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BMW Z4 M40i(FR/8AT)

6気筒推し! 2019.05.22 試乗記 高平 高輝 BMWのオープントップモデル「Z4」の新型がいよいよ日本に上陸した。今回テストに連れ出したのは、3リッター直6ターボエンジンを搭載したトップグレード「M40i」。箱根のワインディングロードで、その出来栄えをチェックした。

まず6気筒モデルを投入

うわさの新型「トヨタ・スープラ」と兄弟車(というか従妹車ぐらいか)であることに注目が集まる新型Z4だが、BMWが見据える競争相手はもちろん他にある。ライバルは「ポルシェ718ボクスター」、中でもトップモデルのM40iの相手としてふさわしいのは最高出力350psの2.5リッター4気筒ターボを積んだ「718ボクスターS」ということになるだろう。パワフルで猛々(たけだけ)しく、シャープで俊敏なハンドリングを持つボクスターSのスポーツカーらしい魅力は承知だが、それでもやはり、どうしても4気筒ターボのいささかガサツなフィーリングは否定しようがない。それと対比させるために、最初に直列6気筒ターボエンジンを積む最上級グレードのM40iのデリバリーを始めたのではないか、と詮索をしたくなるほどだ。Z4にはまったくスパルタンな雰囲気はなく、6気筒の滑らかなフィーリングがとにかく印象的だ。

新型Z4には出力の異なる2リッター直4ターボを積む「sDrive20i」と「30i」、さらに3リッター6気筒直噴ターボエンジン搭載のM40iがラインナップされているが、日本仕様は当面20i(197ps)とM40iのみ、そのうち最初に市場投入されたのがトップモデルたるM40iである。N58型3リッター直6直噴ターボは、基本的に従来型を踏襲したものだが、新型燃料ポンプを採用して燃料の噴射圧力を従来型の倍以上の350barに高めたほか、ヘッド一体型水冷エキゾーストマニフォールドの採用やフリクションの低減など細部にわたって改良が加えられ、340ps/5000-6000rpmと500Nm/1600-4500rpmを発生する。トランスミッションは低速側ギアをクロスレシオ化したスポーツ8段ATで、ローンチコントロール機能も備わり、0-100km/h加速は4.5秒という。ちなみにボクスターS(PDK)は同じく4.4秒である。

「Z4 M40i」の車両本体価格は835万円。同じ直6ターボエンジンを搭載した新型「トヨタ・スープラ」のトップグレード「RZ」の車両本体価格は690万円。
「Z4 M40i」の車両本体価格は835万円。同じ直6ターボエンジンを搭載した新型「トヨタ・スープラ」のトップグレード「RZ」の車両本体価格は690万円。拡大
ボディーサイズは全長×全幅=4335×1865mm。「M40i」の車高は他グレードよりも10mm低い1305mmとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅=4335×1865mm。「M40i」の車高は他グレードよりも10mm低い1305mmとなっている。拡大
メッシュパターンのキドニーグリルは「Z4」で初めて採用されたデザイン要素。「M40i」ではセリウムグレーのカラーリングで仕立てられている。
メッシュパターンのキドニーグリルは「Z4」で初めて採用されたデザイン要素。「M40i」ではセリウムグレーのカラーリングで仕立てられている。拡大
N58型3リッター直6ターボエンジンには、新型の燃料ポンプやヘッド一体型水冷エキゾーストマニフォールドなどの新規技術を採用。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生する。
N58型3リッター直6ターボエンジンには、新型の燃料ポンプやヘッド一体型水冷エキゾーストマニフォールドなどの新規技術を採用。最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生する。拡大
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重厚かつ頑健な足まわり

当然ながらパワーはどんな場面でも十分以上だが、それよりも低速からジュワーと滑らかに、ふんだんにあふれ出すトルクが頼もしく、洗練された8段ATのマナーも上質だ。ドライビングパフォーマンスコントロールのモード切り替えスイッチにもシフトパドルにも手を触れることなく、右足のわずかな動きで自由自在にスピードをコントロールできるのがうれしい。

