スバル・インプレッサスポーツ1.6i(4WD/CVT)【試乗記】
平凡さが非凡 2012.02.21 試乗記 スバル・インプレッサスポーツ1.6i(4WD/CVT)……183万2250円
フルモデルチェンジを受け、快適性が向上した新型「インプレッサスポーツ」。日常の足として数日試乗したスーザン史子が、その使い勝手と乗り心地をリポートする。
癒やし系の乗り心地!?
「幸せは名もない一日につまっています」という某テレビコマーシャルのフレーズに、ハッとしたんですよ。このクルマも、名もなき日常を幸せにしてくれるクルマなんじゃないか、って。
「インプレッサ」といえば水平対向エンジンを搭載し、野太いマフラーサウンドや全身を揺さぶる鼓動など、まさに“男のためのクルマ”でした。ところが、新型を運転してみると「ホントにボクサーエンジン!?」と思うほど、穏やかで、無の境地を体験しているかのような静けさに包まれています。
「昔はヤンチャしてたけど、随分大人になったものねぇ〜」なんて、すっかり近所のオバチャン気分です。
試乗したのは、5ドアスポーツの「1.6i」の4WD車。ロングストローク化された新型エンジンと軽量化されたリニアトロニックCVTとを組み合わせ、低回転域でのトルク向上と低燃費を実現。10・15モード燃費は16.4km/リッター。アイドリングストップのつかない廉価モデルということで、上級グレードに比べると燃費向上の割合は低いものの、従来比で約10%アップしています。
ところが、新宿から首都高−東名高速で渋滞もなく約20km走った実燃費は、驚きの16.0km/リッターをマーク。JC08値の15.4km/リッターを超えてる〜っ、えらいこっちゃ!
その後、約10km走った一般道では、10.1km/リッター。高速道路では、多少加速の伸びが足りないと思った瞬間もあったものの、即「S」モードにすればいいので、1.6リッターでも十分使えるなという印象です。
ドライバーをせかすような、せっかちなキビキビ感とは無縁。油圧のパワーステアリングには、ドライバーの意思を尊重した十分な遊びがあり、シンメトリカルAWDならではの後輪が後押してくれるような頼もしさも感じられます。
雪の少ない地方では、4WDの必要性を感じるシーンってあまりないのですが、北海道における新型インプレッサの96%が4WD車だと聞くと、四駆って本当に生活必需品なんですね。
ホイールベースやトレッド幅が広がったことでさらに安定感が増していることも、乗り心地の良さにつながっているのでしょう。画用紙の上で、芯の柔らかい4Bの鉛筆を滑らせているような、癒やし系の乗り心地です。
ひとつだけ気になったのは、アイドリングストップ搭載車のエンジン再始動音。このクラスのクルマにしては少し音が気になったので、さらなる防音対策が施されることを期待したいです。
広くなって使いやすさバツグン!
「随分、ボディーが大きくなったなぁ〜」と思っていたら、なんと全長、全幅に変更はなく、逆に全高は10mm低くなったというから驚き。Aピラーを前に出し、ボリューム感をもたせたデザインによる、目の錯覚でした。
インテリアはインパネを前に寝かせ、ドアの内側を薄くすることなどによって室内空間を広げています。その結果、旧型「レガシィ」よりも広い室内を実現。「現行レガシィでは大きすぎる」といった先代ユーザーの受け皿としても遜色のないデキ。お見事!
幅広いユーザーをターゲットにしただけあって、荷室も広く、子育てファミリーにもちょうどいいサイズ。1歳の息子を乗せて帰省した際には、5人乗車の状態で82リッターのスーツケースが1つ、子供の着替えやベビーカーなどを、どんと荷室に置いてもまだ余裕があり、大助かり。
チャイルドシートの取り付けをする時も、後席ドアには十分な開口幅があるほか、タワー駐車場でバックドアを開けても、ドアが大きすぎてぶつかることもなく快適でした。日常生活においてストレスなく使える、幸せパッケージです。
積み重ねがものをいう
「いったいどんな人をターゲットにしているんだろう? インプレッサっていうわりには、意外とフツー。よくできているのはわかるけど、心躍るような感動はないなぁ」
それが、初めて運転したときの印象。ところが数日間乗っているうちに、“フツーに”よくできていることが、不思議とボディーブローのように効いてくるんです。
チョイ乗りでは、興奮するパンチの効いたクルマに感動してしまいがち。ところが、日常的な使い勝手に思いをはせると、とても味わい深いクルマだと思えてくる。薄味だけど、しっかりダシの効いたおでんのようなね。
そのダシは何かといえば、レガシィや「エクシーガ」にも通じる、スバル車らしい居心地の良さ。空気のようなもので気づきにくい。でも乗ってみると、よく造りこまれているなと感じるんです。
例えば、新型インプレッサはスバルの水平対向エンジン搭載車としては初めてアイドリングストップを搭載したクルマ。一般的なアイドリングストップシステムではいったんエンジンが止まってしまうと、再始動までに空白の時間ができ、もどかしい思いをすることもありました。インプレッサの場合は、エンジンが止まりきっていない状態でも、ドライバーの意思を優先してスターターがかけられるようになり、最短で0.2秒での再始動が可能に。機械先行じゃなく、人が主体の造りこみの良さって、ジワジワ効いてくるものですよね。
「このクルマでロングツーリングしたらラクだろうな」とか「家族みんなで旅行に出掛けたいな」と、いろんな人の願いをかなえる懐の深さがあるんですね。
クルマにおいては、“フツーに”操作がしやすく、乗り心地のいいことが一番大事。でも多くの人が“フツーに”いいと感じられるものを具体化するのはとても難しく、それには長年培ってきた技術の積み重ねがものをいうのでしょう。
インプレッサの良さがわかり、名もなき日常を幸せと感じられるようになったワタシ、ちょっとは大人になったってことかな?
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸)

スーザン史子
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