ポルシェ・マカンGTS(4WD/7AT)
なんでもできる! 2022.04.08 試乗記 改良型「ポルシェ・マカンGTS」に試乗。内外装のブラッシュアップとともに注目すべきは、最高出力が440PSに向上した2.9リッターV6ターボと、標準装備されるスポーツエアサスペンションのパフォーマンスだ。果たしてその走りやいかに。きっちり煮詰められた足まわり
いや〜、びっくりした。ポルシェ・マカンGTSで路上に出て、都心の市街地、それから高速道路を抜けて郊外へ向かう道中、「ほぉ」とか「むむっ」とか、驚きの連続だった。
何に驚いたかといえば、その乗り心地だ。
最高出力440PSというハイパワーに合わせて、足まわりはそれなりに固められている。だからステアリングホイールやシートを介して路面から伝わる手応えや感触は、硬質だ。でも、言葉遊びではなく、硬質なのに高質なのだ。
カタいけれど、トゲがないから不快じゃない。不快じゃないというより、むしろカタさが気持ちいい。この“カタ気持ちいい”と感じる乗り心地、路面からのショックをどこか1カ所ではなくボディー全体で受け止めているような感覚、そして余分な動きがないことで4本のタイヤとボディーの四隅まで手のひらで把握できているように感じるあたりは、簡単に言えば「ポルシェ911」に近い。けれどもマカンGTSからは、911よりもサスペンションがストロークしてショックを緩和しているかのような、懐の深さがある。
ハーシュネス(路面からの突き上げ)はハードだけれど思うとおりに動くから納得できる、というレベルのはるかに上をいくこの乗り心地は、マカンGTSに標準装備される、車高が10mm低くなるスポーツエアサスペンションと、やはり標準装備されるPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)の働きによるものだ。
ポルシェのエントリーSUVであるマカンは2021年夏にマイナーチェンジを受けたけれど、この時にマカンGTSのスポーツエアサスペンションも小変更を受けている。資料によれば剛性のアップがキモで、フロントアクスルで10%、リアアクスルで15%高められているという。
この何%かという数値はともかくとして、足まわりのセッティングがきっちり煮詰められ、無駄なく滑らかに動いていることは間違いない。
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大掃除を終えた書斎のよう
あまりの乗り心地のよさにコーフンしてしまったけれど、落ち着いてマカンGTSというモデルの現況を整理しておきたい。
2014年にデビューしたミドルクラスSUVのマカンは、2018年にマイナーチェンジ。そして3年後の2021年夏にも小変更を受け、ラインナップは今回試乗したマカンGTSと「マカンS」「マカン」の3モデルになった。2022年2月には「マカンT」が追加設定されたが、従来の最高性能版である「マカン ターボ」は、いまのところカタログに名前はない。
マカンGTSの2.9リッターV6ツインターボエンジンの最高出力は、従来型と比べてプラス60PSの440PSとなっている。この数値は、従来型のマカン ターボと同じだ。
参考までに、マカンSの2.9リッターV6ツインターボエンジンの最高出力は26PSアップの380PS、マカンTとマカンの2リッター直4ターボエンジンは13PS増量の265PSとなっている。
2021年の小変更では、外観にも手が加わっている。フロントが立体感のある造形となり、リアはディフューザーの存在感を強調。全体に、「やってやるぜ」という雰囲気が色濃く出た外観になっている。
外観より大きく変わったのがインテリアで、911などと同じように、スイッチ類を最低限にして、10.9インチのタッチスクリーンがインターフェイスの主役を担うようになっている。これによって、内装は大掃除を終えた書斎のようにすっきりとして、どこに何があるのかがよくわかるようになった。
911から採用されるようになった「マルチファンクションGTスポーツステアリング」がマカンにも備わるようになったことも、トピックのひとつだ。
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スペックよりも官能性に価値を感じる
といった具合に改良を繰り返している間に、マカンには大きな動きがあった。コロナ禍もあって少し進捗(しんちょく)は遅れているようだけれど、次期型よりマカンはBEV(電気自動車)になるというのだ。ということは、もしかするとこのV6ツインターボとの逢瀬(おうせ)も、あと数回になるかもしれない。心の中で手を合わせながら、スターターを回す。
低回転域では「♪トゥルル」という耳に心地よいハミングとともに回転を上げるこのエンジンは、右足の親指の付け根にほんの少し力を込めるだけで、敏感に反応する。だから市街地で、前を行くクルマに合わせてほんの少し速度を上げるだけでも、思いどおりに加速する快感を味わうことができる。精密な機械を操作する喜びがあるから、30km/h走行でも気分がいい。
3500rpmを超えたあたりから、「♪トゥルル」から「クウォーン」に変化する。この中速域で回転が上がるのと比例して野趣が増してくる感覚がゾクゾクする。たまらない。
そして5000rpmを超えるあたりで、「クウォーン」が「カーン」というレーシーな乾いた音に変わっていく。標準装備のスポーツエキゾーストシステムには、排気音から雑味を取り除き、ドライバーの琴線に触れる音だけを強調するような、特別な音響効果装置が備わっているのではないか。
最高速度272km/hとか0-100km/h加速4.3秒というスペックよりも、ゆっくり走っていても、ガツンと踏んでも、人の心に訴えかけてくる官能性に価値を感じる。
