ホンダ・無限CR-Z α(FF/6MT)【試乗記】
“コク旨”CR-Z 2010.08.30 試乗記 ホンダ・無限CR-Z α(FF/6MT)……425万550円
ハイブリッドのスポーツカー「ホンダCR-Z」。「無限」のスペシャルパーツで武装すると、走りはどう変化する? ワインディングで試した。
選べる無限のトッピング
ホンダ車のスペシャルチューナー 無限のオリジナルパーツを満載した「CR-Z」が、今回のお相手である。チューニングのメニューは、エアロパーツに始まり、足まわり、ブレーキ、そしてエンジンの吸排気系。ラーメンでいうところの「全部のせ」な1台だ。
筆者は、そのいささかコンベンショナルなお品書きを見て「ハイブリッドのスポーツカーなら、モーターにも何らかのアプローチが欲しいよなぁ……」と感じてしまったのだが、しばらくしてそれは間違いであると考え直した。それこそ、コンベンショナルな自動車オタクの考え方なのである。
実際のところ、まずオーナーにとって大切なのは「CR-Z」の素性を味わい尽くすことであって、一番欲しいのは、それをアシストしてくれるカスタマイズパーツなのだ。買ったばかりの「CR-Z」のモーターが無限にバージョンアップされちゃったら、オーナーとしてはやりきれないじゃないか。
“ホンダ・ワークス”の無限として、今後はそこまで視野に入れた開発もしてほしいけれど。
専門店の味
などと考えながら、ワインディングへと繰り出した「無限CR-Z」。ともかく特筆すべきは、その足腰の確かさである。ノーマルと変わらない形状ながら5段階の減衰調整機構を持つスポーツサスペンションキットは、ホンダが的を絞りきれなかったコアなスポーツカーユーザーを満足させるだけの、オトナの味わいをもたらす。ダンピングレベルは、“鈴鹿スペシャル”となってしまった「シビック タイプR」と、それに気を遣いすぎた「無限タイプR」の、ちょうど中間くらいの硬さ。ワークスといえるチューニングメーカーにしか料理できない、絶妙の乗り味だ。
味の秘訣(ひけつ)は、フロント32パイ、リア30パイの大径ピストンを採用した、剛性の高いストラットダンパーと、たっぷりとしたオイル容量にあると思われる。
減衰力の推奨は「柔らかいほうから2段目」とあったが、気持ちよく飛ばすレベルでは最も柔らかいポジションで十二分。かなりRがキツいコーナーでも、無限の足を得た「CR-Z」は車両の姿勢とロールスピードをゆっくりと保ちつつ、腰砕け感も全くないままクリアする。基本ジオメトリーに悪影響を及ぼさない範囲(15〜20mm)で車高が下がるスプリングのレートも、乗り心地と安定感をちょうどよくバランスさせるところにおさまっている。もし減衰力を最強にしたくなる場があるとしたら? それは、ミニサーキットのようなフィールドだろう。
さらに、「CR-Z」専用のスリットが刻まれたブレーキローターと、同じく専用配合のシューをもつブレーキパッドが、この足まわりにより一層のコクを与える。クルマのブレーキは、止めるための装置である以上に、曲げるための要素として働くが、それを体現するのは実に難しい。
しかし無限のキットは、サスペンションの一部として機能し、コーナーでしっかりと「CR-Z」の鼻先を路面に押さえつけてくれる。踏力に応じた制動力を発揮する一方、スポーツパッド特有の扱いにくさがない。
素材のよさが、ますます光る
こうなると、おのずとアクセル全開率は高まっていく……のだが、残念なことにベースとなる「CR-Z」は非力なのである。
カーボン製のエアクリーナーボックスは見栄えが恐ろしくカッコ良くて、吸気音もグッとくる。ストレート構造のマフラーは、音量こそ昨今の社会事情から控えめだけど、トルク感と抜けのバランスもいい。
しかし、それら無限パーツのおかげで圧倒的なパワー感が得られるというわけじゃない。中低速コーナーが続く峠道では、脱出加速の最中に車体重量を強く意識してしまう。これらはいわば、チューニングの“身だしなみ”なのである。
ただ、吸排気に手が加わったおかげで、ノーマル/スポーツ/エコの各走行モードは、ノーマルより明確にその違いを意識できるようになったが、スポーツモードの制御はリニアなアクセル操作をする上でやや過敏だ。高速道路ではとても楽しいが。
だから、「無限CR-Z」のおすすめステージは、なだらかな中高速コーナーである。これだけしっかりした足腰を持っていれば、涼しい顔してかなりのハイスピードドライビングを楽しめるだろう。
低く構えたスポーツカーボディをドライブしていると、やっぱり「フィット」用の1.5リッターではなく「シビック タイプR」用の2リッターを積みたくなってしまう。それほど「CR-Z」というクルマのシャシーは完成度が高いということを、無限のチューニングパーツたちは気付かせてくれる。
でも、当の無限によれば、一番の売れ筋はエアロパーツ類だという。なかでも人気なのは、リアにそびえる大きなウイングなのだそう。
「人と同じはイヤ!」なのがチューニングの原点であるから、エアロが悪いとは言わない。ただ、背の高いクルマばかりが目立つご時世にせっかくペッタンコなスポーツカーを買うのなら、真っ先に無限のシャシーキットを試してほしい。目を三角にしてトバさなくても、ノーマルより一段と上質で、たくましい走りが楽しめるのだから。
(文=山田弘樹/写真=峰昌宏)
装着パーツ
【試乗車「無限CR-Z」の装着パーツ】
フロントアンダースポイラー=5万7750円/サイドスポイラー=6万6150円/リアアンダースポイラー=6万3000円/フロントスポーツグリル=4万950円/グリルイルミネーション=3万6750円/カーボンナンバープレートガーニッシュ=1万290円/リアウイング=8万9250円/スポーツエキゾーストシステム=13万4400円/ハイパフォーマンスエアクリーナー&ボックス=9万4500円/オイルフィラーキャップ=7350円/エンジントリートメントオイル=5040円/ハイパフォーマンスオイルエレメント=2730円/ハイプレッシャーラジエターキャップ=2835円/減衰力5段調整式スポーツサスペンション=17万7450円/アルミホイール「GP」×4本=27万3000円/ヘプタゴンナットセット=1万500円/ブレーキパッド(タイプスポーツ)フロント=2万3100円/ブレーキパッド(タイプスポーツ)リア=1万9950円/ブレーキローターフロント=3万3600円/ブレーキローターリア=3万450円/ミクロメッシュブレーキライン=3万450円/パフォーマンスブレーキフルード=3150円/リザーバータンクカバー=1260円/スポーツマット4枚セット=2万4150円/アシストメーター=12万6000円/カーボンルームミラーカバー=1万1550円/シフトノブ=1万290円/ハイドロフィリックミラー=1万9950円/無限メタルロゴエンブレム(ホワイト)=7140円/ナンバープレートボルト=2415円
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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