スズキ・パレットX(FF/4AT)/TS(FF/4AT)【試乗速報】
両側スライドドアかセンターピラーなしか 2008.02.14 試乗記 スズキ・パレットX(FF/4AT)/TS(FF/4AT)……123万9000円/157万5000円
激しい軽ナンバーワンの争いを続けるスズキから、新しいハイトワゴン「パレット」が登場した。「ダイハツ・タント」から二歩遅れての登場となった新型の魅力を探る。
宣戦布告!?
軽自動車ナンバーワンのタイトルを賭けて、熾烈な戦いを繰り広げる「スズキ・ワゴンR」と「ダイハツ・ムーヴ」。2007年は1万6000台の差でワゴンRが王座を守り抜いたが、その一方、“メイクスタイトル”争いではダイハツが2万台差でスズキからトップを奪う格好になった。これに大きく貢献したのが「ダイハツ・タント」で、スズキとしてはこの新しいナンバー2と互角にわたりあえるニューモデルの開発が急務であった。そして、構想からわずか2年、ライバルに真っ向勝負を挑むべく登場したのが「パレット」である。
1700mm台半ばの長身に、長いルーフと短いボンネット。パレットのプロポーションはまさにタント流。試行錯誤の末、四角になったフロントクォーターウインドーが、その印象をさらに強くしている。落ち着いたフロントマスクのおかげで、タントより少し大人っぽい雰囲気に仕上がっているが、ライバル意識むき出しなのは誰の目にも明らかだろう。
ライバルはかなり手強い
同じ土俵で戦うにあたり、パレットに与えられた切り札は、“ボンネット型軽乗用車初”の後席両側スライドドア。かつてスズキがキャブオーバー型軽バンに真っ先に投入した装備である。スライドドアの開口幅は580mmで、実はこの数字、奇しくも1ヶ月前に出た新型タントの(助手席側)スライドドアの開口幅と同一。そうなると、片側スライドのタントに対して、両側スライドのパレットのほうが使い勝手は上に思える。苦労を重ね、そのためにフロアやリアサスペンションを新設計して実現した低いリアステップも、アドバンテージになるはず。
しかし敵もさる者。助手席とスライドドアを開け放ち、新型タントご自慢のセンターピラーのない広い間口を見せつけられたら心も揺らぐ。演出の巧さではタントのほうが一枚上だった。
運転席に着いても、同じ印象を持った。天井が高く、フロントガラスも遠くにあって、正直、「ここまで広くなくても……」と思えるほど開放的なキャビンに目を見張るが、タントで「これでも軽?」というくらい広い眺めを体験したあとでは、感動は半減してしまいそうだ。
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居心地の良いキャビン
第一印象ではどうも分が悪いパレットだが、冷静に眺めると、これがなかなかのできなのだ。最近のスズキらしく、センタークラスターまわりのデザインはシックで上質。シートと同じ手触りのいいファブリックをドアトリムに配することで、見た目にも心地のいい空間をつくりあげているのにも好感が持てる。
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後席のスペースは驚くほど広い! 天井が高いのはいうまでもないが、前後に165mmスライド可能なシートは一番前の位置でも足が組めるほど余裕があり、荷室を広げて使いたいときでも、後席の乗員はガマンを強いられずにすみそうだ。
リクライニング可能なシートは座り心地もまずまず。もちろん、シートバックを倒したり、フロアに収納するなど、豊富なアレンジも自慢である。フロアに収納する際、たとえばワゴンRのように荷室から簡単に操作するわけにはいかないのが玉にキズだが、フラットなフロアは地上高が低いこともあって、重いものや大きなものの出し入れには重宝しそうだ。
安定感ある走り
走らせてみても、パレットはほぼ不満のない仕上がりを見せる。試乗会では54psNAエンジンを積む「パレットX」と60psターボの「パレットTS」を試した。ちなみに、どちらのエンジンにも4段ATが組み合わされる。
まずはパレットX。910kgの車両重量に大人3人が乗り込むと、さすがに出足は穏やかで、アクセルの踏み込みにあわせて高まるエンジン音が耳に付くものの、街なかではクルマの流れに遅れを取ることはない。背が高いのでサスペンションは硬めかと思っていたら、意外にマイルドで快適。それでいてロールは不安のないレベルに抑えられているので、ステアリングを握るかぎりは1735mmの長身を意識しないですむ。
一方、パレットTSは、低回転からトルクの厚みがあることに加えて、NAよりもノイズが抑えられるから、ストレスは格段に減るはずだ。乗り心地はNAモデルより多少硬めとなるが、不快に思えるほどでないのも印象を良くしている。
というわけで、演出力不足を除けば、これといってタントに引けを取る部分が見あたらないパレット。そうなると、どちらにするかは買い手の好み次第ということになりそうだが、私なら落ち着いたデザインのパレットを選んでしまいそうだ。それはともかく、ライバルの出現で勢いづくオーバー1700mm軽ワゴン市場。メイクスタイトルに大きく貢献するナンバー2同士の戦いが面白くなりそうだ。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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