間もなく販売スタート 「シビックe:HEV RS」でホンダはかつての輝きを取り戻せるか?
2026.05.21 デイリーコラムピンチの現状はある意味チャンスか?
webCGのホンダ関連のニュースを読んでいると、気がめいってきた。2026年3月12日にアップされた記事のタイトルは「ホンダが四輪電動化戦略の見直しを発表 『Honda 0サルーン』などの開発を中止」(参照)。同年3月25日は「ソニー・ホンダモビリティが電気自動車の開発と発売の中止を発表」(参照)。そして同年4月21日には「ソニー・ホンダモビリティが事業縮小を発表 従業員はソニーやホンダに再配置」(参照)。中止とか縮小とか、元気の出ない言葉が並ぶ。
一連の記事を要約すると、BEV市場が伸び悩んでいることを受けてHonda 0サルーンや「Honda 0 SUV」、「アキュラRSX」の開発・販売を中止。それに伴う損失額は累計で2兆5000億円に。ソニーとの合弁会社、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が発売を予定していた「アフィーラ1」も商品化を断念し、SHMは事業を大幅に縮小する、という流れだ。
世界中の自動車メーカーがBEVへの移行に前のめりになっていたが、もくろみが外れて電動化戦略の見直しを迫られている。長期的にはBEVが主流になっていくにしても、インフラの整備が間に合わないこともあって需要は伸び悩んだ。2030年に100%BEV化などという野心的な計画をぶち上げたメーカーも前言撤回に追い込まれる。どのメーカーも無傷では済まなかったわけだが、特にダメージが大きかったのがステランティスとホンダだった。
危機を脱するためのシナリオが、HEVに注力して販売を伸ばすという構想だ。トヨタが豊富なHEVのラインナップを展開しているのに対し、ホンダはモデル数が限られている。日本ではずっと以前からHEVが人気であり、欧米でも需要が拡大傾向にあるという。ホンダは1999年の「インサイト」からHEV技術を磨き上げてきており、現状はある意味チャンスなのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
2ペダルのハイブリッドでも意のままに操る喜びを
2026年6月に発売が予定されている「シビックe:HEV RS」のプロトタイプに試乗してきた。2025年に発売された「プレリュード」と同じ制御技術「ホンダS+シフト」を搭載したHEVである。これが実に気持ちのいい走りのクルマだった。適度にスポーティーで、実用性も兼ね備えている。ガソリンエンジン+MTの「タイプR」ばかりが売れるという困った状況のシビックに、2ペダルで軽快に走るモデルが加わったことは朗報だ。開発を主導した本田技研工業の柿沼秀樹氏に導入の狙いについて話を聞いた。
「プレリュードでハイブリッドスポーツを提案しました。それがS+シフトですね。ただ、2ドアだし価格も安くはない。ちょっと手が出ないというお客さまにもS+シフトの価値を知ってほしいということで、グローバル機種であるシビックに搭載したことに意味があります。昔は3ペダルで意のままに操る喜びがあったわけですが、2ペダルのハイブリッドでも同じような感動と興奮を味わってほしい。それがホンダの思いです」
シビックは1972年に初代がデビュー。コンパクトなサイズとシンプルなデザインをセリングポイントとするベーシックカーで、大衆的人気を獲得した。翌1973年に低公害エンジンの「CVCC」を搭載したモデルが追加され、世界的な大ヒット作となる。これまでに170カ国以上で販売されてきたグローバル戦略車なのだ。
「シビックはもともとカジュアルで、安価で、よく走るクルマ。そういうイメージをもう一度取り戻したい。タイプRは“究極のFFスポーツ”ですが、シビックには肩の力が抜けた友達みたいな関係も大事な要素としてあると思うんです。等身大というか、人とクルマが同じ立ち位置で付き合えるようなモデルがe:HEV RSですね」
パドル操作もできるが、クルマを信用して疑似変速に身をまかせてもいい。絶妙なタイミングでシフトアップ/ダウンをしてくれるので、運転が上手になった気分になる。ハイスピードでなくても、十分にスポーツ感覚の走りを楽しめた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
次世代e:HEV全搭載機種にホンダS+シフトを採用?
