BMW Z4 sDrive20i Cruising Edition(FR/8AT)【試乗記】
自分のペースで走れる人へ 2012.02.20 試乗記 BMW Z4 sDrive20i Cruising Edition(FR/8AT)……647万8000円
2.5リッター直6搭載の「sDrive23i」に置き換わる形で登場した「sDrive20i」。新しい2リッター直4ターボは、「Z4」にどんな個性を与えたのか。
静かでスムーズな新4気筒
これまで「Z4」には2.5リッター6気筒 204psの「sDrive23i」というモデルと、3リッター6気筒 306psの「sDrive35i」、そして同じく3リッター340psの「35is」が存在した。ここに「sDrive20i」という新エンジン搭載車が加わった。
このエンジンは4気筒2リッターで、ツインパワーターボとダイレクトインジェクションなどを採用し、184ps/5000rpmと27.5kgm/1250-4500rpmを発生する。組み合わされるギアボックスは8段スポーツATで、右ハンドル仕様となる。この新しい4気筒はこれまでの6気筒に代わって、今後BMW2リッター級エンジンの主軸ともなるべき役目を担う。今回借用したのは「Cruising Edition(クルージング・エディション)」というオプション装着車で、車両重量は1520kg。カタログ上は23iが1500kg、35iが1600kgだから、6気筒から4気筒への換装による重量軽減はさほど期待できない。
走りだした最初の印象もスペック通りで、回り方は静粛にしてスムーズ、上まできれいに吹けあがり、一切のストレスを感じさせない。そして同時に、蹴飛ばされるような猛ダッシュも期待できない。8段ある変速機は終始律義に作動し、通常の交通における緩急の加減速には遅滞なく反応する。
8段階のギアレシオは、アメリカ的というよりドイツ的で、下はフツウのまま、上でクロスさせている。アウトバーンにおける200km/h前後のバトルでなら、追い越しなど、1台前に滑り込む時に効果を発揮するだろう。しかし日本の路上では、早期に上位のギアに送り込めるおかげで好燃費は期待できても、パンチある加速は望めない。このギア比はドイツ車全般に言える傾向でもある。日本ではイタリア的に下3段をクロスさせた方が面白いことは言うまでもない。エンジンパワーを補うことにもなるし、峠道ではエンジンをもっと回して楽しめる。
でもそれは、この車の趣旨ではないのだろう。他社のレベルも上がってきているので、エンジンなど動力性能を売りにするBMWにとっては、住みにくい世の中になってきたのも事実だ。
空や風を楽しもう
それでもこのエンジンにBMWらしさを探っていくなら、やはり精度にかかわるスムーズさは相変わらずで、7000rpmに至っても頭打ちする気配もない。4気筒特有のアイドル振動なども巧妙に打ち消されている。
シフトスイッチ横のダイナミック・ドライビング・コントロールにはDSCのオン/オフも一応備わるものの、ノーマルからスポーツに変えても劇的な変化があるわけではない。また足元を見れば、フロントには8J×17のホイールに225/45サイズのタイヤ、リアはもっと太い8.5J×17に255/40を組み合わせて装着している。横Gへの貢献はともかく、これも加速に味方するわけではない。
つまりこのモデルは動力性能はそこそこに、電動開閉式のハードトップを持つロードスター&クーペという、1台で2種のボディーを使い分けて快適なオープンエアの走行感覚を楽しむためのクルマである。
もともとこのZ4というモデルはアメリカ市場をターゲットにしており、スポーツカーの極限を追求した車種ではない。その証拠にエンジンはフロントアクスル上に位置しており、6気筒搭載車にしてもエンジンとスカットル壁の間にそれなりの隙間が見られる。居住空間を大きく採ったロングホイールベースといい、敏捷(びんしょう)に動き回るための方策を重視してはいない。だから室内足元の空間も大きく余裕があり、エンジンやトランスミッションの室内への張り出しも少なく、普通の乗用車感覚で乗れる、2ドアのスタイリッシュなクルマとして企画されている。
そうした根幹にさかのぼれば、動力性能などはさほど気にする部分ではなく、むしろこの「20iクルージング・エディション」のようにエコカー減税対象車に選ばれるという、省燃費性こそ褒められるべきものだろう。JC08モードで13.4km/リッターを誇る。ちなみに519万円の価格に対して、減税の対象である取得税と重量税の減税は、合計で14万1200円にもなる。
長く付き合えそうなBMW
2シーターロードスターというスポーツカー風の雄姿ゆえ、いろいろ期待してしまうところは大きいが、北米市場向けのスペシャルティーといったん納得してしまえば、クルマ自体の出来はなかなか上級。「操縦」することより「操作」することに楽しみを見いだす現代の若者を飽きさせることはない。
サーボトロニックのパワーステアリングは、車速感応型で操舵(そうだ)力のアシストを連続可変制御する。街中のパーキングスピードでは軽く、高速道路では重さが安定性を実感させるし、切ってもビックリするような過敏さはない。また前述の基本レイアウトによるヨー慣性の大きさは、どっしりとした直進安定性を約束し、多少の微舵(びだ)を与えても微動だにしない。
8ATはステアリングホイールに流行のシフトパドルも備え、プリセレクトも利くのでついでに2段階落としておけば、ブレーキングなどの速度低下と共にもう一段下までのエンジンブレーキが使える。急がなければ、8速のトップギアでもたった1500rpmで走ってしまう柔軟性というか、エンジンの低速トルクにも感心する。そのまま踏み込めば、Dのままでも自動でキックダウンが働いて有効な加速を得られるし、もとよりマニュアルシフトすれば自在に操作を楽しめる。絶対的なものよりも、そうした操作すること自体に価値を見いだす現代の風潮に合って、なかなか操作感の優れた機械と言えよう。
このZ4 sDrive20iは、BMWの中でもエントリーモデルに相当し、絶対的なパフォーマンスうんぬんよりも、上質で温厚な走行フィールを味わえる車だ。ばか力による直線加速の刹那的快楽もそれはそれで面白いが、落ちついて長期間BMWを楽しみたければ、むしろこの20iこそふさわしいと言える。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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