業績不振は想定内!? 名門ポルシェはこの先どうなってしまうのか?
2026.05.04 デイリーコラム不振はあくまで一時的?
「天下のポルシェに明るい未来はあるのか?」。そんなド直球の質問には迷わずこう答えたい。ポルシェがポルシェであり続ける以上、未来は明るいと……。
確かに最新の業績リポートには、“ポルシェ不振”を印象づけるに十分な数字が並ぶ。2026年第1四半期の販売台数は6万0991台で前年同期(7万1470台)比15%ダウン。2025年通期でも2024年比で10%ダウンしており(31万0718台→27万9449台)、グループ全体の営業利益はなんと、56億4000万ユーロから4億1300万ユーロへと90%以上も減った。つい最近にはリマック・ブガッティの持ち株を放出するというニュースもあった。表面的な情報だけを追えば、誰だって“名門崩壊の危機”という印象を抱くに違いない。
もっとも、ここまで極端に業績が落ち込んだ理由ははっきりとしている。主要な車種のフルモデルチェンジの谷間という、いってみれば必然的な“底の時期”に、運悪くというか中国市場の急激な低迷やアメリカ市場におけるEV戦略のつまずきといった一時的もしくは突発的な要因が重なったからだ。
「マカン」や「カイエン」といった販売主力モデルをすべてBEVに転換するという、そもそもの戦略が間違っていたとする意見は当初から、特に日本のマーケットでは根強くあった。けれどもBEV戦略そのものを否定することはできない。BEVアレルギーの強い日本人には理解しづらいが、もし中国市場が堅調に推移して、トランプ大統領が当選しなければ、ポルシェSUVのBEVがヒットした可能性もあった。要するにタイミングが悪かっただけで、ブランドの構造的な競争力がそがれたわけでは決してない。
ちなみに日本では「BEVは終わった」というイメージが浸透してしまっているが、世界を見渡せばいまだに新車販売の4、5台に1台はBEVという時代であり、各市場の環境や政策によって左右されつつも上昇基調であることは間違いない。好むと好まざると、また好みの濃淡はあれどもBEVは確実に浸透しつつあり、よほどのことがない限り、もはや後戻りはできない。バッテリーなど骨格となる技術の進化(と投資)を考えればなおさらだ。
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“好転の材料”も豊富にある
昨年のポルシェ社の営業利益落ち込みにしたところで、特別損失が大半だった。電動化戦略の再調整や新製品の開発、かみ砕いていえば(われわれ日本人も期待する)エンジン付きのスポーツカーやSUVへの再投資、といった販売立て直しのための初期コストを2025年中に処理したためだ。つまり、開発済みのBEVモデルも市場のニーズに合わせて市販に移行するけれど、加えて、これまでと同様のエンジン付き(ハイブリッドを含む)モデルも投入することで2026年後半以降の再復活にも期待がもてる、というわけだ。
一新となった経営陣は従来よりもいっそう、「スポーツカーブランド」としてのポルシェへ回帰すると明言している。「911」という絶対的アイコンの存在がブランドの要であることは、2026年3月に東京・銀座で開催されて大いに盛り上がった“空冷イベント”(首都高速の旧KK線におよそ200台の空冷911が集まったLUFT TOKYO)でも明らかで、次世代モデル(994型?)の開発も佳境に差し掛かっていることだろう。
「ケイマン」「ボクスター」のエンジン付き後継モデル(名前を継承するかどうかは別にして)も重要だ。ハイブリッド化は避けられないだろうが、軽量スポーツカーとしての魅力を保ちつつ、バッテリー+モーターの特性を生かし高回転域でエンジンを楽しめるようなご機嫌なモデルをつくることができれば、再びエポックメイクな存在となるに違いない。
さらにスポーツカーブランドとしてのアピールを高めるのであれば、今年から新CEOとなったミヒャエル・ライタースが直前まで在籍した2ブランド(フェラーリおよびマクラーレン)の得意とする分野へのチャレンジという選択肢もあるだろう。つまり、911よりも上級、ベース単価4000万円超級のリアミドスーパーカー構想だ(さらにその上のハイパーカー戦略だって魅力的だ)。そうすればスポーツカーの台あたり利益を高めていくというこの手のブランドの基本戦略を積極的に活用することもできる。
同時にファンへの精神的に良好なメッセージにもなりうる。RRの911をブランドの核心に据えつつ、リアミドシップのスポーツカーで脇を固める。これならば他のモデル、SUVやセダンおよびそのフル電動モデルに今後再び精を出したとしてもファンは納得することだろう。つまりスポーツカーブランドとして成長していくためのそれは糧であるのだ、と。
これまでにも危機は幾度となくあった。その都度、ポルシェは復活した。911を捨てない限り問題ない。その輝きは一瞬暗くなることはあっても消えることはない。さらに輝きを増すことだって可能だ。早くて2027年、遅くとも2030年より前には“ポルシェの2025年危機”など忘れられていると思う。
(文=西川 淳/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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