日産リーフAUTECH B7(FWD)
早出しのプレゼント 2026.05.23 試乗記 新型「日産リーフ」にもおなじみの「AUTECH」が仲間入り。デザインや質感などの上質さを目指した大人のカスタマイズモデルだが、走りの質感がアップしたと評判の新型リーフとは、さぞ相性がいいに違いない。300km余りをドライブした。いよいよ迎えたBEV普及元年
日本のBEVのパイオニアともいえるリーフ。その新型の販売は順調に推移しているようだ。2026年3月の登録台数は2500台余で、対前年比では683.2%、つまり7倍に届こうかという数字をマークしている。
当然日本で一番売れているBEVに返り咲き……と思いきや、待ったをかけているのが「bZ4X」だ。2025年秋、このリーフにかぶせるようなタイミングでの大刷新で兄弟車の「スバル・ソルテラ」とともに商品力をうんと引き上げただけでなく、トヨタ持ち前の組織力や販売力も相まって、販売の勢いはまったく衰える兆しがない。こちらの3月は約3400台と、比較するには分母が小さすぎるとはいえ、対前年比では9127%。実に90倍以上という数字をたたき出している。
それもこれも手厚い補助金のおかげとあらば納得がいかないところも多々あれど、一般的なデマンドにようやく商品の能力と価格が追いついてきたともみてとれるわけで、今年はようやく日本にとっての本格的なBEV普及元年になるのではないだろうか。
その一翼を担うリーフは「S」「X」「G」の3グレード展開で、S以外では駆動バッテリー容量に応じて「B5」と「B7」の2バリエーションが用意される。と、それに加えて展開されているのがAUTECHだ。厳密には日産本体とは異なり、日産モータースポーツ&カスタマイズ=NMCが扱うモデルということになるが、保証やアフターサービスは標準車系と変わらずディーラーで受けられることもあって、ウェブサイトでは他のグレードと同等の扱いとなっている。
ちなみにAUTECHはB5とB7の双方に設定され、ベースに相当する最上位グレードのGとは50万円強の価格差がある。対して、装備の違いはコスメティックに集中していて、動的性能にまつわる実質的な違いはない。
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巧妙な(?)オプションの組み合わせ
ではその内訳はといえば、エクステリアは専用のブラックバンパーシールドやサイドターンランプ内蔵のシルバー仕上げドアミラー、同じくメタリック仕上げのフロント&サイド&リアのアンダープロテクター、ブルーに光るLEDのデイタイムランニングライトやエンブレム類となる。加えてホイールは他のAUTECH銘柄に倣って専用デザインのマルチスポークタイプが採用されるが、サイズやインセット等は標準車系と同じだ。
内装はナッパレザー並みの質感や触感と、天然皮革以上の耐久性とを両立させたという人工皮革「テーラーフィット」を、シートやステアリングリムの表皮に用いている。また、インストゥルメントパネルやアームレストなどはブラックのステッチやパイピングなどにブルーの差し色が添えられる。これらをもっての価格差とみれば、納得できる方もいることだろう。
一方、ちょっと納得できないのが日産自慢の「プロパイロット2.0」の扱いだ。まず「プロパイロット」は全グレードに標準装備で、2.0はGおよびAUTECH向けのオプションとなる。が、なぜかそのオプションがアンビエントライトやリアLEDフォグライトなどとパッケージ化されていて、いや応なく37万円余の金額を払う話になる。今日びの日産車はオプションの選択肢を束ねるパターンが多いが、セット売りだと必要としないものも買うことになるなど、カスタマー側の心象としてはあまりいいものではない。
それに加えて、プロパイロット2.0を使うには年額2万8580円の「NissanConnectプロパイロットプランG」に加入する必要がある。なかには機能上必要な高精度地図のアップデートが含まれるが、このコストに見合う運用をどのくらいの方が望むだろうかといえば、判断が難しい。ちなみにプロパイロット2.0は、現行「スカイライン」に初搭載された際には年額2万2000円で利用のためのデータを随時更新する仕組みだった。リーフの場合は走行可能距離と充電施設との関連情報の提供など付加要素もあるが、それにしてもスマホの料金感覚などに対すればかなり重い感がある。
普及の道を自ら狭めるかのような方策
ゆえに、しょっちゅう高速道路を走るわけでもないだろう方々は、ADASは標準装備のプロパイロットで運用し、充電情報などが得られるNissanConnectは年額1万0980円の「スタンダードプランG」で運用することになるのではと思う……わけだが、せっかく日産が明確なアドバンテージを築くテクノロジーが金額的ハードルで普及の壁を築いているとすれば、それは相当もったいないことではないだろうか。
日産に限らず、SDVは今日びさまざまなメーカーが掲げる次世代の自動車技術の要だが、その裏にあるのは新たなスキームの構築だ。ハードの売り買いだけでみんながホクホクできるような話はすでにない。ディーラーはもうけの半分以上を車検や整備などのアフターサービスからひねり出すことで存続しているし、きっちり管理されたソースコードでアクセスしない限り修理もままならないなど、思えばソフトウエアによる囲い込み的な状況は半ば現実化している。
