シボレー・コルベットC6【海外試乗記(後編)】
The Best Corvette Ever(後編) 2004.09.29 試乗記 シボレー・コルペットC6 アメリカン・スポーツ「シボレー・コルベット」にデトロイトで試乗した『webCG』大川悠は、6代目の最新型に“ベスト・コルベット”の判を押した。その理由は……。伝統のV8
「シボレー・コルベット」の長い歴史的過程で育まれてきたものがエンジンである。いわゆる「スモールブロック・シボレーV8」がそれだ。
このエンジンもまた、半世紀近く前の1955年に生まれた。7リッターV8が全盛の時代に4.3リッターと、当時の直6並みの排気量だったがゆえに“スモール”の愛称がついたが、これは戦後のGM最大の傑作エンジンだと言っていい。後のシボレー各高性能車に使われてきたばかりでなく、実に今日に至るまで基本設計はそのままに、様々なバリエーションを構成しつつも、シボレーの宝として生き残っている。
「キャデラックXLR」にV8 DOHC「ノーススター」を与えたデイブ・ヒルだが、コルベットにこの伝統のエンジンを組み合わせることに、一切の迷いはなかったという。スモールブロックなしにコルベットは成り立たない。そう考えた結果、今回もこのユニットが選ばれた。
実はコレ、いまでは珍しいプッシュロッドのOHVによるV8であり、気筒当たりのバルブも2本に過ぎない。でもGMによれば、充分な排気量さえあるなら、ツインカムよりOHVの方が相応しいという。軽くコンパクトにつくれるし、部品点数や可動部分もすくないから、かえってチューンしやすい。なにより、パワーよりもトルクが大事なのだ。それが根拠である。
「C6」に与えられたのは「LS2」なるユニットである。これは従来モデル「LS1」の発展型で、アルミブロックが新設計されて5.7から6リッターへとアップした。もはや“スモール”ブロックという呼称は似つかわしくないが、400ps、55.3kgmというパワー/トルクは、ポルシェやV8フェラーリに匹敵する。
トランスミッションは6MTか4AT。ともにこの大トルクに対処して容量アップが図られた。ATの方はGMお得意の「アダプティブ・システム」がさらに改善されている。
より純粋なスポーツカーへ
ふたまわりほど小型化したかのように軽快でありながら、ピシッと引き締まった乗り味が気持ちよく、しかも内外装がとても上質になったピュア・スポーツカー。デトロイト郊外で乗ったコルベットC6を総括するとこうなる。
やはり小さく軽くそして剛性が高まったボディが、コルベットに新しい感覚を与えた。これまでのようなアメリカン・マッチョ的な感覚は消え、大型級というよりはミドルクラス・スポーツカーの軽快さと、タイトなドライブフィールが生まれている。ドライバーの意向を察知するようにすべての機械が反応し、けっして小さくはないが引き締まったボディが応答する。やや重めの「マグナステア」はほとんど遊びを与えず、クルマはあたかもドライバーのヒップを中心に回転するような、気持ちのよい動きを示す。
それでいて、乗り心地は非常に洗練された。フロントに245/40の18インチ、リアは285/35の19インチとタイヤは太く大きくなったにもかかわらず、ロードノイズはすくなくなったし、デトロイト郊外の荒れた一般路で低速で走っても、あまりざらざらした感触はない。
ちなみに、これはランフラットタイヤである。BMWでもそうだが、ランフラットの場合、タイヤ径が大きくロープロファイルの方が、ラバー自体の重さが減って、意外と乗り心地がいいのかも知れない。
ノーマルサスペンションでも、ハンドリングと乗り心地のバランスはかなり煮詰められていると感じたが、GMはオプションでお得意の「マグナライド」も用意している。磁気によってダンパーオイルの粘性を変えるこれは、「ツーリング」と「スポーツ」の2モードがある。テストコースが一般道だったから、個人的にはツーリングで充分だと感じた。スポーツの場合、たしかにダンパーの減衰力は上がって、ほとんどの路面でフラットな姿勢を示すが、場合によってはリバウンドのときに軽い反発を示すことがある。
ちなみに、スポーツパックたる「Z51」にも試乗した。バネ、ダンパー、スタビライザー、タイヤ、ブレーキからギアレシオまで異なるこのバージョン、スパルタンな仕様かと思いきや、意外と洗練されていて面白かった。
こうやってシャシーが洗練されたうえに、コルベットが独自の魅力として誇るのが伝統のLSユニットである。高回転でこそツインカムのようなスムーズさはないが、いつでもどこでも豊かなトルクが津波のように伝わってくる感覚こそ、OHVならではの快感であり、それこそコルベットだけが与えることができるスリリングなドライブフィールである。
このOHVとリファインされたシャシー・ボディの組み合わせを持ったC6は、疑いもなく“ベスト・コルベット”だと断言できる。
(文=大川悠/写真=日本ゼネラルモーターズ/2004年9月)
シボレー・コルベットC6【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015761.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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