第46回:Zoom-Zoomのふるさとを訪ねる(その3)
2007.06.08 エディターから一言第46回:Zoom-Zoomのふるさとを訪ねる(その3)
携帯電話は没収です
マツダミュージアムに続き、工場を見学します。
メインメニューはロータリーエンジンの組み立て工程の勉強です。
本社と隣接する工場は、233万平方メートル(東京ドーム172個分)という非常に広い敷地となっています。広いというより長いといったほうがいいかもしれません。写真でみるとわかるように、海、川沿いに長く工場が横たわっているのです。
社員の移動はもっぱら巡回バス。33ヵ所にバス停があり、10分間隔ぐらいで発車するそうです。
そうそう、毎年この敷地を使って、駅伝大会も催されるんだとか。
我々もバスに乗って移動します。
ご存じのとおり、工場の中は企業秘密の宝庫となっています。実はバスでの移動中、緑色の覆面をした偽装車両も見かけたのです。まだ世に出ていないエンジンとか、そういうモノがポロポロ見かけられます。
ということで、我々はカメラ付き携帯電話を没収されていたのです。企業秘密を気軽に撮影されたら困りますからね。
なるほど、マツダ広報部の人が妙に古くさいカメラ無し携帯電話を持っていたのはこういうわけだったんですね……。
ロータリーで思い出す
ついにロータリーエンジン(RE)工場に到着。
レシーバーを受け取り、解説付きで工場を見学します。
ここで今年40周年を迎えたという、マツダREの歴史を簡単に振り返ってみましょう。
当時社長の松田恒治氏がREの開発にGOサインを出し、初めて世に出たRE車が1967年の「コスモスポーツ」。その後、「ファミリア」「ルーチェ」「カペラ」など、マツダの主力車種に次々と搭載されました。
1982年にはロータリーターボを「コスモ」に搭載し、当時最速市販車といわしめました。スポーツカー「RX-7」などにも採用され、ついに1991年にはルマンでRE搭載の「マツダ787B」が総合優勝をしたことは有名なエピソードですね。
しかしバブル崩壊後の経営悪化に伴い、フォード傘下となるや、新社長のヘンリー・ウォレス氏はREの凍結を宣言。マツダの魂ともいえるREをなくすことは苦渋の決断だったことでしょう。
我慢の経営を続け、再びREが復活するのはフォードから来た3人目の社長、マーク・フィールズ氏の時。排ガスや燃費など、時代に即した新世代REである「RENESIS」が開発され、ついに2003年の「RX-8」発売で再びREに火が入ったのです。
私もロータリーと聞くと思い出すことがあります。
実は『webCG』で働き始め、初めて行った発表会が「RX-8」。そしてそこでは社長にインタビューをするという大役に臨みました。その緊張の傍ら、発表会場での社長をはじめとするマツダ社員の満面の笑みも印象に残っています。
波立たないワイン
と、話はずいぶんと逸れましたが、RE工場のコト。
ごらんのように、REは四方を壁に囲まれた「RE工房」というところで、手作りで生産されているのです。これは別にREが別扱いされているということではなく、ゴミなどがエンジンに入り込まないようにという配慮。作業者の白い服も静電加工がしてあり、ホコリを寄せ付けません。
組み付け作業ももちろんですが、品質チェックも手が介在します。その手の感覚を研ぎ澄ませるため、作業者は「TAKUMI(匠)塾」で約1ヶ月間修行を重ね、晴れてRE生産を任される「匠」となれるわけです。
左の写真、上下で同じ人を写しているのがわかりますか?
RE工房をでたユニットは、補機類その他を装着していくわけですが、ラインでは一人の人が担当するそうです。「これやってパス、これやってパス」のような工程ではなく、流れるエンジンとともに、担当者が着いてまわるのです。
これは一人が集中して行うことで、作業効率のアップをねらったモノだそう。効果はてきめんで、従来の半分の距離で作業が終わるようになったとか。そんなわけで、このラインの先の方はスペースが余っていました。
組み上がりの後は、エンジンのコールドテスト(火を入れずにエンジンを回転させて不具合を発見するというもの)が行われます。
ここでおもしろい実験をしてもらいました。低振動が一つのウリであるREの上にワイングラスを置き、エンジンを回転させて振動の具合を見るのです。ワインは微妙な波を立てるだけで、大波になりません。私も手を置いてみましたが、感動するほどの低振動でした。
軽量、小型、低振動とメリットの多いRE。個人的にはあともうちょっと燃費と低回転域のトルクをがんばってほしいところです。そうなればいろいろな車種にパワーユニットとして搭載される日も近いのでは!?
(その4へ続く)
(webCG 本諏訪)

本諏訪 裕幸
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