第311回:美味しいものだけをJAIAから(その2)
クライスラー300C SRT8……侮れませんよ、アメリカの力!
2007.03.14
小沢コージの勢いまかせ!
第311回:美味しいものだけをJAIAから(その2)クライスラー300C SRT8……侮れませんよ、アメリカの力!
時代に翻弄されたブランド
最近じゃダイムラーグループから切り離されて、ヒュンダイに売られちゃうとか、GMがアメリカの意地でもって買い取るとかウワサされてるクライスラー。さすがにツライもん感じますな。誰にも愛されなかったなんとかのアヒルの子みたいで。
でもねぇ。俺に言わせりゃ、あれは単なるダイムラー・クライスラーのシュレンプ元会長の策略。当時あった“400万台クラブ”の幻想にのっかって、アメリカ企業とくっつき、自分だけ稼いで後はポイ。聞けば、今は大量のストックオプションで悠々自適の生活を送ってるとかいないとか。
しかも彼、どうやらドイツじゃ珍しい冒険主義者で、悪い言いかたをするとそもそもが“バクチ打ち”。そんな人がトップに付いちゃった企業は大変だわさ。
むろん今後の地球温暖化、石油問題のなりゆきによっては“400万台クラブ”幻想復活もあり得るのかもしれないけど、とにかくクライスラーが時代に翻弄された事実だけは否めない。自ら時代の変化についていけなかった根本的欠点はさておきね。
かなり本気な「SRT」
でもね。クライスラー、つくづくこの分野は強いと思ったなぁ。そ、見た目も中味もわかりやすくパワフルなマッスルカー的世界。特にこの300Cは一部、先代「メルセデスEクラス」の技術が入った、いい意味でのアメリカ文化とドイツ文化の融合。アメリカンな見た目や突き抜けたパワフルさを持ちつつもドイツ的なしっかり感、安心感、質の高さも備えてる。いまさらだけど、こういうクルマばかり作っておけばよかったのよね。ダイムラー・クライスラーさん!
と前置きが長くなっちゃったけど、ようするにこのSRT8、そのいいとこ取り300Cの魅力をさらに進化させたものなんですね。エンジンは半球型燃焼室を持つ、ジマンの5.7リッターV8 OHVヘミをベースに、6.1リッターまでボアアップした上、シリンダーヘッドやインテーク、エグゾーストまで再設計して431psにパワーアップ。
足まわりも当然強化されていて、チューンナップ済ダンバーや専用スプリング&ブッシュ、大径スタビライザーに加えて、ブレーキはブレンボの溝付きディスク&4ピストンキャリパーを4輪に装着するという念の入れよう。かなりの本気度です。
ちなみに“SRT”つまり“ストリート&レーシング・テクノロジー”と名の付くシリーズは「ダッジ・バイパー」「ラム」「マグナム」などなど全9モデルも用意。いわばBMWのM、メルセデスのAMGみたいな存在なわけよ。
豪華で美味しいマクドナルド!?
とはいえ正直、乗る前はどんなもんかなぁと思ってたのね。300Cって確かに元々いいクルマだけど、アメ車ならではの大味さもあるし、これ以上パワーアップしても味は濃くはならないんじゃないの? と思っていたのだ。なんというか“豪華で美味しいマクドナルド”って思い浮かばないでしょ? 美味しい熟成ワインは想像できても。
ところがどっこい走るとヒジョーに楽しい! 足は普通に乗ってて気持ちヒョコヒョコするくらいで、評価の高いV8ヘミはその全域で素直かつ豪快なトルク感をそのまま拡大したよう。ヘンに扱いづらいチューンドエンジンになってない。で、素性は変わらず、ステアリングフィールだけが前より研ぎ澄まされて、ヴィヴィッドになってるのだ。
特に乗り心地の良さにはびっくりよ。前より確かに硬くなってるのに、アメ車独特の軽い感じをキープ。マッスルカー作りに長けたクライスラーだけあるなって感じですよ。
ってなわけで爆発的には売れないだろうけど、好きモノには絶対支持されるであろう300C SRT。つくづく、クライスラーさんにはがんばってほしいもんだと思いましたね。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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