「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか?
2026.04.29 デイリーコラムトランプ大統領のおかげ?
世のなか何が起きるか分からないものですなぁ。まさか、令和に「インテグラ」が復活するなんて。
というわけで、再び日本で販売されることになったインテグラ。タイミングは“2026年後半から”とのこと。
「そんなの誰かの妄想か勝手な予想でしょう?」と思う人もいるかもしれないけれど、そうじゃない。ホンダ自らが公式にそうアナウンスしている(2026年3月5日付のニュースリリースで公表済み)、確かな情報なのだ。
背景にあるのは、トランプ大統領が発した「アメリカには日本車がたくさん走っているのに、日本ではアメリカでつくったクルマを見かけないじゃないか」という一声からはじまった一連の流れ。それを受けて国土交通省は新たに米国製乗用車に関する認定制度をつくり、特例としてアメリカ生産車を容易に日本へ持ち込めるようにした。その制度を活用してホンダはアメリカ製のインテグラを日本へ“逆輸入”するというわけだ(“逆輸入警察”にお伝えしておくと、日本ブランドの海外生産品を日本へ持ち込む表現として「逆輸入」は不適切ではない)。トヨタが北米生産車の「タンドラ」や「ハイランダー」、そして「カムリ」を、日産が「ムラーノ」を北米から輸入するのも同様の理由である。
ホンダは明らかにしていないが、状況を考えるとアキュラ・インテグラ(現地ではホンダではなく上級ブランドのアキュラで販売されている)は左ハンドルのまま日本に導入されることになるだろう。
シャシーは「シビック タイプR」と共通
注目はそのグレード。なんと同車のトップスポーツグレードである「タイプS」を持ってくるというからうれしすぎる。「左ハンドルで、それなりに高価で、大量に売れるモデルではないだろうからイメージを際立たせるように“いちばん上”を持ってこよう」という判断は大いにアリだと筆者も思う。
「6段マニュアルトランスミッションと2リッターターボエンジンを搭載した高性能グレードのタイプSを導入します。アキュラらしいプレミアムな雰囲気と、ストリートでの迫力ある存在感の両立を目指したハイパフォーマンスモデルです」とホンダは説明する。
何を隠そう、インテグラ タイプSのシャシーは「シビック タイプR」と共通で、エンジンやトランスミッションも同じもの。言い方を変えれば「タイプRジェネリック」である。
なにが違うかといえば、サスペンションの味つけだ。サーキットを本拠地とするタイプRに対し、タイプSはあくまでワインディングロードやハイウェイなどのストリート志向。ガチガチに固めず、快適性も加味したしなやかなセッティングにしているのだ。
なんでタイプRじゃないのか? と疑問を持つかもしれないが「それは目指す方向が違うから」としか言いようがない。サーキットを走るのであればタイプRがサイコーだけど、タイプSはそれと同等のプレジャーを得られつつ日常もソツなくこなす「フレキシブルなヤツ」なのだ。サーキットでコンマ1秒を争うようなユーザー以外にとってはタイプSのほうが相性はいいだろう。サーキットに足を踏み入れないならスニーカーで十分であり、ガチの陸上スパイクはいらないのだ。問題は「タイプR」の称号がないことくらい?
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値段がだいぶ違うかも
というわけで、ここからが本題。今回のコラムのテーマは「左ハンドルさえ気にしなければ、インテグラ タイプSを買うことでシビック タイプRと同じようなドライビングフィールが味わえるのでしょうか?」というものだが、結論からいえばそれは無理。だってタイプSなんだから。こういってはナンだが、極上のレーシングスピリットはやっぱりタイプRじゃないと体感できない。ニュルブルクリンク北コースをクラストップのラップタイムで周回する性能は、やはりタイプRだけの世界なのだ。
とはいえ、タイプSでは物足りないかといえば筆者はまったくもってそうは思わない。限界領域での性能こそタイプRに届かないのは間違いない。けれど、タイプSであっても運転する楽しさがハイレベルであることは揺るぎなく、タイムアタックをするようなユーザーでなければサーキット走行でも不満を抱くことはないだろう。それに走りのバランスや快適性は明確にタイプSのほうが上だろうから、筆者はあえてタイプSを選んでもいいと思える。
問題は価格かもしれない。アメリカでの価格は5万3400ドルで、これは日本円に直すと850万円ほど。消費税を含めると900万円を超えてしまう(さらに輸送費用だってかかる)。もしもホンダが日本において900万円以下で販売したら「相当頑張った値づけ」といえるけど、それでもシビック タイプRよりは高額だ(すべては円安のせい!)。もしかすると入手困難に近いシビック タイプRよりも手に入れやすいかもしれないけど、価格的には上をいくだろう。
というわけで走りの面だけじゃなく、そういう意味でも「インテグラ タイプSはシビック タイプRの代役にはなり得ない。だけど魅力は極めて高い」というのが筆者の結論。
もしかすると、ポテンシャルを高めた仕様として2024年にコンセプトカーが公開された「インテグラ タイプS HRC」として「シビック タイプRよりすごいインテグラ」が出現するかもしれないけど。コンセプトモデルはリアシートすらないほどスパルタンだったっけ。
(文=工藤貴宏/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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