モーターサイクルショー「EICMA 2023」の会場から
2023.11.24 画像・写真2023年11月9日から12日にかけて、イタリア・ミラノでモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ) 2023」が開催された。
いわゆるバイクショーとしては欧州最大の規模を誇るEICMAでは、翌年に二輪完成車メーカーおよび二輪関連メーカーの商品ラインナップに加わる新型車・新商品が数多く発表される。新型コロナ感染症のパンデミックで一時その規模は縮小したが、2023年はそれ以前の規模や来場者数を上回る、過去最高の回になったと公式からは発表された。
とはいえBMWやハーレーダビッドソン、インディアンモーターサイクルは出展せず、KTMグループやトライアンフも、本社ではなく地元イタリアのインポーターがブース運営を担当し、新しいモデルラインナップを展示。リアルなショーに対する各メーカーのアプローチの違いも見ることができた。
また前回以上に中国車が躍進。今後、各メーカーがシェア拡大を狙うインドマーケットと、インド・中国のメーカーが存在感を高めるであろう二輪市場の近未来を感じることができた。
会場で見かけたニューモデルを中心に、EICMA 2023の様子を紹介する。
(文と写真=河野正士/編集=堀田剛資)
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1/30カワサキはハイブリッドモデル「Zハイブリッド」を発表した。欧州ではすでに「ニンジャハイブリッド」の報道機関向け試乗会も行われており、ハイブリッド車(HEV)の展開が進んでいる。カワサキは2022年のEICMAでHEVのコンセプトモデルを発表しており、その段階で市場投入へのハードルはすでにクリアしていると語っていた。
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2/30「ニンジャ」シリーズに新たに加わった「ニンジャ500」。新設計の451cc水冷並列2気筒エンジンを、250ccベースの軽量スリムなフレームにセットしている。スーパーバイク世界選手権などで戦うニンジャファミリーの、新しいスタイリングも採用された。
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3/30ビモータが2022年のEICMAで発表した、センターハブステアを持つアドベンチャーモデルの新フレーム「TERA」が実車となった。これまでリンクを介していた操舵系を、ハンドルとハブステアを直接つなげることで、操舵系およびフレームまわりをシンプルなものとしている。これにより、エンジンを中心としたフレーム剛性のバランスを容易に整えることが可能だ。そのため、あらゆるエンジンタイプのモデルに、この独自のフロントサスペンションは採用できるという。
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4/30ホンダは、欧州で人気の500ccクラスに「NX500」を追加した。そもそも人気が高かったアドベンチャーモデル「CB500X」をベースとしており、2022年のEICMAで発表されたアドベンチャーモデル「トランザルプ」的な外装が与えられている。
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5/30小変更を受けた「CBR650R」や「CB650R」は、ホンダが新たに開発した「E-Clutch」を搭載。ショー会場にはE-Clutchのカットモデルも展示され、来場者が興味深くその機構を観察していた。ハーフクラッチ、燃料噴射カット、イグニッションコントロールを統合制御することで、変速時にはシフトショックのないスムーズな加減速を実現。さらに発進時や停車時にもクラッチ操作は不要となる。いっぽうで、通常どおりのクラッチ操作も可能だという。クラッチカバー上にE-Clutchのシステムが搭載されるため、その上部が多少大きくなっているが、違和感は小さい。
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6/302022年の2気筒750ccバージョンに続き、4気筒1000ccバージョンの「CB1000ホーネット」が発表された。2017年型「CBR1000RR」のエンジンを最適化し搭載したもので、フレームは新規開発のツインスパータイプとなる。このCB1000ホーネットとともに、500ccクラスの2気筒エンジンを搭載したCB500ホーネットも新たにラインナップ。スポーティーなイメージ=先進的なイメージのストリートファイターカテゴリーでホーネットシリーズを拡充することで、ホンダの先進性およびモダンなイメージを広め、シェア拡大を狙う。
