ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)
一粒で二度おいしい 2026.07.10 JAIA輸入二輪車試乗会2026 個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。既存の枠には収まらない
グッドスタイルとグッドサウンド。「一粒で二度おいしい」のが新しいベンダのナポレオンボブ250だ。一粒で二度おいしい……グリコのアーモンドキャラメルって、まだ売っているのかな? そもそも二度ってどういうことだっけ? いやいや、気に留めるのはそこじゃない。ナポレオンボブは国産勢には真似のできない“こだわり”を目いっぱい注入した、なかなか気骨のあるマシンだった。
まずスタイリング。クラシカルでもあり、モダンでもあり、ボバーの流儀を踏みつつ似ているバイクは見渡してもほとんどない。現行最新モデルをベースに擬古的なスタイリングを施す、いわゆるネオクラシックの定石からも外れたところにいる。グッと低く身構えたフォルムはまるでカスタムマシンか、ショーモデルか。まどろっこしいな。要するにカッコいい! スタイリッシュ! なのである。見た目にほれたら迷わず買ってしまいなさい。そういう類いのバイクなのだろう。
そしてエンジン。V型2気筒SOHC 4バルブ(1気筒当たり)、249ccキャパシティーの水冷。すべての国産車のラインナップからこの排気量と形式が消え去ってしまったことにかんがみるまでもなく、レアな動力源だ。かつて、あれほどたくさんのメーカーから世に送り出されていたにもかかわらず、気がついたらみんなどこかにいってしまっていた2026年。復活の狼煙(のろし)が対岸の中国から上がったという経緯がおもしろい。
国産バイクに対するアンチテーゼ
さっそく試乗へ。といってもナポレオンボブに乗るのは、実は今回が2度目。かつて乗ったときのフィーリングを思い出しながらコースインした。シート高は750mmで言わずもがなの両足安心着地。ロングに見えるボディーの印象とは裏腹に、ハンドル位置は意外と手前にあって、無理なくスッと手が届く。こちらもホッとひと安心。ホイールベースの1545mmは「ホンダ・レブル250」の1490mmと比べて55mmプラスで、それほどロングなわけではなく、「特異なルックスと抱き合わせでハンドリングも特異なのでは?」という疑念を、コーナーをひとつふたつクリアするだけであっけなく払拭してくれる。ファットなタイヤを履くネガはありつつも、身構えるほどでは全然なかった。
いわゆるガーターフォークをほうふつさせるフロントサスペンションは、実際は正立テレスコピックを基本にリンクを工夫した、とてもデザインコンシャスな装備。加えてリジッドサスペンションのようなルックスのリンク式リアサスペンションにも、「どう? 面白いでしょ?」と言わんばかりの創意が練り込まれている。ひたすら簡素化と共用化を一義とする国産勢に対するアンチテーゼ……そのパワーはかなり強烈だ。
Vツインエンジンが放つサウンドは柔らかな、とてもいい音色。それでいて音量は抑えられており、パルス感よりも伸びやかなスムーズネスが際立っている。パンチこそそれほどでもないものの、低速からほどよくトルクを紡いでくれるので、発進時に気をつかうことはないし、左右のマフラーが共鳴するかのような(イメージの)高回転サウンドは「キモチイイ!」のひと言だ。スタイリングとサウンドの組み合わせの“妙”が全身で体感できるナポレオンボブには、個性派というコトバだけでは片づけられない何かがある。
欠点はリアサスペンションに起因するハードな乗り心地。およそロングツーリングには向かないだろうし、積載も残念ながら絶望的だ。ライディングポジションもシートとフットペグの位置関係によっておのずと限定されてしまう。でもショートディスタンスをさっそうと駆け抜けることができればそれでOKだよな、ナポレオンボブ! ステッチが凝っているブラウンカラーのサドルシート。手間とコストをいとわず施されたタンクの立体エンブレム。それらの丁寧な造り込みもライダー冥利だ。
“日本第1号”にこのバイクを選んだ理由
ベンダは2016年に設立された中国のメーカー、杭州サターンパワーテクノロジーが展開するブランドである。新興勢力ながら排気量クラスを問わず、クルーザータイプのモーターサイクルや四輪バギーなどを多くラインナップし、ヨーロッパやアジアで販売台数を着実に伸長させているという。新しい組織だからこそチャレンジング……とすれば、日本国内導入の第1号車をナポレオンボブにしたのはナイス判断だろう。コストの制約一辺倒の国産メーカーに「こんなバイクはつくれないでしょう」という挑発的なメッセージを込めるにふさわしいオリジナリティがあふれている。
最後に。アーモンドキャラメル、まだちゃんと売っていました。アーモンドの香ばしさと、キャラメルのコクのある風味。それらが同時に楽しめるから、一粒で二度おいしい。そういうことでしたね。そしてナポレオンボブはまったくの新型車だけど、滋味あふれる満ち足りたグッドバイクだ。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2333×838×1038mm
ホイールベース:1545mm
シート高:750mm
重量:182kg
エンジン:249cc 水冷4ストロークV型2気筒SOHC 4バルブ(1気筒当たり)
最高出力:26PS(19kW)/9000rpm
最大トルク:25N・m(2.5kgf・m)/5500rpm
トランスミッション:6MT
燃費:32.3km/リッター(WMTCモード)
価格:84万7000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2026◆◇

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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