ランドローバー・レンジローバースポーツ 5.0 V8(4WD/6AT)/5.0 V8スーパーチャージド(4WD/6AT)【海外試乗記】
磨かれた実力と魅力 2009.10.13 試乗記 ランドローバー・レンジローバースポーツ 5.0 V8(4WD/6AT)/5.0 V8スーパーチャージド(4WD/6AT)……754.0万円/1104.0万円
エンジンを一新するなどのビッグチェンジを受け、よりスポーティに味付けされた「レンジローバースポーツ」。2009年12月の日本正式発売を前に、本国イギリスで先行試乗した。
ニュルブルクリンク、8分49秒
アクセルペダルを踏む右足に力を込めると、最高出力510ps、最大トルク63.7kgmという圧倒的なスペックを誇るV型8気筒5リッター直噴スーパーチャージドユニットは、間髪入れずに図太いトルクを生み出し、軽くはないボディを猛然と加速させる。トルクのツキが良いだけじゃない。このエンジンはその後の伸びも素晴らしく、従来のスーパーチャージャー特有のミーッという音ではない、耳に心地良いサウンドを響かせながら、トップエンドに向かって嬉々として昇りつめる。
コーナーが近づいてきたらブレーキング。慣性のついた重い車体を後ろから鷲掴みするかのように、一気に速度が削られていく。フロントに6ポッドモノブロック対向キャリパーを使ったブレーキシステムは、ブレンボ製である。
ターンインの際のノーズの入りは、まさに思いのまま。ステアリングの切り込みにリニアに向きが変わっていく。過大なロールとは無縁だし、奥が深く曲がり込んでいたとしても更に切り込むだけでクルマがしっかり反応してくれる。挙動のすべてがソリッドだから、その気になれば振り回すような走りだって可能なのだ。
ハイパフォーマーの性能指標であるニュルブルクリンク旧コースでのラップタイムは、8分49秒を記録しているという。このクルマは一体何かと言えば、2010年モデルとしてフェイスリフトを受けた「レンジローバースポーツ 5.0 V8スーパーチャージド」である。
“レンジローバー”の名のもとに
なにしろその走りっぷりときたら、凄まじく速い。しかし感心させられてしまうのは、それでも決して粗野になってしまったりはしてないということ。レンジローバーの名を冠するモデルらしい、どこか穏やかな、あるいは背筋がピンとするような味わいは変わることなく、動力性能、運動性能のすべてが底上げされているのだ。これはそう簡単に出来ることではない。なにしろ現行モデルのスーパーチャージドは最高出力390ps、最大トルク56.1kgmであり、特に最高出力は3割もアップしているのだから。
そのためシャシーには、とりわけ大きく手が入れられている。従来から備わるアクティブライドコントロールと呼ばれる電子制御式可変アンチロールバーに加えて、新たに可変式ダンパーのアダプティブダイナミクスシステムを採用。電子制御だけでなく、ステアリング系、ブッシュ類の見直し、リア側アンチロールバーの強化などベースの部分も強化され、さらにその仕上げとしてテレインレスポンスには、これらとスロットルやギアシフト、DSC等々をオンロードに特化した設定とする、ダイナミックモードまで備わっている。前述の走りっぷりは、まさにこのモードでのもの。車重2.5トンもある、この背の高いSUVを、そんなふうに走らせることを可能にしているのだ。
しかもそれは、オフロード性能を犠牲にして得たものではない。“レンジローバー”の名を冠する以上、そこに妥協という選択肢は無いのである。
インテリアもクオリティアップ
ちなみに5リッター直噴NAエンジンを搭載する普及モデルも、最高出力は375psと現行スーパーチャージドに匹敵する動力性能を得ているだけに、サスペンションは設定が見直され、ブレーキも現行スーパーチャージド相当にグレードアップされている。元々、車高が低くシャシーも味付けもスポーティで、走りは爽快。NAエンジンのナチュラルなレスポンスも心地良く、こちらも魅力は甲乙つけがたい。
注力されたのは走りっぷりだけではない。外装デザインはこれまでに無いほど水平基調が強調されて、よりロー&ワイドなスタンスに見せている。LEDを効果的に使った前後のライトも含めて、より都会的でクールな印象を強めたと言えるだろう。それは「レンジローバーヴォーグ」との性格分けが一層進んだということでもある。
インテリアのクオリティもグッと高まっている。元々レンジローバースポーツの室内は、手前に向かって傾斜したセンターコンソールなどパーソナル感を強調する空間設計がなされているが、マテリアル、ディテールの両面でのクオリティアップによって、ようやくそのデザインが本格的に生かされたという印象だ。
レンジローバーの名を冠するモデルらしい独自の味わいを失うことなく、個性、位置づけがより明確になった新しいレンジローバースポーツは、間違いなくその実力と魅力に磨きをかけている。スーパーチャージドはオンロードのスポーツ性をアピールするライバル達と伍して戦えるモデルに仕上がっているし、自然吸気モデルは、ヴォーグが高級・高価格化を進めたことで空いた穴を埋める存在ともなり得るかもしれない。いずれにせよ、その存在感が俄然、輪郭を増したことは間違いない。
(文=島下泰久/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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