シトロエン・サクソ スーパー1600【ブリーフテスト】
シトロエン・サクソ スーパー1600 2003.05.27 試乗記 ……207.9万円 総合評価……★★★★60食限定・超辛口
サクソ スーパー1600。ニクい名前だ。昨2002年から「ジュニアクラス」に名前が変わった WRC(世界ラリー選手権)の1.6クラスのカテゴリー名を、シトロエン・ジャポンはサクソのファイナルモデルにそのまま与えてしまった。
内容的には今までのカタログモデル「VTS」のドレスアップ版と言っていいが、そもそもVTSが、兄弟に当たる「プジョー106S16」の上を行くキレた走りの持ち主だった。それに太い扁平タイヤを組み合わせたスーパー1600は、まさに超辛口。クルマのほうから喜んで向きを変え、喜んでリアを滑らせる。
これを平然と作って売るシトロエンは、やはり“ラテン”系だと思った。でも残りは60台。最近発表された後継車「C2」にも、こういう過激なヤツが用意されることを切に祈る。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
サクソは「AX」に代わるシトロエンのボトムレンジとして、1996年にデビュー。同じPSAグループのプジョー106の兄弟車で、モノコックボディの基本骨格まで共用して いた。日本仕様は、当初は商標の関係でシャンソンと名づけられたが、99年からサクソになった。2000年にマイナーチェンジを受けたが、今年2003年春に「C2」にあとを譲り生産終了される。
(グレード概要)
名前がサクソとなってからの日本仕様は、1.6リッターDOHCに5速MTを組み合わせた3ドアの「VTS」だけが輸入されている。スーパー1600はこれをベースにした60台限定のファイナルエディション。ホイール/タイヤが14インチから15インチになったほか、シトロエンスポール製アルミペダルカバー/フューエルフィラーキャップなどが装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
曲線で構成されたシトロエンらしいデザインのインパネは、ホワイトメーターやアルミ風シフトノブなどでスポーツモデルであることを強調している。中央のエアアウトレットは手前に引き出す形で角度を変えることができる。レバー式のエアコンのコントローラーなど、設計の古さを感じさせる部分もあるが、機能 面では不便をあまり感じない。
(前席)……★★★★
ふっかりしたクッションで包み込むように体をサポートする掛け心地は、小さいながらもシトロエンそのもの。固めで角張ったプジョー106「S16」のそれとは明らかに違う。ヒップポイントもこちらのほうがすこし高め。日本仕様は上質そうなベロアでおおわれているが、スーパー1600を名乗るならもう少しシンプルなファブリックでもよかったのでは?
(後席)……★★
今となっては低めの車高のためもあって、そんなに広くない。大人が座れないこと はないが、ひざの裏が浮くなど、明らかに短時間用。シートの形状はソファのようで、腰をやや前にずらして座るとしっくりくる。中央席のシートベルトが2点式で、ヘッドレストの用意がないあたりにも時代を感じさせる。2人掛けと考えたほうがいいだろう。
(荷室)……★★★★
後席が狭い代わりにこちらは広い。このクラスでは最大級ではないだろうか。奥行きや深さも十分だが、なんといってもうれしいのは左右の出っ張りがほとんどないこと。スプリングにトーションバーを使い、ダンパーは寝かせて配置した凝ったリアサスペンションのおかげだ。リアシートが6:4分割で、座面を上げたあと背もたれを倒す方式なのも立派。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1トンを切るボディに1.6リッターだから、加速はあらゆる場面で不満がない。2001年以降は欧州の排ガス規制「ユーロ3」対応となった関係で性格はマイルドになったが、レスポン スの鋭さや、レッドゾーンが始まる7000rpmまで一気に吹け上がる活きのよさは健在。回したときのフォーンというサウンドは典型的な「いい音」だ。 クサラやプジョー206よりしっとりとしたシフトタッチも好感。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
サクソVTSの足まわりはプジョー106S16より、さらに尖った性格になっていた。それに太い扁平タイヤを組み込んだスーパー1600は、普通のドライバーが乗っていいの? と思えるほど過激。乗り心地は硬いながらも不快ではない。ステアリングを切った瞬間にノーズが横を向き、アクセルを離せば簡単にリアが滑る。気分はまさにラリードライバーだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年5月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:−−
タイヤ:(前)195/45 R15(後)同じ(いずれもタイヤ:ミシュラン・パイロットSX)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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