ボルボXC60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)
ボルボの真ん中 2026.04.07 試乗記 インフォテインメントシステムを中心に内外装がアップデートされた「ボルボXC60」のプラグインハイブリッドモデル(PHEV)に試乗。ボルボの屋台骨を支えるベストセラーSUVの最新ユーザーエクスペリエンスは、どのように進化したのか。その特徴と仕上がりを確かめた。グローバルのベストセラー
ミッドサイズSUVのXC60はボルボの屋台骨を支える最重要モデルと言っていいだろう。グローバルでは常に販売台数の30%を占めるベストセラーカーだ。日本では道路事情などからもう少しコンパクトなモデルが売れ筋になるが、それでも20%前後の割合らしい。2017年に2代目となってから10年、今もボルボのイメージリーダー的な存在だ。
XC60は「日本カー・オブ・ザ・イヤー2017-2018」を受賞しているわけで、日本国内での評価も高い。初代がどちらかというと実用性に寄った仕立てだったのに対し、2代目はスタイリッシュ路線へと方向転換した。このクラスのSUVはドイツメーカーの存在感が強かったが、北欧プレミアムという付加価値で商品性を高めた。安全技術の面でアドバンテージを持っていたことも大きい。
ロングセラーだからこれまでに何度もXC60に試乗している。でも、「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」に乗るのは初めてだ。3年前に乗ったときは、「リチャージ アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド」という名前だった。その前は「Twin Engine AWDインスクリプション」。ちょくちょく命名規則が変わるので混乱してしまうが、要するにどれもPHEVの最上級グレードを意味している。
XC60にはマイルドハイブリッドモデルもあるが、ボルボとしてはPHEVを本命と考えているはずだ。「2030年に完全な電気自動車メーカーになる」という宣言は取り下げたものの、電動化を強力に進めていく考えは保持している。XC60が採用している「SPAプラットフォーム」はエンジン+モーターを前提にして設計され、バッテリースペースを確保した。さらに電動4WDを実現できるように考慮されたつくりである。
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センターディスプレイが大型化
2025年6月に仕様変更があり、XC60はユーザーエクスペリエンスがアップデートされた。わかりやすい変更点は、センターディスプレイのサイズが9インチから11.2インチに大型化されたことだ。ダッシュボードから上に少しはみ出しているが、トレンドとなっているディスプレイの大型化に対応するための苦肉の策なのだろう。使い勝手も変更され、ホームボタンを押せばメイン画面にアクセスできるようになった。物理スイッチは徐々に消えていく運命にあり、XC60も多くの操作がセンターディスプレイのタッチで行われる。
ドライブモードの設定もタッチ式だ。通常はデフォルトの「Hybrid」モードにして、システムにエンジンとモーターの協働を最適化させればいい。バッテリーの使用モードは「自動」に設定する。オレフォス社製クリスタルシフトノブでDレンジを選んで発進。久しぶりに乗るが、ああこれがボルボだ、と以前の感覚が瞬時によみがえった。静かで上品なフィールはどのモデルにも共通である。
平塚からスタートし、すぐに西湘バイパスに入った。最近の大規模な補修でかなり改善されたが、まだまだ目地段差の続く区間が残っている。足まわりの出来を試すには格好の場所だ。ある程度サスペンションを固める必要があるSUVにとっては試練となるが、意外なほど乗り心地がいい。ストンストンとリズミカルに段差を乗り越えていく際に、衝撃を巧みに丸めてくれる。ACCを制限速度の70km/hに設定しておけば、海を眺めながらのゆったりしたドライブだ。
西湘バイパス終点から箱根のターンパイクに入るとまったく異なるステージが始まる。平均勾配約7%の上り坂を駆け抜けていく。ドライブモードは「Power」に設定。XC60のパワーユニットは253PSのエンジンにフロント71PS、リア145PSの組み合わせで、2180kgの車重をものともしない。
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クリープ機能OFFで完全停止
中高速コーナーが連続する箱根のターンパイクで、XC60は素早い身のこなしをみせる。ロールするものの姿勢変化は穏やかで、安心してステアリングを切っていける。意外なほどスポーティーな走りを楽しめた。乗り心地のよさとスポーツ性の両立は、出来のいいエアサスペンションによるものだろう。荷物の出し入れや乗員の乗り降りを助けるために、車高調整もできる。
