ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)
ブランドのDNA 2026.04.13 試乗記 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデル(PHEV)の印象やいかに。「XC60」と同じようで違う
「ボルボ=ステーションワゴン」というイメージを持っているのは、かなりの年配者に限られるのかもしれない。今ではボルボがSUVブランドだと思っている人のほうが多いだろう。2002年に初代「XC90」がボルボ初の本格SUVとして登場し、2008年に販売が開始された「XC60」がベストセラーになる。世界的にSUVが自動車の主流となっていくなかで、確固とした存在感を示していった。
もちろん現在もボルボはステーションワゴンを販売している。試乗したのはミッドサイズワゴン、V60のPHEV。マイルドハイブリッド版も販売されているが、ボルボの電動化戦略のなかではより重要な位置づけになるといえるだろう。V60は2018年に2代目となってディーゼルが廃止され、代わりにPHEVが設定されるようになった。当初の仕様からバッテリー容量は大幅に拡大され、電動車としての性能は格段にアップしている。
電動化を見据えた「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」と呼ばれるプラットフォームを採用しているのはXC60と同じだ。最高出力253PSの2リッター直4ターボエンジンに、最高出力71PSのフロントモーターと同145PSのリアモーターを組み合わせたパワーユニットも共通である。
車高が1660mmのXC60より低い1430mmなのは当然として、全幅も1915mmに対して1850mmと65mmの差がある。一般的なタワーパーキング(機械式立体駐車場)に駐車できて、取り回しがいいことは大きなメリットだ。
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重心の低さは圧倒的
ドライブモードをデフォルトの「Hybrid」に設定すると、発進はモーターが担当し、静かに走りだす。エンジンとモーターを自動的に効率よく使うモードで、スピードが上がるとエンジンが始動した。完全モーター駆動の「Pure」モードならば、街なかでエンジンがかかることはない。満充電でのEV走行可能距離は約91km。自宅で夜に充電し、日常ではほぼエンジンを使わずに走ることを想定している。だから、急速充電には対応していない。
V60が走りを楽しめるスポーツワゴンであることは、スタイリングからも見て取れる。十分な荷室容量を持つものの、なめらかな曲線を描くボディーラインはエレガントだ。スペース効率ばかりを追求したフォルムではない。試乗コースに指定された箱根のターンパイクでは、見た目にたがわぬスポーツ走行のポテンシャルを発揮した。
SUVのXC60でも山道でスポーティーな走りはできる。背が高いボディーでも安心してコーナリングできる仕立てには感心するが、やはりV60には明らかなアドバンテージがあった。重心の低さは圧倒的である。低く構えているうえにボディー下部に重いバッテリーを配しているから、安定感は抜群だ。ロールをほとんど感じないままにコーナーを抜けていく感覚は、SUVでは得られない。
さぞやグリップ力の強いスポーツタイヤを装着しているのかと思って確かめると、「ミシュラン・プライマシー4」だった。ミシュランには走り指向の「パイロットスポーツ」もあるが、V60にはコンフォート性能の高いプライマシーがマッチするというのがボルボの考えである。正しい選択なのだと思う。V60はワインディングロードで速く走ることより、快適な長距離移動を提供することのほうが優先される。0.1秒の速さより、2時間の快適なドライブを大切にするのは当然だ。
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後席は十分な広さ
かつて「240」や「850」といったステーションワゴンが支持されたのは、安全性と実用性の高さが評価されたからだった。荷物をたくさん積んで大人数で移動するのに適したクルマで、上質なファミリーカーとして使える。だから、1990年代のワゴンブームでボルボがトップランナーとなったのだ。
当時の日本で、輸入ステーションワゴンの登録台数で常にランキング1位に君臨していたのがボルボだった。国産メーカーもステーションワゴンに注力していたが、目標に設定していたのがボルボである。トレンドではなくなった今も、存在感は薄れていない。2025年のプレミアムステーションワゴンカテゴリーで、ボルボは販売台数1位だった。
国内外ともに、ステーションワゴンを生産するメーカーは少なくなっている。ボルボも近年はV60と「V90」の2種だけとなり、そのV90もいつの間にかラインナップから消えた。時代の変化なので致し方ないことなのだが、もったいない気がする。
V60の後席に座ってみると、膝の前には驚くほど広い空間があった。足を組むのも余裕である。天井の高さや窓の広さでSUVが上回っているのは事実だが、乗降性や荷物の出し入れのしやすさはステーションワゴンに分があると感じる。
V60には「クロスカントリー」というモデルもあるが、先ごろ最終モデルとされる限定車の発売がアナウンスされた。1997年の「V70 XC」に始まるクロスオーバーSUVワゴンは、SUVの先駆け的な存在だったと思える。ラダーフレーム構造の本格オフローダーが主流だった時代に、ステーションワゴンをベースに車高を上げた4WDモデルに仕上げた発想は先進的だった。
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知的で文化的なオシャレ系
クロスカントリーモデルは現代的SUVの考え方を早くから体現していたが、歴史的役割を終えたのだろう。現在のXCシリーズはステーションワゴンとは独立したモデルとなり、ラインナップを広げた。ボルボがプレミアムSUV路線を歩むようになったのは必然である。それでもV60をつくり続けているのは、ブランドのDNAはステーションワゴンにあるという思いがあるからなのかもしれない。
伝統を担う存在でありながら、新しい要素も加わっている。モーター駆動の恩恵で、ワンペダルドライブが可能だ。Bレンジを選ぶとアクセル操作だけでスピードコントロールができる。街なかで便利なだけでなく、ワインディングロードでも使い勝手がいい。目をつり上げてコーナーをガンガン攻めるのでなければ、ワンペダルでリズミカルに気持ちよく走ることができる。
ユーザーインターフェイスも最新のものだ。ボルボは早くからGoogleのインフォテインメントシステムを採用しており、多くの操作を音声コマンドで指示できる。ドライブモードやエアコンの設定などはセンターディスプレイをタッチして行うようになっており、新レイアウトで使い勝手が向上した。ちょっと気になったのは、他のモデルではディスプレイが大型化されて11.2インチになったのにV60は9インチのまま据え置かれたこと。後回しにされているとひがむのは考えすぎだろうか。
ボルボのステーションワゴンは、単なる便利なクルマ以上の価値をまとっていたのだと思う。機能をそのままデザインにした合理性が評価され、豊かなライフスタイルを実現できる魅力的なツールと考えられていた。知的で文化的なイメージがあり、カメラマンやスタイリストなどのファッション業界人が乗るオシャレ系でもある。ボルボのSUVが優秀であることは重々承知しているが、久しぶりの試乗でアクティブ系ボルボのルーツがステーションワゴンであることにあらためて気づかされた。
(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1850×1430mm
ホイールベース:2870mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2500-5000rpm
フロントモーター最高出力: 71PS(52kW)/3000-4500rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-1万5900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
システム総合出力:350PS
タイヤ:(前)235/40R19 96W XL/(後)235/40R19 96W XL(ミシュラン・プライマシー4)
ハイブリッド燃料消費率:15.6km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:91km(WLTCモード)
交流電力量消費率:202Wh/km(WLTCモード)
価格:919万円/テスト車:978万0530円
オプション装備:Bowers & Wilkinsハイフィデリティオーディオシステム<1410W、15スピーカー、サブウーハー付き>(39万円) ※以下、販売店オプション ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダーアドバンス<ブラケット付き/工賃含む>(17万3250円)/キーフォブシェル(2万7280円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:5530km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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