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7/30スズキが発表したミドルクラスのスポーツモデルが「GSX-8R」だ。2022年のEICMAで発表した2気筒スポーツネイキッド「GSX-S8」のフルカウルスポーツ版と紹介したほうが分かりやすいだろう。GSX-8S は、「Vストローム800」と車体の基本骨格を共有したモデル。そもそも単一フォーマット・マルチアウトプットを念頭に置き基本設計がなされたのであろうが、その展開の速さにスズキの本気を感じる。
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8/30スズキのスポーツアドベンチャーモデル「GSX-S1000GX」。ネイキッドスポーツモデルの「GSX-S1000」や、スポーツツーリングモデル「GSX-S1000GT」と、フレームやエンジンといった主要コンポーネントを共有する。こちらも「GSX-8/Vストローム800」シリーズと同様、単一フォーマット・マルチアウトプットを進め、その成果が出たモデルといえるだろう。
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9/30ロイヤルエンフィールドは、自社アドベンチャーモデルである「ヒマラヤ」をフルモデルチェンジした。排気量452ccの、同社としては初の水冷DOHCエンジンを搭載。フレームも外装も一新している。前モデルは、誰もが気軽にヒマラヤ山脈を巡る旅ができるバイクをコンセプトに開発された。新型もそのコンセプトは踏襲しつつ、市場展開をより拡大するため、パフォーマンスもエルゴノミクスも環境性能も改善。前後サスペンションの性能も高め、オンロードでもオフロードでも走行性能の向上を図っている。
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10/30驚いたのは、ロイヤルエンフィールドが「ヒマラヤ」の電動版といえるコンセプトモデル「HIM-E」を発表したことだ。電動バイクの開発を公言していたロイヤルエンフィールドだが、公式にその実車をお披露目。ロイヤルエンフィールドらしいモデルで発表すると考えていたが、それがヒマラヤをイメージさせるアドベンチャーモデルであったことは意外だった。すでに各地でテストを行い、開発を進めているという。
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11/30「MVアグスタ・スーパーヴェローチェ98エディツィオーネ リミタータ」は、排気量798ccの並列3気筒エンジンを搭載した人気モデル、スーパーヴェローチェをベースとした限定モデルだ。1943年に開発された、排気量98cc単気筒エンジンの誕生80周年を記念して設定された。MVアグスタのブースでは、その歴史的なエンジンを搭載した「MV98」も展示された。スーパーヴェローチェ98エディツィオーネ リミタータのボディーカラーは、そのMV98のカラーリングがモチーフである。
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12/30MVアグスタが専用に開発した並列3気筒エンジンを搭載した「LXPオリオリ」は、1990年にカジバのファクトリーチームからパリダカールラリーに参戦し優勝を果たした、エディ・オリオリのシグネチャーモデルだ。MVアグスタと中国のQJモーターは、2021年のEICMAで「Lucky Explorer Project」と題した2台のアドベンチャーモデルのコンセプトを発表している。LXPオリオリのベースは、このコンセプトモデルの市販化された一台「LXP」がベースだ。
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13/30中国のQJモーターは、「MVアグスタF4」のプラットフォームを利用したスーパースポーツモデル「SRK1000RC」を発表した。QJモーターはベネリやキーウェイ、MBKといったブランドを展開しており、またハーレーダビッドソンの小排気量モデル「X350」や「X500」もグループで手がけている。今後、QJモーターとMVアグスタが継続的にプラットフォームの相互利用を行うかは不明だが、もしそうなれば面白い展開が期待できる。
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14/30EICMA直前に、ヤマハ発動機とパートナーシップ契約を結んだというニュースが飛び込んだ中国のCFモト。そのコンセプトモデルが「MT-X コンセプト」だ。CFモトはすでに2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデル「800MT」シリーズをラインナップしている。この車体のビジュアルを見ると、「MT-X コンセプト」はよりコンペティション指向の強い、「ヤマハ・テネレ700ワールドラリー/ワールドレイド」を意識したモデルではないかと考えられる。車体デザインはCFモトとグローバルなパートナーシップ契約を結んでいるKISKA。KTMグループのデザインまわりすべてを手がけるデザイン会社だ。
