トヨタ・イスト 180G(FF/4AT)/150X(4WD/CVT)/150X(FF/CVT)【試乗記】
 若者向け 2007.08.10 試乗記 トヨタ・イスト 180G(FF/4AT)/150X(4WD/CVT)/150X(FF/CVT)……214万6200円/194万4600円/191万4150円
2007年7月30日にフルモデルチェンジを果した「トヨタ・イスト」。現代風に進化したエクステリアを備える新型に、自動車ジャーナリスト笹目二朗が試乗した。
大きくみせる
初代の「トヨタ・イスト」は2002年春に登場。全長4mを切るコンパクトサイズながら、高さ方向を大きめに採り、ワゴンやハッチバックの便利さも取り入れ、「トヨタ・ヴィッツ」より使いやすい実用性とちょっと上級で洒落た仕上げを特徴とし、大家族トヨタファミリーの中では個性的な存在を主張した。
その後「プジョー307」あたりから流行りだした、大きく見せるスタイリング傾向を先取りするカタチで成功を納める。今回の2代目も、基本的な成り立ちはヴィッツに準じるものの、さらに大きく立派にみせる手法を駆使して、SUVなどにも一脈通じるクロスオーバースタイルを強調。ひとまわり以上大きくなった印象ではあるが、実際には全幅こそ3ナンバーサイズとなったものの、全長は依然として4m未満を堅持する。そのスタイリングが最大のセールスポイントである。エンジンラインナップは1.3/1.5リッターから1.5/1.8リッターへと上へ移行した。
今風のクルマ
まず1.5から試す。外観は最近のトヨタデザインの傾向である、デコボコしたプレスによる光の乱反射でまず威嚇する。前から来る姿やミラーに映った顔など、実際以上に大きくゴツく感じる。16インチの大径タイヤも逞しくみせることに成功している。やや下品とみるのは年寄りのヒガミで若者には受けるのだろう。なお外観に排気量を示すプレートはない。
1.5の変速機はCVTが組み合わさり滑らかな加速を約束する。ゲート式の変速レバーは、通常使う頻度の高い「D」と「S」が横に移動するだけ。簡単便利。DからSにするだけで活気が増し、1段階下のエンジンブレーキとしても使える。さらに下へ下げれば「B」があるが、エンジンブレーキはエンジン音がたかまる割りには、減速Gはさして強力ではない。
フットブレーキは右足でも左足でも踏みやすいし、AB同時にクロスさせてもエンジンが失速することはない。CVTの恩恵で、エンジン回転を落とさないまま、速度を減速させられる。一方、ブレーキを離した時には低いギア比(プーリー比)に自動的に移行しており、そのまま素早い加速体勢に移れる。
ちなみにイストは北米仕様にMTモデルが存在することから、カローラ同様サイドブレーキはレバー式を採用している。他の廉価版トヨタ車のような、2度踏みリリース方式の足踏み式ではないから、緊急時には反復使用もできる安心感をもつ。トヨタの中でも良識派だといえよう。
![]() |
1.8も良いけれど…
イストは趣味性を持つクルマではないが、気軽にちょっと近くのコンビニまで買い物に行くとか、家電などの生活用品を運ぶとか、軽便なアシとして使うには十分だ。フットワークも総じて軽快、乗り心地も大きな不満はない。微小領域の振動だとか、フラット感だとか、ロールがどうこうというような種類のクルマではない。ただ、166万円というベース価格は欧州製の小型車に比べると高いような気もする。
1.8はカローラなどと共通のユニットで、こちらは普通のトルコン4ATとなる。1.5モデルのCVTがエンジン回転の高いところからスタートするのに較べ、オートマのこちらは静かなところからスタートし、エンジン回転と共に速度が上がってゆく長年馴染んだ自然な感覚がある。だから総じて静粛に感じるし、エンジンブレーキなども期待通りに利く。1.8リッターはベース価格が189万円と高く、ナビなどのオプションを加えれば簡単に200万円を超える。そうなると走りっぷりは認められるものの、1.5を選んだ方が賢明と考えられる。
4WD仕様は1.5のみに用意される。これはリアデフ前に電子制御式のカプリングを備える。必要なときだけリアにトルクを伝えるタイプで、センターデフ式のフルタイム4WDではない。イストの車両重量は1150〜1170kgと比較的軽く、通常の使用では雪国でもFFで十分に走れる。だから、急坂や特別な状況で使うことが多いヒト以外、あえてこれを選ぶ理由はなさそうだ。
リアシートに3人乗せる場合にはセンタートンネルが邪魔だし、4WDの装置はそれなりに騒音の原因でもある。フルタイム4WDであれば、高速や強風雨天時には安定性など普段でもメリットはあるが、ただ積んでおくだけでは燃費に悪いだけだ。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。