ポルシェ・マカンGTS(4WD)
シェフの腕の見せどころ 2026.07.29 試乗記 ポルシェの擁する電動のハイパフォーマンスSUV「マカン エレクトリック」に、さらに走りを磨いた「GTS」が登場。エンジンを積まない電気自動車(BEV)でも、ポルシェならでは、GTSシリーズならではの走りは楽しめるものなのか? 雨のなかの試乗を通して確かめた。ポルシェ定番のスポーツ仕様
ベースグレードに「4」「4S」「ターボ」ときて、次にGTSとくるのは、いまやポルシェの全車に共通するモデルバリエーションの基本戦略である。1963年の「904カレラGTS」に由来するこの名は「グランドツーリングスポーツ」の略称であり、4Sとターボの間をつなぐスポーツ仕様の位置づけにある。
エクステリアにおけるGTSの特徴は、フロントスポイラー、サイドミラー、サイドブレード、ホイールアーチトリム、リアスポイラーリップなどがブラック仕上げになること。加えてこのマカン エレクトリックでは、サイドスカートがリアに向かって幅広になる専用のデザイン。インテリアでは「GTスポーツステアリングホイール」やセンターコンソール、ドアパネルのアームレスト、ダッシュボードに人工スエードの「Race-Tex」を採用している。
またマカン エレクトリックとしては初めてエクステリアとインテリアのカラーコーディネートを可能にした「GTSインテリアパッケージ」をオプションで設定。「カーマインレッド」の試乗車は、そのエクステリアカラーに合わせてシート、ステアリングホイール、ドアパネル、ダッシュボード上部に赤いステッチが施され、シートベルトも赤色に。ステアリングホイール、ダッシュボード、ドアパネルにはカーボンファイバートリムが施されていた。
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0-100km/h加速は4秒を切る
シートに腰掛けてブレーキを踏むと、スタート/ストップボタンを押さなくてもシステムが起動する。撮影当日はあいにくの雨だったが、朝5時前に都内を出発し御殿場方面を目指す。ステアリングはずっしりと手応えがあり、いかにもこれがGTSであることを感じさせる。そして表皮のRace-Texが手のひらをしっかとグリップする。ドライブモードは「ノーマル」で走りだしたが、走りの重厚感とは裏腹に車内はいたって静か。モーターやインバーターの音も耳をすませば聞こえるかなという程度のもの。専用チューニングが施されたエアサスペンション装着車はベースより車高が10mm低くなっているが、乗り心地は想像していた以上にしなやか。首都高速のジョイントをタタン、タタンとリズムよく乗り越え、あっという間にショックを収束させる。
東名高速の東京料金所手前で「スポーツ」モードに切り替えてみる。ノーマルモードでは航続距離を最大化するよう後輪をメインに駆動力を配分するが、スポーツモードでは前輪にもよりトラクションがかかるようになる。料金所を抜けて強めにアクセルペダルを踏むと、GTS専用にチューニングされた「ポルシェエレクトリックスポーツサウンド」が車内に響きわたり、最高出力571PS、0-100km/h加速3.8秒というパフォーマンスの片りんがうかがえた。車両重量2450kgにもかかわらず、その加速の鋭さは「911カレラ」をもしのぐ。ちなみに先日試乗した「911 GT3 S/C」でも0-100km/h加速は3.9秒とほぼイーブンなのだから、くれぐれも図体の大きなSUVだからとナメてかかって加速競争に挑まないことをお勧めする。
プラットフォームはおなじみの「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」で、駆動用リチウムイオンバッテリーの総容量は100kWh(実用量95kWh)。前後アクスルに永久磁石同期モーターを配置した2モーター方式の4WDだ。GTSのパワートレインはターボ譲りのもので、リアアクスルにはマカンシリーズで最大最強の電気モーターを搭載。ローンチコントロールをオンにすれば、571PSの最高出力が解放され、最大トルクは955N・mにも達するというが、さすがに今回はこれを試すようなシーンはなかった。
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ドライブフィールはポルシェそのもの
電子制御の「ポルシェトラクションマネジメント(ePTM)」を備えた4WDシステムは、2つの電気モーターを個別にリアルタイムで制御し、従来の全輪駆動システムよりも約5倍速く反応し、10ミリ秒以内にスリップを検知するという。これに加えて、後輪左右のトルクを可変配分する「ポルシェトルクベクトリングプラス(PTVプラス)」も標準装備。リアモーターのすぐ後ろに電子制御ディファレンシャルロックを配置し、前後重量配分は48:52と走行時により理想的な配分となるよう工夫されている。さらにはオプションのリアアクスルステアも加わって、雨の中でも安心安全のコーナリング性能を発揮する。
このターボ譲りのリアアクスルにはひとつだけデメリットがあって、ラゲッジスペースに干渉してしまうため、マカン4などのラゲッジ容量が540リッターなのに対して、ターボやGTSでは476リッターに減少してしまう。走りか実用性かという話だが、そこはGTSなのだから言わずもがなだろう。
