トヨタ・イスト1.5S(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・イスト1.5S(4AT) 2002.06.08 試乗記 ……166.9万円 総合評価……★★★涙ぐましい独自性
コンパクトなボディに15インチの大径シューズ。大きく膨れたフェンダーフレアにちょっぴりSUV風味を感じさせられるこのクルマは、実はご存知ヴィッツの“化身”だ。ボディ骨格からエンジン/シャシーにいたるまで、ハードウェアはすべて「ヴィッツからの贈り物」。ついでに言えば開発スタッフも、やはりヴィッツの兄弟(従兄弟?)車であるbBの担当者とオーバーラップしている。
イストが狙ったキャラクターは“小さなプレミアムカー”。とはいえ、1.5リッターのFWD(前輪駆動)モデルで販価を150万円以下に抑えられているため、コストの嵩む“凝った手法”を採ることは許されない。
というわけで、前述のようにヴィッツよりふたまわりも大きなシューズを履かせたり、同じ内部構造を用いながらダッシュボード外観に新鮮さを演じたりと、涙ぐましい独自性アピールを模索。センターパネル内にはアンバー色のショーアップ・ライト付き小物入れ“イルミネーテッド・マルチボックス”を設けて、コレも売り物のひとつとする。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“……する人”を表わす「ist」を車名にしたイストは、2002年5月8日に発表された。「若者のモビリティライフに応える最上のコンパクト車」をコンセプトに開発された5ドアハッチ。「for your 1st」がキャッチコピー。1stとistを視覚的にかけたのがオシャレだ。ヴィッツのプラットフォームに、「スタイリッシュな新感覚エクステリア」(プレスリリース)を載せた。1.3、1.5リッター直4に、いずれも4段ATを組み合わせる。FF(前輪駆動)を基本に、1.5リッターには4WDも用意される。
(グレード概要)
イストのFFモデルは、基本的に「1.3F」と「1.5S」で構成される。1.5Sは、ベーシックグレードのほかちょっと豪華な「Lエディション」が設定される。ドアミラーが格納式か否か、エアコンがオートかマニュアルか、助手席シートアンダートレイ、運転席&助手席シートバックポケットが付くか付かないか、といったことが両者の差異だ。オーディオでは、CD/MD一体型ラジオが、Lエディションは6スピーカーだが、ベーシックは4スピーカーとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ダッシュボードは、フォルクスワーゲンの「ルポ」や「(旧)ポロ」が先鞭をつけた幾何学ディンプルシボ付きの本体を「4本の金属の柱が支える」というデザイン。全体の質感はまずまずといったところだが、目の前に広がるディンプルパネル部分に思わず触れてしまうと、そこではちょっと“ハリボテ”風の剛性の低さが寂しい。例の照明付きボックスはルームランプと同期して点灯/消灯。ただし、リレーの「プッチン」という音と共にいきなり消灯するのはちょっと興醒めだ。
(前席)……★★★★
フロントシートのルックスは、ダッシュボード/ドアトリムのディンプル調にコーディネートしたかのよう。ファブリックの表皮デザインを含め、価格相応以上という印象。シート全体を上下させられるドライバーズシートのリフト機能も嬉しい。チルトステアリングと相まって、好みのドライビング・ポジションを簡単に見つけ出すことができる。
(後席)……★★★
リアシートは、全グレード共2座席分の分離型ヘッドレスト付きの6:4分割可倒機能付きファブリック表皮。可倒機構はシートバックのみが水平まで前倒れするタイプだ。セルシオ級のクルマとの衝突時安全性を考慮した最新「GOA」ボディを採用するイストだが、それも関係してか、後席乗降時の足の運びがややきつい。キャビンを守る強度を上げるため、フロア両端のシル側部分に大きめの膨らみが残ってしまうためだ。
(荷室)……★★
ホイールベースが同じヴィッツに対して全長が20cm以上も延長されたイスト。だが、その割に荷物スペースはさほど大きくない。「外観から察するよりも荷物は積めない」というのがぼくの印象だ。ラゲッジフロアは高いが、これは前倒ししたリア・シートバックと高さを揃えるため。フロアボード下のサブトランクは、FFモデルの場合かなりの大容量だ(4WDモデルは後輪駆動機構のためにグンと浅くなる)。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
パワートレインは、bBと同じ。ちなみに、実は15インチのタイヤも(銘柄ともに)「bB用をそのまま用いている」という。街中ユースでは加速フィールがなかなかに軽快。4段ATのブログラム、シフトクオリティは、コンパクトカー用としては世界第一級と評価できる。優秀だ。排ガスレベルは、「超−低排出」と最優秀賞を獲得する。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
“小さなプレミアムカー”を目指すイストだが、残念ながら走りのクオリティ面で際立った特徴を感じることはできない。ハンドリングも「キビキビ感を狙った」というが、むしろステアリングの応答性は鈍感な部類。車高=重心高が上がったことによる転倒対策などから、意図的に操舵ゲイン(ステアリング操作に対する反応)が下げられているからだ。乗り心地も、速度を増して行ってもさほどフラットな感覚は得られなかった。「大きなシューズ」から抱く期待が大き過ぎたということか……。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2002年5月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)185/65/R15 88S(後)同じ(いずれもMichelin GreenX MXE)
オプション装備:DVDボイスナビゲーションシステム+CD/MD一体型ラジオ+6スピーカー(21.9万円)/特別車体色(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):山岳路(3)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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