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15/30CFモトは、開発中の排気量675cc並列3気筒エンジンを発表。そのカットモデルを展示した。うわさでは、すでにラインナップされている2気筒スポーツモデルのプラットフォームに搭載するのではないか、といわれている。
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16/30中国人のジャーナリストも、その急速な開発スピードに驚いているという中国ブランド「KOVE(コヴェ)」。2023年に自社開発のマシンでダカールに初参戦し、数台が完走を果たし、大いに話題となった。またスーパーバイク世界選手権のWSSクラスに自社開発のマシンで参戦し、ときに上位を走るほど存在感を高めている。そのコヴェが発表したミドルクラスアドベンチャーが、この「800Xスーパーアドベンチャー」だ。排気量799ccの並列2気筒DOHCエンジンを、ツインスパーフレームに搭載。足の長い前後サスペンションで、オフロードでの高い走破性を追求している。
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17/30現在、中国でスクーターブランドを展開するZhongneng(ツォンネン)ビークルグループ傘下で活動するモト・モリーニ。これまでは、そのツォンネンが開発した並列2気筒エンジンをベースにしたアドベンチャーモデルおよびネイキッドモデルを展開してきた。そして今回のEICMAでは、排気量1200ccと750ccの2つの新型Vツインエンジンを発表。この車両は、その750ccエンジンを搭載したスポーツモデル「コルサロ スポルト」だ。
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18/30かつてMotoGPのMoto3クラスでオリジナルマシンを走らせていた中国のLoncin(ロンシン)。現在はプジョー・モトシクルの親会社でもある。VOGEはそのロンシンのいちバイクシリーズがブランドとして独立したもので、モダンなスクーターを開発・展開してきた。いまはより広範なバイクブランドへと変革中で、そのなかで発表されたのが、排気量895ccの2気筒エンジンを搭載したアドベンチャーモデル「DS900X」である。ロンシンは長くBMWの「F」シリーズ用2気筒エンジンの開発・生産を担当してきたメーカーであり、このアドベンチャーモデルも実力は侮れない。
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19/30台湾のGogoro(ゴゴロ)製脱着式バッテリーシステムを中国で展開する、電動スクーターブランドのYADEAが、いよいよ電動二輪車の製造・販売に着手。その最新モデルが「KEMPER(ケンパー)」だ。DCファストチャージャーを利用すれば、320V・20Ahのリチウムバッテリーを10分で80%まで充電可能。0-100km/h加速は4.9秒以下で、最高速度160km/hというパフォーマンスを発揮する。デザインを担当したのはKISKAである。
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20/30インドの二輪最大手であるHero(ヒーロー)Moto Corp。すでに電動スクーターを市場投入し、高い評価を受けている。そのヒーローは、自社電動バイクブランドのVIDA名義でコンセプトモデル「Lynx(リンクス)」を発表した。オフロードコンペティション仕様のコンセプトモデルは、容量3kWhのバッテリーと出力15kWのモーターを装備。約1時間の走行が可能だと発表されている。車重はわずか82kgだ。
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21/30ヘルメットが衝撃を受けたとき、フローティングマウントする内装が動くことで衝撃を緩和させるシステムを構築したMips。いまや多くのヘルメットブランドが、そのシステムを採用している。今回のEICMAでは、その最新プロダクトとしてヘルメットの内装にMipsテクノロジーを取り入れた「インテグラTX」を発表。これまでは衝撃吸収体と内装の間にフローティングマウントのシステムをセットしていたが、この新しいテクノロジーでは、内装だけで衝撃を吸収する。
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22/30日立アステモは、2022年に引き続きステレオカメラを使ったADASシステムの改良版を発表。前回はカメラとADAS用ECUが一体となっていたが、ECUを別体化することで、ステレオカメラの搭載自由度が高まったという。車両メーカーと共同開発すれば、このデモ車両のように車体にカメラを内蔵させることも可能だ。