エンジンでは足りないぶんをモーターが補ったので、当然バッテリーは消耗する。メーターに示された航続可能距離は9kmまで低下していた。ドライブモードにはEV走行の「Pure」もあるが、バッテリー残量が少ないと機能しない。復路ではモードを「Hybrid」に戻し、バッテリーの使用モードを「充電」に変更。平塚の試乗会場に戻ると航続可能距離は30kmまで回復していた。どうしてもバッテリー残量を確保したいときにはありがたいモードである。ただし、トータルの燃費は悪化するから日常では使わないほうがいい。
設定画面でオートクリープ機能をオン/オフすることができる。駐車をするときなどにはクリープがあったほうがスムーズなのでオンにしておいたほうがいいのだが、この切り替えはもっと重要な役割を担っている。シフトセレクターでBレンジを選ぶとワンペダルドライブになり、オートクリープをオフにしておけばアクセル操作だけで完全停止できるようになる。
BEVやシリーズハイブリッドモデルは、ワンペダルドライブが採用されている場合が多い。回生ブレーキを活用し、アクセルペダルの踏み方で加減速するわけだ。内燃機関車では不可能な運転方法で、出始めのころはBEVにしかない斬新な感覚を強調するモデルがあった。「BMW i3」や初代「日産ノートe-POWER」は、回生ブレーキを強烈に効かせていたからアクセルオフで急激にスピードが落ちた。
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これがボルボだ!
ワンペダルドライブが登場したころは、ゲーム感覚で運転してうまく停止線で止まるように右足を操作するのが面白かった。タイミングよくアクセルを緩めると思いどおりの位置に停止したのだ。でも、ガソリン車に慣れ親しんだユーザーには違和感を持つ向きが多かったらしい。ノートe-POWERは2代目になるとブレーキを踏まなければ止まらない設定に変更された。他メーカーの電動車もそういったタイプが多数派になっていくが、2025年に登場した「ホンダN-ONE e:」は完全停止する。
安全性に関する議論があるとともに好みも分かれていて、今のところコンセンサスが得られたとはいえない状態だ。どちらの方式が主流になるのか判断できずにいたのだが、ボルボはスマートな解決方法を見いだした。オートクリープのオン/オフで変えられるなら、自分好みの方式を選ぶことができる。
久しぶりに試乗して、XC60はやはりボルボの真ん中なのだと感じた。主力となったSUVのなかで中間のサイズであり、ファミリーカーとして使うこともできる。快適性が高いとともにスポーティーでもあり、もちろん十分な積載能力を持つ。万能タイプと言っていい。
そして、PHEVがボルボの真ん中であることも事実である。BEV販売が足踏みする状況ではPHEVが過渡的な需要を伸ばしていて、当面は一定のシェアを占めることになるはずだ。将来的にBEVが主流になるとしても、複雑なPHEVの開発で鍛えられた技術が無駄になることはない。ミッドサイズSUVのPHEVなのだから、XC60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッドは現在のボルボの中心的存在であることは明らかだ。これがボルボだ! と感じられる完成度である。
(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボXC60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1915×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2180kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2500-5000rpm
フロントモーター最高出力: 71PS(52kW)/3000-4500rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-1万5900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
システム総合出力:350PS
タイヤ:(前)255/40R21 102V XL/(後)255/40R21 102V XL(ピレリPゼロ)
ハイブリッド燃料消費率:14.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:81km(WLTCモード)
交流電力量消費率:234Wh/km(WLTCモード)
価格:1029万円/テスト車:1103万3630円
オプション装備:ラミネーテッドサイドウィンドウ(13万円)/Bowers & Wilkinsハイフィデリティオーディオシステム<1410W、15スピーカー、サブウーハー付き>(39万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダーアドバンス<ブラケット付き/工賃含む>(19万6350円)/キーフォブシェル(2万7280円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4810km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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