ボルボC70 T5 GT(FF/5AT)【試乗速報】
ココロは晴れやか 2010.03.15 試乗記 ボルボC70 T5 GT(FF/5AT)……589.0万円
いちばん優雅なボルボ、4座オープンの「C70」がフェイスリフト。あいにくの雨の試乗でリポーターが気付いたのは……。
雨にも凹(へこ)まず
カブリオレに試乗するときほど、天気が心配なことはない。このクルマの場合も、試乗会を前にこまめに天気予報をチェックし、なんとか曇りで済めばいいなと願っていた。しかし、試乗会当日は無情にも雨。オープンカーが大好きで、1秒でも長くルーフを開けておきたい私だけに、いつもなら相当凹(へこ)むところだが、意外に穏やかな気持ちで過ごせたのはなぜか?
おそらく、クーペ状態の「C70」があまりに心地よかったからだろう。カブリオレには、オープンのときはとても爽快でも、屋根を閉めると息苦しい雰囲気になったり、ノイズがこもってうるさかったり……というクルマが珍しくない。ところがこのC70は、クーペで走ることがストレスにならないのだ。もしも、ほとんどルーフを開けたことがないというオーナーがいたとしても、C70なら納得できる。
紹介が遅れたが、今回試乗したのは、ボルボのクーペ・カブリオレモデルの新型C70。新型といってもマイナーチェンジなのだが、次期型「S60」や最新の「C30」に通じる新しいフロントフェイスが、これまでとは大きく印象を変えている。LEDをあしらったリアコンビネーションランプも、新鮮さをアピール。フルモデルチェンジといわれたら、信じてしまいそうだ。
グレードを1本化
ボルボは、C70のマイナーチェンジによって、「S40」や「V50」との違いを明確にするとともに、クーペ仲間のC30とも差別化を図ろうとしている。
マイナーチェンジ前に比べると格段に精悍(せいかん)になったC70のフロントフェイスは、一見新しいC30と同じように思えるが、V字型のセンター部分や格子状のラジエターグリルがC30よりも上品な雰囲気をつくりあげている。
一方、インテリアは、これまでS40、V50、C30と共通だったダッシュボードが、新型C70では独自のデザインにリニューアルするほどの力の入れようだ。宙に浮かんでいるような“フリーフローティング・センタースタック”は健在だが、確かに旧型と比べると、ずっとシャープな印象になった。
エンジンのラインナップは、これまで用意されていた自然吸気2.4リッター直列5気筒がドロップして、2.5リッター直列5気筒ターボのみとなり、グレードも「C70 T5 GT」1本になった。
標準で本革シート、17インチアルミホイールがつくが、プラス40万円のオプション「ラグジュアリーパッケージ」を選ぶと、セミアニリンレザーのプレミアムソフトレザーシートやDYNAUDIO製スピーカー付きのプレミアムサウンドシステム、斜め後方の死角をカバーするBLIS、18インチアルミホイールなどが手に入る。今回の試乗車は、このぜいたくな仕様だった。
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角が取れてさらに快適に
いよいよという段になって雨に見舞われた試乗タイム、“カカオ”色のレザーシートを濡らしては申し訳ないのでルーフは終始閉じたままだった。手触りまで上質なシートは、まだ新しいせいかシートバックの張りが少し強く感じるものの、座り心地は上々。シートヒーターも強力で、これなら寒い時期でも安心だ。
C70に積まれる最高出力230psの直5ターボユニットと5段オートマチックは、マイナーチェンジの前後で基本的には変わらない。あらためて観察すると、余裕ある発進加速や走り出してからの力強さ、そしてトルコンATの滑らかさなど、挙動のひとつひとつに、上質さが宿っている。
一方、足まわりは以前のターボモデルに比べるとだいぶ角が取れた印象で、前にも増して快適なクルマに仕上がっていた。明るいルーフライニングのおかげで、ルーフを閉じた状態でも息苦しくなく、メタルトップがギシギシと音を立てることもほとんどない。快適なクーペとしては十分合格点がつけられる。
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後席に大人が無理なく乗れるのもC70の美点だ。もちろん、天候さえ許せば、風と青空が優雅に楽しめる……そんな記憶もよみがえってきた。
これだけの才能の持ち主は、日本車、輸入車を見渡してもなかなか見つからない。どんなときでも、乗り手に優しいC70。このクルマに身を委ねれば、心のカドも丸くしてくれそうな気がした。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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