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23/30日立アステモはサスペンションブランド、SHOWA(ショーワ)の電子制御サスペンションシステム「EERA」の次世代コンセプトを発表した。システムの構成や、制御するサスペンションの動きを限定することでコストを低減。車両価格が低い小排気量車への搭載を目標にしている。また電子制御用ECUを小型化し、リアサスペンション本体にセット。車体の小さなモデルへの搭載性も向上させた。この小ささで電子制御サスペンションシステムを構築できるというのは驚きだ。
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24/30スクーターブランドのランブレッタは、電動コンセプトモデル「ELETTRA(エレットラ)」を発表した。かつてのランブレッタよろしく、リアパネルを跳ね上げてパワーユニットにアクセスできる。リアの足まわりは、そこから見えるアルミ製スイングアームにサスペンションをセットするユニークなレイアウト。車重は135kgで、最高速は110km/hとされている。
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25/30ドゥカティは、2023年9月から続いたオンラインでのニューモデル発表会「DWP2024」のなかで、久しぶりに新規開発した単気筒エンジン「スーパークアドロモノ」を搭載した新型車「ハイパーモタード698モノ」を発表。ここEICMAで初披露した。スーパークアドロモノは想像していたよりも大きなエンジンで、ハイパーモタード698モノも、単気筒モタードとしてはやや大柄に見えた。とはいえ、ドゥカティにとって本当に久しぶりの、デスモドロミック採用の単気筒エンジンである。そのパフォーマンスは大いに気になる。
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26/30ヤマハは、欧州で人気のスポーツネイキッドモデル「MT-09」をマイナーチェンジした。エンジンのマウント方法を変更したほか、燃料タンクやフロントフェイスのデザインも刷新。アメリカンコミックのキャラクター、アイアンマンのようなフェイスデザインは、好き嫌いが分かれるところだろう。
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27/30スウェーデンで自動車用のエアバッグとエアバッグシステムを開発するAutoliv(オートリブ)。2022年のEICMAでは、イタリアのヘルメットブランド、Airoh(アイロー)と共同開発中のヘルメット内蔵エアバッグを発表しており、いまも研究を続けているという。そのオートリブは、EICMA 2023でエアバッグを使った新しいプロテクターを発表。そのひとつが、オープンフェイスヘルメット用のエアバッグだ。
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28/30インドのスタートアップ、ULTRAVIOLET(ウルトラバイオレット)の電動スポーツバイクコンセプト「F99」。航空力学から生まれたスポーツバイクで、すでに実走テストも始まっているという。空気抵抗を徹底的に突き詰めた外装デザインに加え、車体の傾きに合わせてサイドカウルが開き、ダウンフォースを稼ぐ新しいエアロシステムにもチャレンジしている。
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29/30アプリリアは、2023年9月に発表した、2気筒エンジンの新たなスポーツバイク「RS457」を展示した。欧州の“普通二輪免許”ともいえる「A2ライセンス」(最高出力35kW以下)のライダーに向けたスポーツモデルで、若いユーザーの獲得を目指していると考えられる。エンジンは新規開発の水冷並列2気筒DOHCで、最高出力はA2ライセンスの上限である35kWを発生。ライドバイワイヤーシステムを搭載しており、3つのライディングモードを持つ。また調整可能なトラクションコントロールも搭載。フレームはアルミ製だ。
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30/30新世代モト・グッツィをうたう、縦置き水冷V型2気筒エンジンを搭載した「V100マンデロ」のプラットフォームをベースに、アドベンチャーモデルに仕上げたのが「V100ステルビオ」だ。ピアッジオグループが社内で開発したADASシステムを搭載しており、アダプティブクルーズコントロールやブラインドスポットアシスト、車線変更アシスト、緊急ブレーキなどの機能を備えている。