ホンダ・フィット(プロトタイプ)【試乗記】
クールな英断 2007.10.11 試乗記 ホンダ・フィット(プロトタイプ)ホンダの主力コンパクトカー「フィット」が間もなくフルモデルチェンジを果たす。発売前に新型のプロトタイプに試乗した。
1.3と1.5
ニューモデルが出る度に、クルマというものは必ず大きくなり、重たくなってゆく。衝突安全性を考えれば、それを避けられないことはよくわかる。しかし、最近の「より広く、より高く」一辺倒な自動車造りを見ていると、そこに一抹の不安や安直さを感じないではいられない。
そんなマンネリ?を、最初に打破したのは「マツダ・デミオ」であった。トールワゴンからシティコミューターへコンセプトを転換し、いま一度小型車に求められる“本当に必要なサイズ”を問うた。
2007年10月18日に発表される新型「ホンダ・フィット」は、キープコンセプト。デミオが捨てたジャンルを極める形で登場したともいえる。真意はどこにあるのか?
従来、フィットのラインナップは「A」や「Y」と排気量ごとに細かくグレードを分けていた。今回は、至ってシンプル。排気量は従来通り1.3と1.5リッターの2種類。前者がベーシックな「G」と豪華仕様の「L」、後者は「RS」のみとなる。
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2つのULTRA
気になるボディサイズは、全長×全幅×全高=3900(+70)×1695(+20)×1525(同寸)mm。増やされた全長のうち50mmはホイールベースにあてられ、その結果、2500mmになった。ホンダによると、リアシートのレッグスペースは、現行アコードよりも広くなった。多彩なシートアレンジが好評であった後席「ULTRAシート」も健在だ。
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トランクも従来の382リッターから427リッターへ容量アップ。フレキシブルボード(「G」ではオプション)で上下二段にスペースをしきり、さらに床下へ64リッターの隠し収納スペースを持つ「ULTRAラゲッジ」へと進化した。
ちなみにこのフレキシブルボードは中央がハンモックのようなネット状になっており、荷物の出し入れが非常にラク。その実力も大したもの。今回のテストコースである鷹栖試験場のバンクや高速周回路を全開で駆け抜けても、筆者のメモ帳とボールペンはしっかりネットに収まっていた。
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さて新型フィットの走りである。エンジンは1.3、1.5ともiーVTEC。1.3リッターは従来の86ps/12.1kgmから100ps/13.0kgmとなり、これにCVTが組み合わされる。“売れセン”は間違いなくこの1.3だろう。初期の食いつき感を高め、坂道ではクリープまで作り出したCVTの制御も秀逸。1010kgという車重に対し、100psを有効に使い切れる。しかも燃費は、24km/リッターをマークするという。
格上モデルを喰う
ただし個人的には1.5RSを強く推す。その理由は、コンパクトカーらしからぬ走りの質感にある。100ps/14.6kgmから120ps/14.8kgmとなったエンジンは、出力だけでなく、伸び感や音質の透明度でも1.3よりワンランク上。どうしても「頑張ってる感」が拭いきれない1.3に対し、こちらは「さすがはホンダのエンジン」と思える気持ちよさがある。明らかにコストを意識した1.3のタイヤと比較して、1.5はロードノイズ面でも有利。で、これなら遠出も苦にならない。
ハンドリングにおいては、旧型が持っていた「切った直後に反応する」ダイレクト感は薄れ、かなりフェミニンな味付けになった。そのぶんステアリングホイールごしに伝わる旧型のゴツゴツ感もぬぐえたわけで、このトレードオフには納得できる。ちなみに1.5RSのカタログ燃費は19.6km/リッター(10・15モード)。今回試乗したのはパドルシフト付きの7速CVTであったが、1.5RSには5MT車(16インチアルミ/4輪ディスクブレーキ)も用意されるという。
新型フィット(プロトタイプだが)の“若干の”サイズアップは、自動車社会全体へのダウンサイジングを促す……、つまりより大きなクルマからの乗り換えを促していた。
ニューフィットRSは、1.5リッター車として超オーバークオリティなでき栄えと感心した。渋滞を緩和し、資源を節約するためには、「自社の格上モデルを喰うことさえやむなし」とホンダは英断したのだろう。クールだ。
(文=山田弘樹/写真=本田技研工業)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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