第103回:【Movie】思わず「チロ〜リア〜ン!」 サービスエリア界のネバーランド発見
2009.08.08 マッキナ あらモーダ!第103回:【Movie】思わず「チロ〜リア〜ン!」 サービスエリア界のネバーランド発見
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イタリアのサービスエリアはチョットヤバイ
イタリアの著名自動車誌『クアトロルオーテ』は、2009年8月号で、国内サービスエリア(SA)の番付を発表している。食堂の充実度やトイレの清潔さで、トップ10とワースト10を決めたものだ。
イタリアのSAはボクから見ても、食べ物の味の割に値段が高い、トイレの清潔度が低い等、及第点をあげられるところは少ない。にもかかわらず、トイレの外にはいまなおチップの置き場があったりする。
食堂の店員も無愛想であることが多い。そうかと思うと、日本のハンバーガーショップ同様、年配のおばさんが若者と同じユニフォームを着せられて働いていたりする。「やはり住宅ローンとか、きついっすか?」と涙が出てくる。
ワンランク下(?)のパーキングエリアにいたっては、トイレ設備さえないところが大半である。
屋外は屋内以上に困った状態だ。全部というわけではないが、いかさまトランプゲーム師が屋台を広げていることもある。あるエリアでは、勝手に交通整理員をやって、チップを稼いでいる親父がいた。そうかと思うと、先日は「ミラノまで行く金がなくなったので、貸してほしい」と、怪しい男がボクのもとに寄ってきた。とほほ、である。
チロルはいいぞ
ところが、国境をひとつ越えた国々のSAでは、こうした怪しいムードは一気になくなる。なかでもオーストリアにおけるアウトバーンのエリアは秀逸で、イタリアに住む身としては羨ましいかぎりである。
とくに筆者のお気に入りは、チロル地方A12号線沿いのイムスト周辺に作られた「トロファーナ・チロル」というSAである。
2002年の建設で、上下線どちらからでも進入できる。通行券の不正などないのか? とご心配の向きもあるかもしれないが、オーストリアは、ガソリンスタンドや国境で売っている“ヴィニェット”という通行証ステッカーを貼るだけ。アウトバーンには、特定の橋やトンネルを除き、料金所も通行券もない。
ご覧のとおり、思わずレジャーランドを通り越して、「ここはネバーランドか!?」と声をあげてしまうような演出が施されている。
いや、正しくは、チロル地方の歴史建築物のムードに限りなく近づけている本物志向だ。宿泊施設も併設されている。
建物各階と屋外部分を合わせた総面積は4万平方メートル。阪神甲子園球場(総面積約3万8500平方メートル)より大きいことになる。
ついでにいうと、サイクリングロードとも繋がっている。だから駐車場にクルマを停め、テールゲートから自転車やスケートを降ろして、楽しんでいるドライバーも数多く見かける。
なお、このSAのある村は人口580人だから、村にとっては画期的な新産業である。お客さんは思わず滞在時間が長くなる→おカネを落とす、という、うまい仕組みができている。ボクもついつい長居をして、出発時間が遅くなってしまうことがある。
オーストリアは、スイスやドイツの帰りに通過することが多い。そのため気がつけば、ボクにとってオーストリアで一番訪問回数が多い場所はというと、ウィーンよりもザルツブルクよりも、このレジャーランド風SAになっていたのであった。
今回は、そのレジャーランド風サービスエリアの様子を動画でお届けする。(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
【Movie(その2)】サービスエリアとは思えない建物の中に入ってみると
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【Movie(その2)】サービスエリアの中には、公園や池もある

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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