そういえばマカンには、回生ブレーキの強さを調整したり、いわゆるワンペダルドライブを可能としたりするような機能はない。したがってステアリングにパドルは備わっていない。以前「タイカン」の開発者が、減速時はエンジンブレーキのような自然なフィーリングになるよう調整したと話していたことを思い出した。制動はあくまでブレーキペダルを踏むという操作が主体であり、踏力に応じて回生ブレーキも連動する仕組みになっている。空走感のようなものはみじんも感じられず、まったくもって盤石のポルシェのブレーキフィールが味わえる。
カタログの一充電走行距離(WLTCモード)は606km。最大270kWの急速充電器に対応し、約21分で10%から80%までの充電が可能という。ちなみに、車両を借り受けた際のバッテリー残量は98%で、航続可能距離は436kmとなっていた。今回の試乗では292.2km走行して平均電費は4.3km/kWh。雨天のなか、エアコン、ヘッドライト、ワイパーがフル稼働してのものと考えれば、そう悪くはないだろう。
内燃機関のないBEVにGTSの味が出せるのだろうか。試乗する前にはそんな懸念を抱いていたが、それは杞憂に終わった。ターボが冷静かつストレートに速さを重視しているのに対して、GTSは少し情熱的で俊敏さとシャープさを持ち合わせている。つくづくポルシェというシェフの腕前には感心するばかりだ。
(文=藤野太一/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=ポルシェジャパン)
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テスト車のデータ
ポルシェ・マカンGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1950×1610mm
ホイールベース:2893mm
車重:2450kg(車検証記載値)
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:517PS(380kW)<ローンチコントロール使用時:571PS(420kW)>
システム最大トルク:<ローンチコントロール使用時:955N・m(97.4kgf・m)>
タイヤ:(前)255/40R22 103Y XL/(後)295/35R22 108Y XL(ブリヂストン・ポテンザ スポーツ)
一充電走行距離:606km(WLTCモード)
交流電力量消費率:20.5–18.5kWh/100km(約4.9-5.4km/kWh、WLTPモード)
価格:1396万円/テスト車=1763万円(2026年3月の車両登録時点の金額)
オプション装備:ボディーカラー<カーマインレッド>(22万9000円)/GTSインテリアパッケージ<カーマインレッド>(85万1000円)/リアアクスルステアリング(27万8000円)/22インチRS Spyder Designホイール<アンスラサイトグレー塗装>(38万5000円)/モデル名および“electric”ロゴ<ブラック、サテングロス>(0円)/電動充電ポートカバー(8万6000円)/カーボンインレイ付きRace-Tex加工マルチファンクションGTスポーツステアリングホイール(9万3000円)/カーボンインテリアパッケージ(11万2000円)/センターアームレストのモデル名ロゴ エンボス加工(4万2000円)/イルミネーテッドドアシルガード<カーボン>(14万3000円)/“PORSCHE”ロゴLEDドアカーテシーライト(5万4000円)/パッセンジャーディスプレイ(22万3000円)/拡張現実ヘッドアップディスプレイ(32万7000円)/3Dサラウンドビュー(7万円)/コンパス スポーツクロノストップウオッチ インストゥルメントダイヤルおよびパワーメーター(8万1000円)/ドライブアシスト(16万1000円)/エアクオリティーシステム(6万4000円)/シートヒーター<リア>(6万3000円)/ISOFIX I-Size取り付けポイント<助手席>(2万7000円)/100V電源ソケット<ラゲッジコンパートメント内>(2万2000円)/ストレージパッケージ(4万1000円)/RHD仕様(0円)/パノラマルーフシステム(24万7000円)/プライバシーガラス(7万1000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2174km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:292.2km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.3km/kWh(車載電費計計測値)
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藤野 太一
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