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実はかなりのお値打ち価格
乗り心地のよさに感心した足まわりであるけれど、ワインディングロードに入るとさらにびっくり仰天だ。マカンはもともと、そのコンパクトなサイズを利してきびきびと曲がるSUVであったけれど、足まわりの熟成が進んだ最新のマカンGTSは、さらに洗練された身のこなしをみせた。
まずコーナー手前でフルブレーキングすると、クルマが前のめりになるのではなく、水平姿勢を保ったまま路面に吸いつくように速度が落ちていく。この安心・安定の減速感は、いかにもポルシェらしいものだ。
そして手触りも手応えも抜群のステアリングホイールを切り込むと、適度にロールしながら、ノーズの向きを変えていく。マカンGTSのロールは、これ以上ないと思えるほど前後のバランスが完璧で、しかもロールのスピードが速すぎず、遅すぎず、ドライバーの感性に近いものだから、気持ちよく旋回できる。
実は、この気持ちのいい旋回の裏では、「ポルシェ・トルクベクタリング・プラス(PTV Plus)」が後輪の左右のトルク配分を制御して、安定感とクルッと曲がる旋回性能を両立させている。このコントロールが絶妙で、ドライバーは「俺の運転、イケてるぜ」と酔うことができる。ステアリングホイールに備わるドライブモードで「スポーツ」を選べば、切れ味がさらに2割増し、3割増しとなる。
市街地を粛々と走らせれば、静かで快適なミディアムクラスの高級車。キャンプにも行けるしタイヤを替えればスキーやスノボ用エクスプレスとして大活躍するSUV。そしてワインディングロードではまさにポルシェのスポーツカー。そして、こうした3通りのキャラをそこそこ無難にこなしているのではなく、完璧にこなしてくれる。一粒で三度おいしいこのクルマが1188万円というのは、かなりのお値打ち価格だと思える。
思えばフェルディナント・ポルシェ博士は、第2次大戦前はダイムラー・ベンツの技術部長として超高性能エンジンを手がけ、その後、実用車の鏡である「フォルクスワーゲン・タイプ1(ビートル)」の原型をつくった。ポルシェ博士の遺志を引き継いだフェリー・ポルシェはスポーツカーを開発した。したがって、なんでもできるマカンGTSは、まさにポルシェらしいポルシェだといえるのではないか。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ポルシェ・マカンGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4726×1927×1596mm
ホイールベース:2807mm
車重:1960kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:440PS(324kW)/5700-6600rpm
最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/1900-5600rpm
タイヤ:(前)265/40R21 101Y/(後)295/35R21 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:9.9リッター/100km(約10.1km/リッター、欧州複合モード)
価格:1188万円/テスト車=1516万2000円
オプション装備:ボディーカラー<カーマインレッド>(39万5000円)/GTSレザーインテリアパッケージ<カーマインレッド、レーステック>(63万6000円)/ポルシェアダプティブエアサスペンション<レベルコントロール、ライドハイトコントロール>(0円)/パワーステアリングプラス(4万4000円)/ポルシェ・トルクベクタリング・プラス<PTV Plus>(24万8000円)/アルミルック燃料タンクキャップ(2万2000円)/ヒーター付きGTスポーツステアリングホイール<レーステック>(17万円)/パノラマルーフシステム(27万5000円)/シートヒーター<フロント、リア>(7万円)/リアシート用サイドエアバッグ(6万8000円)/レーステックルーフライニング(21万8000円)/カラーメーターパネル<カーマインレッド>(0円)/ティンテッドLEDヘッドランプ<PDLS Plus含む>(7万6000円)/スモーカーパッケージ(7000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(19万7000円)/ペイントキー レザーキーポーチ<カーマインレッド>(5万8000円)/21インチGTデザインホイール<ハイグロスブラック>(27万円)/トラフィックジャムアシスト(11万7000円)/アダプティブスポーツシート<18ウェイ電動調整>(24万4000円)/ストレージパッケージ(4万円)/PORSCHEロゴLEDカーテシ―ランプ(4万8000円)/プライバシーガラス(7万9000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2471km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:248.3km
使用燃料:28.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)/8.8km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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