「ハイブリッドは静かだしシームレス。人が快適でいられる、どちらかというとクルマの存在を忘れる、というのが価値だと思います。でも、やっぱり自分がこう運転したいという意思や操作にクルマが反応してくれる。そこに価値を見いだす方は多いんじゃないでしょうか。サウンドとかダイレクトな足まわりとかで、情報をやり取りする。人とクルマが呼応し合う感覚です」
ニュルブルクリンクで最速を競うのも大切だが、シビックは幅広いユーザーに受け入れられるクルマでありたい。e:HEV RSにはその先導役となることが期待されている。シビックの販売拡大にとどまらず、ホンダの将来を左右する役割を担っているのだ。
「S+シフトをホンダのハイブリッドのコア技術として広げていく計画があります。ハイブリッド車のマイナーチェンジのタイミングで随時適用していくことになるでしょう。もちろんフルモデルチェンジ(する車両)でも、この技術が使われるはずです」
かつて「VTEC」がホンダの代名詞だったように、S+シフトをブランドとして確立することを目指している。これは当初から考えられていた戦略だ。2024年にS+シフトを初公開した際のプレスリリースに「ホンダS+シフトは、2025年に発売予定のプレリュードを皮切りに、次世代e:HEV搭載の全機種に順次搭載していく予定」と記されていた。「フィット」「ヴェゼル」あたりは間違いなさそうだが、「フリード」「ステップワゴン」にまで拡大されるのだろうか。
「SUVはもちろん入っています。ミニバンは、ちょっとどうだったかな……(笑)」
S+シフトが運転する楽しさをもたらす技術であることは、プレリュードとシビックで証明された。ハイブリッドでもスポーティーな走りを提供することができる。ならば、BEVでも同じことが可能であるに違いない。いつの間にか次世代のクルマはスマホ化してエンタメ空間になることが決定事項のように語られているが、あまりにも単純で画一化された考えのように思える。ホンダの四輪電動化戦略は、ぜひとも新時代の走りを追求する方向性で見直してほしい。切なる願いだ。
(文=鈴木真人/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地 2026.10.2 日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会が、記者会見で「自動運転」の普及・実装へ向けた取り組みを発表した。彼らは、どのようなロードマップで自動運転の社会実装を考えており、そこにはどのような課題があるのか?
-
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する 2026.10.1 BYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。
-
目指したのは“さらなるスポーティーセダン” 新型「BMW 3シリーズ」の技術的ハイライトを読み解く 2026.9.30 BMWが「i3」に続いて「3シリーズ セダン」の新型を公開した。かたや電気自動車、かたや内燃機関搭載車とはいえ、どちらも同じ3シリーズなのだが、どうも世間の受け止めはそうではないらしい。それはともかく、「Mスポーツ プロ」も設定された新型の技術的ハイライトを解説する。
-
目指せ国内生産100万台! 日産の国内事業再編にみる思惑と狙い 2026.9.28 日産が将来の成長へ向けた国内事業の再構築を発表。国内生産100万台を実現すると表明した。赤字に工場閉鎖と、暗いニュースが続いていた日産だが、現状の4割増しというこの大胆な目標は、達成可能なものなのか? そもそも日本での事業にこだわる理由とは?
-
あのクルマはなぜ売れている? 自販連のデータから“日本車の今”を読む 2026.9.25 ここ数年の自販連のデータからは、国内市場におけるトヨタのゆるぎない強さが見てとれる。ではその実績から、人々にどんなクルマが求められているといえるのか? 統計や数字の裏にある消費者マインドを探ってみよう。
-
NEW
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ランボルギーニ・テメラリオ編
2026.10.2webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。プラグインハイブリッド化によってさらなる高性能を手にした、ミドシップスーパースポーツの走りを語る。 -
NEW
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す
2026.10.2エディターから一言2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。 -
NEW
メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地
2026.10.2デイリーコラム日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会が、記者会見で「自動運転」の普及・実装へ向けた取り組みを発表した。彼らは、どのようなロードマップで自動運転の社会実装を考えており、そこにはどのような課題があるのか? -
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する
2026.10.1デイリーコラムBYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。 -
マツダCX-5 L(後編)
2026.10.1あの多田哲哉の自動車放談ファン待望の新型「マツダCX-5」ではあるが、試乗した多田哲哉さんは気になるところがある様子。一体、どんなところが……? さまざまな車両を開発してきた専門家としての意見を聞いてみよう。 -
楽しいのが一番! 世界のスポーツカー特集
2026.10.1日刊!名車列伝過ごしやすい気候になり、ドライブが楽しみな10月。「スポーツの秋」ということで、クルマ好きならグッとくる、国内外のスポーツカーを日替わりで紹介します。










































