ポルシェ・カイエン【海外試乗記】
ポルシェで最初 2007.04.06 試乗記 ポルシェ・カイエンエンジンがパワーアップし、デザインも変更された「ポルシェ・カイエン」。2006年12月から受注が開始され、間もなく日本導入となる新型にスペインで試乗した。
見た目よりも
「歴史と伝統」では“あのクルマ”に勝てないし、「容姿」で比べられたら“そのクルマ”に負けてしまいそう……と、そんなことを言っては失礼かもしれないけれど、このところ並みいるライバルたちの追撃激しいハイエンドSUVのポジションで戦いを続けて来た「ポルシェ・カイエン」。
そんなカイエンシリーズが2002年の誕生以来、初めての大幅なマイナーチェンジを実施した。
狙うところはズバリ「ONでもOFFでもナンバー1の走り」。
それこそが“ポルシェのSUV”の生きる道であるということを、当の本人(?)たちは痛いほど知っているに違いないのだ。
眼光鋭く薄型化したヘッドライトや峰の部分が強調されたフロントフェンダーなどで、より精悍になったフロントマスクがまずは目を引く新型のルックス。
新型ではウインカー/クリアランスランプが「ターボ」のみアウター・インテークの上部に横型レイアウトされ、一層明確なグレード間の判別が可能になった。
しかし、そうした見た目よりも何よりも、今回のマイナーチェンジでのメインメニューと言えるのは「全モデルのエンジン換装」というニュース。
カイエンに積まれるV型エンジンは、「911」や「ボクスター」/「ケイマン」に積まれる水平対向ユニットを差し置いて(!)全ユニットが直噴ヘッド付きへとビッグチェンジされたのである。
加速力アップ!
というわけで、そんな心臓を積む新型に乗って走りだすと、それがどのグレードであろうが従来型に対して加速の力感を増したことは一瞬であきらか。
それもそのはずで、実は今回のモデルは圧縮比アップを伴う直噴化に加え、排気量アップという“正攻法”も用いて大幅な出力アップを実現しているのだ。
実際、トップモデルの「ターボ」の最高出力は、ついに500ps(!!)を達成。これまで「怒涛の○○」と表現をしてきたそのフル加速力は、今やもう用いるフレーズが見つからないほどの凄まじさだ。
あいかわらず、フォルクスワーゲンから供給されるベースユニットを用いる素のカイエンの加速力が、いよいよポルシェ車の一員として相応しい力強さを得たのも嬉しいが、個人的に最も気に入ったのは「S」のMT仕様だった。
排気エネルギーを2基のターボチャージャーに吸い取られてしまう「ターボ」よりも迫力あるサウンドをアピールし、より軽快でスポーティなフィーリングを楽しませてくれる。
新しいローリング防止システム
「ターボ」には標準で、その他のモデルにはオプション設定される「エア・サスペンション」に、さらにオプションアイテムとして新設定された「PDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)」も、今回のマイナーチェンジの目玉アイテム。
最大180barの油圧で作動するスイングモーターが、前後のスタビライザーを個別にコントロールしてロール剛性をコントロール。
なるほど、「最大で0.65Gの横加速までゼロロールを保つ」というその効果はSUVとは思えないシャープなコーナリングシーンを演出。もっともオーナーは例によって「ポルシェのオプション」の高価な価格設定に泣かされる事になるのだが……。
そんなこんなで、なるほど“走りはナンバー1”というキャラクターにさらに磨きを掛けたのが今度のカイエン。
そしてポルシェはこれを皮切りに近い将来、水平対向エンジンの直噴化にも踏み切るというのがもっぱらの噂だ。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。