マツダ・ロードスター RS(FR/6MT)【試乗記】
今のままでいてほしい 2009.03.02 試乗記 マツダ・ロードスター RS(FR/6MT)……303万500円
「もうこれ以上立派にならないで! 」。これが、マイナーチェンジを受けた3代目「マツダ・ロードスター」に試乗しての率直な感想だった。
ライトウェイト・スポーツカーには愛嬌が必要
「スポーツカーとライトウェイト・スポーツカーは、ちょっと違う」。マイナーチェンジを受けた「マツダ・ロードスター RS」に試乗しながら、そんなあたりまえのことを考えた。
まず、スポーツカーとライトウェイト・スポーツカーでは、外観デザインに求めるものが違う。スポーツカーは、カッコいいことが大事だ。華やかな美女であったり、うっとりするようなハンサムであったり。
いっぽうライトウェイト・スポーツカーで大事なのは、カッコよさより愛嬌ではないか。「カニ目」(オースチン・ヒーリー スプライト)しかり、「ロータス・エラン」しかり、初代「ユーノス・ロードスター」しかり、ライトウェイト・スポーツカーはちょっとマヌケなぐらいのほうが可愛い。
そんな目で見ると、フロントマスクに変更を受けた「マツダ・ロードスター」は、ライトウェイト・スポーツカーの愛嬌という点ではギリギリのセンかと思う。まず、ラジエターグリルがガバッと口を開けることで、やや下品な“大笑い顔”になった。ほかにもヘッドランプの形状変更で目付きが悪くなったり、あるいはフロントフェンダーのフォグランプ周辺の“エラ”が張るなど、わかりやすくゴージャス&派手になった。ちなみに空調ダイヤルに銀色に輝くリングが追加されるなど、インテリアもゴージャス&派手な路線を歩んでいる。
サイズが小さいことや全体のフォルムが変わっていないこともあって、かろうじてライトウェイト・スポーツカーらしい愛嬌は残されている。けれど、このままゴージャス&派手な路線を突き進むと、ライトウェイト・スポーツカーに不可欠の愛嬌や親しみやすさを失うのではないかと、外野は勝手な心配をするわけです。
音と加速が「突き抜けた」理由
「マツダ・ロードスター RS」の6段MTは、トランスミッションが冷えた状態だとゴリゴリとした感触を伝える。だから最初はゆっくり丁寧にシフト操作を行って、じわじわとトランスミッションを暖める。そして暖機が完了すると、カキンコキンとキモチよくシフトが決まるようになる。オールドファッションかもしれないけれど、手間暇のかかる儀式めいた作業は楽しい。
マイナーチェンジによって、6MTのギアボックスにはマニュアルシフトをより滑らかに行うための改良が施された。高回転まで回してシフトアップするときや、素早くシフトダウンする際にシフトレバーがスパッと吸い込まれる感覚に、その効果は確かに感じられる。具体的には1速〜4速のトリプルコーンシンクロの部品にコーティングが施され、3〜4速のシンクロサイズがアップしている。
マイナーチェンジで改良が施された2リッターの直列4気筒エンジンは、素直な反応を見せる。発進直後のエンジン回転が低い領域でも力は充分。たとえば渋滞に巻き込まれても、アクセルペダルには触らずにクラッチペダルの操作だけでだらだら発進と停止を繰り返すことができる。ひとたび走り始めれば、2000rpmも回せば有効なトルクを発生。その程度の回転域でもアクセル操作への反応は敏感だ。だから市街地を普通に流すような使い方でも、「スポーツカーっていいな」と思える。V6やV8にはない、直4ならではのキレ味を味わうことができる好エンジンだ。
エンジンに施された改良は、主に高回転域でのパフォーマンス向上を図ったもの。鍛造クランクシャフトの採用(6MTのみ)などパーツの見直しや各部の精度アップにより、最高出力を発生するのが改良前の6700rpmから7000rpmに上がり、レブリミットも7000rpmから7500rpmになっている。高速道路の料金所からの加速などで試すと、「フォーン!」という乾いた快音とともにヌケの良い加速感を味わうことができる。音の良さにも理由があって、空気がエンジンに流入する際の吸気鼓動を増幅して車内に響かせる「インダクションサウンドエンハンサー」という装置が、新たに搭載されているのだ。
足まわりはちょっとやり過ぎ
で、音も加速もかなり立派な方向を向いているけれど、もうこれで充分だとも思った。これより上を狙うと、もっとボディは大きく立派にガッチリして、結果として「ポルシェ・ボクスター」や「アウディTTロードスター」「BMW Z4」などに接近することになってしまう。もうちょっとパワーがあってもいいかも、という“寸止め”の美学や、「パワーが足りないぶんは俺が何とかしてやる」とドライバーが意気に感じるあたりがライトウェイト・スポーツカーの魅力だと思うので、これ以上速くならないでいただきたいと切に願う次第です。
スタイリングや動力性能については「これぐらいがギリのセン」と思ったわけですが、足まわりは少し“やり過ぎ”だと思った。試乗したRSグレードには、17インチの45扁平タイヤ(ベーシックグレードでは16インチの50扁平)やビルシュタインのショックアブソーバーが標準装備されている。この足まわりは高速道路やワインディングロードではガッチリした剛性感があって安心だけど、街なかではちょっとゴツゴツする。もうちょい、しなやかでヒラヒラしているほうがライトウェイト・スポーツカーっぽさは感じられると思う。試乗車が新車に近い状態だったのでもう少し足まわりが馴染めばしなやかになるのかもしれないし、あるいはベーシックグレードの「S」を選べば解決することなのかもしれない。
足まわりさえ好みの仕様を選ぶことができれば、「マツダ・ロードスター RS」は、爽やかで素直、今なお魅力的なライトウェイト・スポーツカーだ。ただし、そろそろ減量がきつくなったから上の階級に移行しようかと考えるライト級ボクサーの心境も垣間見える。「RX-7」選手が引退してからの“マツダ・ジム”にはミドル級のスポーツカーがなくなったので、ロードスター選手がミドル級もカバーしなければいけないという理由があるのかもしれない。でも、ロードスター選手がいなくなると、ライト級の選手層は世界的にグッと薄くなる。だからなんとかライト級にとどまって、キレ味や俊敏さ、爽快さなど、ミドル級やヘビー級のスポーツカーにはない魅力を保ってほしいと思うのです。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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