シトロエンC3【海外試乗記】
シトロエンの味 2002.04.26 試乗記 シトロエンC3 フォルクスワーゲン「ポロ」やプジョー「206」をライバルとする、シトロエンのコンパクトカー「C3」。丸みあるボディが、往年のシトロエン「2CV」を彷彿とさせる新型に、自動車ジャーナリスト森口将之が試乗した。2CVの面影
2001年の「フランクフルトショー」で発表された「シトロエンC3」は、偉大なる大衆車「2CV」を思わせるディテールがそこかしこに見られるため、新型「ミニ」やフォルクスワーゲン(VW)「ニュービートル」と同類のクルマと思うかもしれない。しかし実際は違う。VW「ポロ」やプジョー「206」、ルノー「ルーテシア」などをライバルとし、ヨーロッパではBセグメントに属する正統派のコンパクトカーとして開発された。
最近ヨーロッパのメーカーは、このカテゴリーに2つの持ち駒を用意するのが一般的になっている。例えば、VWのルポとポロがそのいい例だ。シトロエンはすでに、このクラスに「サクソ」を持つが、それにC3を加えた2台体制で激戦区に挑もうという目論見らしい。
もうひとつこのクルマで注目したいのは、PSA(プジョーシトロエングループ)の新開発プラットフォームを使うこと。このプラットフォームはもちろん今後プジョー(207か?)にも使われる予定だ。グループ内での住み分けは今までどおり、スポーティなプジョーに対してコンフォートなシトロエンというものだという。
エンジンはガソリンが1.1/1.4リッターSOHCと、1.6リッターDOHC16バルブの3種類。1.4/1.6リッターは、日本仕様のプジョー206に積まれるおなじみのものだ。ディーゼルは、シトロエンが属するプジョーシトロエングループと、フォードが共同開発したコモンレール直噴方式の1.4リッターターボで、SOHC8バルブとDOHC16バルブがある。
トランスミッションは、1.4リッターガソリンに4段ATが選択できる以外はすべて5段MT。ただしこのあと、1.6リッターには2ペダルMTが用意されるらしく、日本にはそれと1.4リッター+4ATの仕様で、2002年の秋に上陸する予定だ。2002年4月に業務を開始したシトロエンの100%出資である日本法人、シトロエンジャポンでは、プジョー206に近い価格で売りたいという。
C3のボディサイズは、プジョー206に近い全長×全幅×全高=3850?×1667?×1519?。高めの全高を持つボディは、丸みを帯びたボンネットとルーフ、逆台形のグリル、6ライトのサイドウインドーなどに、2CVの面影を見ることができる。インテリアも、速度計をデジタル、回転計をアナログとしたメーターは扇型で、ステアリングはセンターのスポークを強調するなど、2CVの雰囲気が感じられる。かつてソレに乗っていた人間にとっては、楽しめる空間だった。
フロントシートの着座位置は少し高め。幅こそタイトだが、厚みのあるクッションが体を包み込むようにサポートする座り心地は、まさにシトロエンだ。リアシートの広さはこのクラスの平均レベルだが、やはりクッションが厚めなので座り心地はいい。ラゲッジスペースには、リアシートを倒したときにできる段差を埋めるための折り畳み式ボード、「モデュボード」が備わる。
守られた「良き伝統」
最初に乗ったのは1.4リッターの4AT仕様。車重は同じパワートレインを積む、日本仕様プジョー206とほぼ同じ1039kgだ。フランスの道は日本より流れが速いが、上り坂や高速道路でなければアクセルを全開にする必要はなかった。遮音性は設計が新しいせいもあって206より上手で、このクラスで静かなほうといえる。
5MTとの組み合わせで乗った1.6リッターモデルは、トルクに余裕があり、高回転での伸びがプラスされることもあって、スポーティな走りさえ堪能できる。驚いたのはディーゼルで、加速は1.6リッターに劣らず、ターボは低回転から効き始め、上は5000rpm近くまで滑らかにまわりきる。「ディーゼルのプジョー」の面目躍如だ。
新設計プラットフォームのサスペンションは、フロントは一般的なマクファーソンストラットだが、リアはサクソやクサラなどのトレーリングアームから、トーションビームに変更された。ひと足先にデビューした、プジョー307と同じ形式である。しかし乗り味は、ドイツ車のような307と少し違い、フランス車らしさを残したものだった。
タウンスピードでは硬められたダンパーのために、路面の状況を比較的はっきりと伝えてくる。しかし60km/hぐらいまで速度を上げると、絶大なるフラット感のなかにゆったりした上下動を織り交ぜた、シトロエンならではの“味”を届けてくれるのだ。電動アシスト式ステアリングは、低速では軽めで路面の感触をあまり伝えないが、速度を上げれば適度な重さとしっとり感をもたらしてくれる。直進安定性はこのメーカーの良き伝統どおり。
コーナリングは背が高いにもかかわらず、ロールがほとんど感じられないのが美点だ。前輪のグリップは高次元で、リアの挙動変化は307同様抑えられているので、安心してペースを上げることができた。
最近のシトロエンとしては久しぶりに個性的なルックスを持つC3。走りの面では、このブランドの「良き伝統」が守られていた。新生シトロエンジャポンには、すでにかなりの問い合わせが入っているというが、そんな期待を裏切らない内容の持ち主だ。
(文=森口将之/写真=シトロエン・ジャポン/2002年4月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。

