「Mパフォーマンスモデル」たるM40iには、「アダプティブMスポーツサスペンション」と「Mスポーツディファレンシャル」が装備され、車高はスタンダードよりも10mm低い。それゆえ足まわりは明確に引き締められており、たとえコンフォートモードでもストロークは短く上下動は強力に抑えられているが、もちろん、ビシッバシッというハーシュネスとは無縁だ。ソリッドだがそれほどダイレクトな感じは受けず、鋭い切れ味というよりは重厚かつ頑健な足まわりが特徴である。それでも接地感は十分で、道幅ギリギリまで自信を持って使える正確なステアリングインフォメーションもBMWの名に恥じない。うねりのあるコーナーを突破した時も、余分な動きを見せない強靱(きょうじん)な足まわりとボディーはどんな風に扱ってもへこたれないたくましさにあふれている。スポーツディファレンシャルによる執拗(しつよう)なトラクション性能にも驚くばかりである。

サスペンション形式はフロントがストラットで、リアがマルチリンク。「M40i」には電子制御式ダンパーを備えた「アダプティブMスポーツサスペンション」が標準装備となる。
サスペンション形式はフロントがストラットで、リアがマルチリンク。「M40i」には電子制御式ダンパーを備えた「アダプティブMスポーツサスペンション」が標準装備となる。拡大
「Z4」には可変ステアリングギアレシオ機構の「バリアブルスポーツステアリング」が全車に標準装備されている。
「Z4」には可変ステアリングギアレシオ機構の「バリアブルスポーツステアリング」が全車に標準装備されている。拡大
タイヤサイズはフロントが255/35ZR19で、リアが275/35ZR19。「M40i」ではブルーキャリパーの「Mスポーツブレーキ」が標準装備となる。
タイヤサイズはフロントが255/35ZR19で、リアが275/35ZR19。「M40i」ではブルーキャリパーの「Mスポーツブレーキ」が標準装備となる。拡大

ソフトトップの復活で得たもの

新型Z4はディメンションが大きく変わったことが特徴だ。全長は従来型に比べて85mmも長くなった4335mmだが、ホイールベースは同じく26mm短い2470mmに短縮された。いっぽうで前後トレッドはそれぞれ+98mm/+57mm拡大され、全幅も75mm広がって1865mmとなり、よりスクエアでハンドリング重視のプロポーションを得たことが分かる。さらに従来型のリトラクタブルハードトップからソフトトップに戻され、それだけでおよそ40kgの重量を削り取ることができたというが、その分を他のメカニズムに注ぎ込んだせいで、車重は従来型とほぼ変わらない。試乗車のM40iの車重は車検証値で1570kg、前後重量配分は51:49だった。

シンプルな電動ソフトトップシステムは軽量以外にも利点がある。トップを格納するスペースが小さくなったおかげで、ラゲッジスペースは従来型比5割増しの281リッターの容量を確保、普通のスーツケースなら十分に収まるはずだ。オープンカーは手荷物の置き所に苦労するのが普通だが、新型Z4はその辺りへの配慮も抜かりない。ラゲッジスペースにはセンタースルートンネルも備わり、Z4専用だというヘッドレスト一体型のハイバックシートの背後にはブリーフケース程度なら問題なく収まるぐらいのネット付きトレイも設けられ、さらにアームレスト部分には大きなカップホルダーも備わっている。トランクがあれば十分じゃないかという人もいるだろうが、小さな手荷物を置くこのようなスペースがあるかないかで日常的な使い勝手は大きく左右されるのだ。

スイッチひとつで10秒ほどで開閉できる電動ソフトトップは、50km/h以下なら走行中でも開閉できる。実際にまったく危なげなく、素早くかっちりと作動した。その高い精度とタフな造りには感心するばかり、これならいつでもどこでもためらいなく屋根を開けることができる。あっちを押したり引っ張ったり、うまくかみこむように四苦八苦したかつてのオープンカーはまさに遠い昔の話である。

