは何か?
2026.9.14デイリーコラム日産が車両開発の新たな重要施策にかかげる「ファミリー戦略」とは何か? 従来のクルマづくりとはどこが異なり、われわれユーザーはどんな恩恵を受けるのか。その内容を識者が分かりやすく解説する。 -
日産リーフB7 G(後編)
2026.9.13ミスター・スバル 辰己英治の目利きミスター・スバルこと辰己英治さんが、電気自動車(EV)の3代目「日産リーフ」に試乗。日産が擁する最新EVの○と×とは? これからのEVは、どのようなクルマを目指すべきなのか? 15年の歴史を持つEVの走りに触れ、自動車の未来について考えてみた。 -
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】
2026.9.12試乗記「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。 -
徹底比較! 新型三菱パジェロ VS. トヨタ・ランドクルーザー
2026.9.11デイリーコラムいよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。日本での公道デビューはもう少し先となるが、現状で公開されている情報から読み取れることはなにか? クロカン界の王者「トヨタ・ランドクルーザー“250”/“300”」との比較を通し、その実像に迫る。


