今後はそれが遠隔化し、その性能向上の対価による収益がクルマのビジネスの柱になると多くのメーカーは踏んでいるわけだが、果たしてそれが描いているようにうまくいくのか、また多くのカスタマーがそれを望むのかという点については明確な成功事例はない。そこでテスラの「FSD」を思い浮かべる方もいるだろうが、彼らはハードウエア全車実装という丸損覚悟でその収益化に臨んだ結果、OTAの恩恵による一定の成果を得ている。
損して得取れはIT屋の常套(じょうとう)だが、そこまでとはいわずとも、日産もソフトウエアの収益化を事業の柱に据えるとあらば、多少の無理は覚悟のうえで母数の獲得を考えなければならないタイミングにきているのではないだろうか。現状のお財布事情は察するが、まずは普及ベースで練っていかないと、それこそ母数が威力を発揮するエンドツーエンドの新しいプロパイロットも報われないことになってしまう。
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乗り心地はおおむね良好
と、この項がやたらと長くなってしまったのは、今回の試乗でプロパイロット2.0の能力をあらためて実感させられたからだ。スカイラインのころと比べても確度や柔軟性、ロバスト性など作動質感の向上は著しく、公道上においても随分と融通の利くものになっている。なんとあらばADASのクオリティーとしては「アイサイトX」をも超える相当なレベルに達しているといえるだろうか。それだけに、体験の機会が狭まってしまう状況はひたすら惜しいと思う。
新しいリーフそのもののパフォーマンスについては、Cセグメント前後級というポジションからすれば満足できるところにある。同系のプラットフォームとなる「アリア」は、連続的な路面不整や人工的な段差などの特定条件で厳しい乗り心地をみせていたが、その点がリーフは根治とはいわないまでもかなり改善されていた。それでも横揺れ方向の動きが時折強く表れるのはバッテリーを少しでも多く搭載するための床面積が特にリア側のサスのジオメトリーを制約してしまうBEVあるある系の持病なのかとも察してしまう。
ともあれ乗り心地については細かいことをいえばさらに頑張ってほしいの感もあるが、音・振動性能などに文句のつけようはない。移動空間としてはCセグメント級とは思えない、Dセグメント級の快適さが味わえる。ちなみにアリアも直近のマイナーチェンジでは乗り心地方面を重点的に改善したということだが、これも新型リーフの開発と投入で得られた知見のフィードバックという一面があるのだろう。
「ノート オーラ」や「セレナ」の例からみても、もし今後、新型リーフに「スポーツスペック」などの企画があれば、AUTECHのエンジニアリング的真価はそこで測られることになる。それまではコスメチューンということになるが、この選択肢は人とかぶらないリーフが欲しい人に向けての早出しのプレゼントといったところだろうか。
(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
テスト車のデータ
日産リーフAUTECH B7
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1810×1565mm
ホイールベース:2690mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流誘導電動機
最高出力:218PS(160kW)/4400-1万1700rpm
最大トルク:355N・m(36.2kgf・m)/0-4300rpm
タイヤ:(前)235/45R19 95V/(後)235/45R19 95V(ダンロップeスポーツマックス)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:651万3100円/テスト車=749万6100円
オプション装備:ボディーカラー<ディープオーシャンブルー/スーパーブラック 2トーン>(7万7000円)/ルーフレール+調光パノラミックガラスルーフ<遮熱機能付き>+オーバーヘッドコンソール<サングラスホルダー付き>+プロパイロット2.0+プロパイロットリモートパーキング+AC100V電源<1500W>+充電ケーブル<コントロールボックス付き、200V、7.5m>(73万7000円) ※以下、販売店オプション AUTECH専用フロアカーペット(5万8000円)/AUTECHドアステップアクセントプレート(2万4000円)/AUTECHナンバープレートトリム<前>(4950円)/AUTECHナンバープレートトリム<後ろ>(4950円)/セキュリティーホイールロック(4万5100円)/AUTECHキーケース(2300円)/フレキシブルラゲッジボード(3万3000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1457km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:317.3km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.2km/kWh
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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