日産フェアレディZ バージョン NISMO(FR/6MT)【ブリーフテスト】
日産フェアレディZ バージョン NISMO(FR/6MT) 2007.07.14 試乗記 ……469万3500円総合評価……★★★★★
ニッサンのモータースポーツを担当するニスモが手がけた「フェアレディZ バージョン NISMO」。専用アイテムを装着したコンプリートカスタムカーに試乗した。
大人のスポーツクーペ
人は見かけによらないとはよくいうが、クルマにもそれは大いにあてはまる。それが新車試乗の醍醐味でもあって、この「フェアレディZ Version NISMO」はまさにそんな一台。
日産のモータースポーツ活動を支えるNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)が企画し、日産のカスタマイズカーを手がけるオーテックジャパンが開発・製造するバージョンニスモは、ニスモがZのモータースポーツ活動を通じて培ってきたノウハウを注ぎ込んだカタログモデル。エアロパーツを見ただけでも、タダモノではない雰囲気を醸し出している。
しかし、その乗り味は、大人のスポーツクーペという言葉がふさわしい、上質で懐深い味わいに仕上がっていた。高い剛性を誇るボディとしなやかさが感じられる足まわり、街乗りからワインディングロードまで気持ちよく使えるエンジンなど、そのバランスの高さは日本車離れしている。それが日本車のプライスで買えるのだから、これを見逃す手はないだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
日産のモータースポーツを担当するニスモとオーテック・ジャパンが共同開発。2007年1月11日の「フェアレディZ」マイナーチェンジと同時に発売された。
ノーマル「Z」の主な変更点は、新開発の「VQ35HR」エンジン(313ps、36.5kgm)の採用とエンジンフード意匠変更。また、新色ボディカラーの追加、内装色にグレーを採用するなどした。装備面では、アクティブヘッドレストの採用とヘッドレストの大型化、ナビゲーションシステム機能が向上された。
バージョンNISMOは、ニスモが開発を担当し、オーテック・ジャパンが生産を行なう。持ち込み登録が必要なカスタムカーであるが、通常の日産車と同じくディーラーで購入できてアフターサービスも受けられる。
(グレード概要)
内外装ともに専用パーツを装備する。エクステリアでは、前後左右をエアロパーツで飾り、タイヤは、(前)245/40R18 (後)275/35R19(ポテンザRE-01R)の専用タイヤに、レイズ製鍛造アルミホイールを装着。内装は、本革/アルカンターラのコンビシートに本革巻ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングブレーキレバー、専用ドアトリム、コンビネーションメーター、アルミ製アクセルペダル(MT)などが備わる。
専用剛性アップボディに専用サスペンション、YAMAHA製のパフォーマンスダンパーを採用した。トランスミッションは、6段MTのほかマニュアルモード付5段ATが用意される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネの中で、バージョンニスモであることをさりげなく訴えるのが専用の3連メーター。中央のレブカウンターにニスモのロゴが入るとともに、右側にある速度計のフルスケールが、通常の190km/h(数字は180km/h)から260km/hに拡大している。エンジンは標準モデルと同じだけれど……。
一方、バージョンニスモに限らず、ダッシュボード上部やドアトリムなどは、決して豪華ではないがデザインを工夫することで質感のアップが図られている。エアの吹き出し口やドアハンドル、ステアリングコラムから伸びるレバーなども上手くデザインされていて、スポーティな雰囲気をつくるうえで役立っている。
(前席)……★★★★
レザーの一部にパンチング加工を施し、仕上げにレッドのステッチを使ったステアリングホイールはバージョンニスモ専用品。ステアリングコラムはチルトのみで、テレスコピック(前後調節)はないけれど、ノーマルモデル同様3連メーターがステアリングコラムとともにチルトするのはうれしい配慮。ステアリングのポジション合わせをしたらメーターが見づらくなった、なんて事態は減りそうだ。
専用のシートはレザーとパンチング加工のアルカンターラのコンビネーション。センターのアルカンターラが滑りにくいのと、シートクッション前側中央に設けられた盛り上がりが腿(もも)を支えてくれるおかげで、下半身の“座り”がいい。上半身も適度に張り出したサイドサポートと腰の部分が膨らんだシートバックのおかげで、タイトさと快適さを両立している。
(荷室)……★★
ラゲッジスペースを前後に分割するようにメンバーが配置されるため、せっかくテールゲートを持っていても荷室の広さは感じられない。それでもメンバーの前後にゴルフバッグがひとつずつ入る(サイズにもよるだろうが)というから、2シータースポーツとしては合格点か?
テールゲートには大型のリアスポイラーが装着されるおかげで、後方視界は芳しくない。ルームミラー越しだと、夜間、後続車のライトがちょうど隠れるのはうれしいものの、後続車がどんなクルマかわからないのが不安である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
最新のフェアレディZは、スカイラインに搭載される高回転型VQエンジン「VQ35HR」を採用する。バージョンニスモでは専用大口径スポーツマフラーが装着されることもあり、アイドリングではやや太めのエギゾーストノートがノーマルとの違いを控えめにアピールする。
しかし、基本的にはノーマルと変わらないエンジンだけに、低回転でも3.5リッターらしい余裕あるトルクを発揮し、神経質なところも皆無。街なかでも実に実用的で扱いやすいエンジンである。
もちろんこのエンジンの気持ちよさは非日常を楽しむときに顕著になる。ショートストロークのシフトレバーはカチッとしたタッチで、これを駆使してレブカウンターの針を3000rpm以上に保てば、エンジンとエギゾーストの音が心地良い和音を奏でながら、大排気量の自然吸気エンジンらしいスムーズで力強い加速を披露してくれる。スペック上でトルクがピークを迎える4800rpmを過ぎるとわずかにサウンドに濁りが混じってくるが、それでもレブリミットの7500rpmまでストレスなく回る様子はまさに快感だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
バージョン・ニスモ専用のフロントバンパーや派手な専用リアスポイラーが装着されることもあって、乗り心地はスパルタンと思いきや、専用サスペンションと前245/40R18、後275/35R19のポテンザRE-01Rがもたらすのは、意外なほどマイルドで快適なものだった。街なかでは、マンホールを乗り越えるような場面でもショックを伝えることなく、首都高速の目地段差によるハーシュネスも巧みに遮断する。高速でのフラット感も優秀で、日常の足から長距離ドライブまで、なに不自由なくこなしてしまうオールマイティさを持っている。気を遣うのは、駐車場の輪止めや段差のあるスタンドの入り口くらいだ。
一方、ワインディングロードに足を踏み入れれば、高速コーナーでは狙いどおりのラインを辿る、まさにオンザレールの感覚だ。コーナリング中にロールは感じられるが、安定感は抜群。しかも、サスペンションはホイールを路面に押し付けるというより、むしろ、しなやかな動きで路面を捉えているという印象なのだ。ステアリングを握る手に伝わるインフォメーションも豊富。回頭性は鋭いというほどではないが、FRらしい素直なハンドリングが、ワインディングロードで過ごす時間を楽しくするのは間違いない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年5月16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:1万1062km
タイヤ:(前)245/40R18(後)275/35R19(いずれもブリヂストン POTENZA RE01R)
オプション装備:カーウイングスナビゲーションシステム(DVD方式)(26万7750円)/ETCユニット(2万6250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(2):山岳路(7)
テスト距離:259.1km
使用燃料:38リッター
参考燃費:6.82km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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