センターの10.25インチタッチスクリーンが目を引くインテリア。センターコンソールやステアリングホイールなどにはマットシルバーのトリムが配されている。
センターの10.25インチタッチスクリーンが目を引くインテリア。センターコンソールやステアリングホイールなどにはマットシルバーのトリムが配されている。拡大
ヘッドレスト一体型の「Mスポーツシート」は「Z4」専用設計。テスト車には「コニャック」カラーの表皮が採用されていた。
ヘッドレスト一体型の「Mスポーツシート」は「Z4」専用設計。テスト車には「コニャック」カラーの表皮が採用されていた。拡大
トランスミッションは全車で8段のスポーツATを採用。ローンチコントロール機能も備わる。
トランスミッションは全車で8段のスポーツATを採用。ローンチコントロール機能も備わる。拡大
メーターパネルはフル液晶タイプで、サイズはセンタースクリーンと同じ10.25インチ。左側のフレームが速度計、右側のフレームがエンジン回転計となっている。
メーターパネルはフル液晶タイプで、サイズはセンタースクリーンと同じ10.25インチ。左側のフレームが速度計、右側のフレームがエンジン回転計となっている。拡大

装備を考えればリーズナブル

インストゥルメントは最新の「8シリーズ」や「3シリーズ」と同様の最新型に改められた。計器類はフルデジタルスクリーン(3シリーズよりは小さい10.25インチ)にアナログメーターを映し出すタイプとなり、しかも表示スタイルはBMWが長年こだわってきた円形ではなく、六角形(新しいキドニーグリルの輪郭を模したものか)を割ったような左右のフレームが速度計とエンジン回転計(回転計はプジョーのように反時計回り表示に変更されている)に当てられ、真ん中のスペースはナビゲーションなどを表示するウィンドウになっている。レブリミット付近(フルスケールは7500rpm、レブリミットは7000rpm)が中央上部に位置するため、トップエンドを使う場合には見やすいかもしれないが、常用域はステアリングホイールに隠れてしまう。他の操作法、例えば以前はウインカーレバー先端のボタンで呼び出し、メーター下部に固定表示できたオドメーターやトリップを呼び出す方法も変わったので、長年慣れ親しんだ人はちょっとまごつくかもしれない。

とはいえ、安全運転支援システムも完備、インフォテインメントも最新タイプとなり、ロングクルーズも苦労知らずである。20iのベーシックモデルは566万円というから、M40iの835万円はやはり高い、と最初は思ったが、その装備内容(オプションはボディーカラーとharman/kardonのサウンドシステムのみ)を知った後ではどうみてもリーズナブルだと考えを改めた。ボクスターSの車両価格は948万2000円で、例によってアシスタンスシステムなどはほぼすべてオプション扱いである。街中からロングツーリングまで隙のない新型Z4の長所は、あでやかで滑らかな直6ターボだけではないのである。

(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)

「M40i」のドイツ・ニュルブルクリンク北コースのアタックタイムは、「M2コンペティション」に3秒差にまで迫る7分55秒という。
「M40i」のドイツ・ニュルブルクリンク北コースのアタックタイムは、「M2コンペティション」に3秒差にまで迫る7分55秒という。拡大
センターアームレストのふたを開けると、2つのカップホルダーと小物入れが姿を現す。
センターアームレストのふたを開けると、2つのカップホルダーと小物入れが姿を現す。拡大
シートの後ろ側にはネット付きの収納スペースが備わる。写真はセンタースルートンネルを開けたところ。
シートの後ろ側にはネット付きの収納スペースが備わる。写真はセンタースルートンネルを開けたところ。拡大
トランクルームの容量は281リッター。ソフトトップがキャビンとトランクリッドの間に収納される構造のため、オープン時でも容量は変わらない。
トランクルームの容量は281リッター。ソフトトップがキャビンとトランクリッドの間に収納される構造のため、オープン時でも容量は変わらない。拡大

テスト車のデータ

BMW Z4 M40i

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4335×1865×1305mm
ホイールベース:2470mm
車重:1570kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5000rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 96Y/(後)275/35ZR19 100Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)/12.2km/リッター(WLTCモード)
価格:835万円/テスト車=849万4000円
オプション装備:ボディーカラー<サンフランシスコ・レッド>(9万円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(5万4000円)

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2476km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

BMW Z4 M40i
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