YES! ロードスター 3.2 TURBO (MR/6MT)【試乗記】
マニアックなクルマ 2007.07.10 試乗記 YES! ロードスター 3.2 TURBO (MR/6MT)……1487万2200円
出力355ps、車重930kgと、耳を疑いたくなるようなスペックを誇る「YES! ロードスター 3.2 TURBO」が日本に上陸。その走りを試す。
ドイツ生まれのピュアスポーツ
少量生産のスポーツカーメーカーというと、真っ先に思い浮かぶのがイギリスの「バックヤードビルダー」たちだが、自動車メーカーやそれを取り巻くパーツメーカーが多数存在するという意味ではドイツもなかなかの立地条件で、日本ではあまり知られないが、古くから個性的なブランドが存在する。
そのうち比較的新しい「YES!」は、ドレスデン近郊にファクトリーを構える「フンケ&ヴィル」社によるコンパクトスポーツカーブランドだ。同社は自動車関連技術の研究開発やプロトタイプ製作などを行う会社で、そのノウハウを活かしたスポーツカーづくりに取り組んでいる。
彼らの記念すべき第1弾は「YES! ロードスター」で、オリジナルのアルミスペースフレームに、フォルクスワーゲンの1.8リッターをターボ化したエンジンをミドにマウントし、リアを駆動するという本格派だ。取り外し式のキャンバストップが付くが、基本はオープン。キャンバストップやガルウイングドアを持たない「CLUBSPORT」やフロントガラスのないサーキット専用モデルの「CUP/R」など、さらに硬派なモデルも用意される。
日本ではオートリーゼンがYES! ロードスターの輸入・販売を担当。価格はロードスターが1039万5000円。CLUBSPORT、CUP/Rはそれぞれ955万5000円と1249万5000円である。
軽さこそがスポーツカーの命
そしてこのたび第2弾となるYES! ロードスター「3.2」と「3.2TURBO」が日本上陸を果たした。ミドシップのオープン2シーターという基本コンセプトはYES! ロードスター(1.8)と同じだが、外観も中身も一新し、大きな進化を遂げている。
たとえば、従来フロントフード下に収められていたラジエターがフロントエンドに移されたことにより、小さいながらもフロントフード下に収納スペースが設けられたり、リアコンビネーションランプやエンジンフードがさらに洗練されたデザインに変わるなど、新旧の変化は著しい。さらに、要となるアルミスペースフレームや前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションなどにも改良が加えられたという。
搭載されるエンジンは、VWの3.2リッターV6。自然吸気のYES! ロードスター 3.2でも255ps、さらにこれをHGP製のターボで武装した3.2TURBOなら355psを絞り出す頼もしさだ。
注目は車両重量の軽さで、アルミスペースフレームとFRPによりボディの軽量化を図るとともに、パワーステアリングやブレーキサーボといったパワーアシストの類を排除するなどして、YES! ロードスター 3.2では890kg、3.2TURBOでも930kgを実現。乗る前からアクセルペダルを踏みつけるのが楽しみである。
細部にもドイツ生まれの証が
試乗するのはYES! ロードスター 3.2 TURBO。ガルウイングのドアを引き上げ、これでもYES! ロードスター 1.8に比べると格段に低くなったサイドシルを跨いでレザー張りのバケットシートに収まると、コクピットからの眺めに親しみを覚える。メーターパネルをはじめ、ウインカーやワイパーのレバー類、アクセル/ブレーキ/クラッチペダル、空調の吹き出し口、パーキングブレーキレバーといったパーツは、VWやアウディで見慣れたものばかり。これらをイチからつくっていてはコストがかかりすぎるわけで、ドイツ勢のYES!としては入手のしやすさや高い信頼性が自慢のVWのパーツを使うことにしたのだろう。
ダッシュボード中央にある赤いボタンを押すと、運転席の背後にある3.2リッターエンジンが一発で目を覚ました。アイドリングからなかなか逞しいサウンドを発している。試乗時間が短いためさっそくスタート。
おー、軽い!
そして、ボディ剛性が高い!
アクセルペダルに軽く足を載せ、2000rpm以下の低回転で進むだけでも、アルミスペースフレームがもたらす軽さと剛性の高さはすぐさま体感できたのだ。
加速は豪快
目の前にクルマがいなくなったのを見計らい、アクセルペダルを床まで踏み込めば、豪快なサウンドを伴いながら、ガツンとターボが効いたエンジンは、あっというまにレブカウンターの針をレッドゾーンまで追い込んでしまう。まさに胸のすく加速である。245/35ZR18のリアタイヤも、最大49.5kgmに達するトルクを持て余す様子はない。
パワーアシストのないステアリングやノンサーボのブレーキはダイレクト感に溢れ、それでいて苦になるほどの重さでないのがうれしい点。コーナーではフロントタイヤにきっちり荷重をかけてやらないと、向きを変えてくれないが、そのあたりはドライバーの腕の見せどころというわけで、一方、そこそこのペースで走るかぎりはリアに落ち着きがあるぶん安心して乗ることができる。
そうこうしているうちに試乗時間は終了。正味わずか15分ほどの“お楽しみ”だった。YES! ロードスター 3.2 TURBOは、大メーカーがつくるクルマとは違い、まだまだ荒削りな部分はあるが、運転する楽しさという部分では、量産車が捨ててきた「速さ」や「ダイレクトな操縦感」を堪能できるクルマだった。決して万人ウケするタイプではないが、そのマニアックなクルマづくりが好きかどうか聞かれれば、もちろん私は「YES!」と答える。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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