シトロエンC3 1.6エクスクルーシブ(FF/4AT)【試乗記】
コンパクトらしからず、コンパクトらしく 2006.05.08 試乗記 シトロエンC3 1.6エクスクルーシブ(FF/4AT) ……250万5000円 フェイスリフトにあわせて、トランスミッションがセンソドライブから4段ATに変更された1.6リッターの「C3」。快適な素早い身のこなしには満足はしたが、気になる点も……。大きくなったダブルシェブロン
2002年4月にヨーロッパで販売を開始、その半年後に日本にも上陸したシトロエンC3が先頃マイナーチェンジを果たし、日本国内でもこの3月からディーラーの店頭に並んでいる。全体のシルエットに大きな変化はないが、新C3ではグリルのダブルシェブロンが大きくなったのがポイントで、しかも、グリルに貼りつけられるのではなく、C5やC4のようにグリルそのものをダブルシェブロン形にしてしまったのが特徴である。
ほかにもフロントナンバープレートの取り付け位置が低められたり、リアコンビネーションランプにホワイトの部分が設けられるなど、細かい変更点はたくさんある。しかし、私が最も関心を持ったのは、トランスミッションの変更。日本のC3には1.4リッターエンジンと1.6リッターエンジンが用意され、従来、前者にはオーソドックスなオートマチックが、後者にはセンソドライブと呼ばれる2ペダルマニュアルが組み合わされていた。対してマイナーチェンジ後はこれが逆転し、1.4リッターにセンソドライブが、1.6リッターに4ATがそれぞれ装着されることになった。1.4リッター+センソドライブについては笹目二朗氏のレポートをご覧いただくとして、今回は1.6リッター+4ATの印象を報告しよう。
ちなみに、C3プルリエルにも1.6リッターエンジンが搭載されているが、こちらはフェイスリフトを受けず、トランスミッションも従来どおりのセンソドライブとなる。
やっぱりトルコンはいい
試乗したのはC3 1.6のうち、パーキングアシスタンスや本革巻きステアリングホイール、シートアンダートレーなど装備が充実する1.6エクスクルーシブ。さらにオプションのレザーパッケージと“スカイルーフ”が奢られた豪華版である。
1.6リッター直列4気筒ユニットは、マイナーチェンジ前と同じ最高出力110ps/5800rpm、最大トルク15.3kgm/4000rpmを誇る。これにトルコン式の4段オートマチックがドッキングするわけだが、その出来映えは期待値の80%という印象だった。
1180kgの車両重量に前述の性能だから、とりたてて余裕があるはずはないが、日常での使用であれば不満を感じないのも確か。予想どおり発進はもたつくことなくスムーズで、シフトアップの際もギクシャクしたり、空走感が目立つことはない。センソドライブの進化は著しいが、やはりまだこのあたりはトルコン式に敵わない。3000rpm以下の常用域で十分に活発なエンジンは、回してもそれなりに力強く、高速道路で追い越しをかける場面でも躊躇は不要。箱根の登りも、後続車のプレッシャーに負けて道を譲ることはなかった。
減点の理由は、状況によってなかなかシフトアップしたがらないオートマチックのプログラム。たとえばキックダウンの直後などはアクセルペダルを踏む右足の力を緩めても、すぐにシフトアップせずイライラすることがあった。また、急なアクセル操作に対し、すぐさまキックダウンしてほしい場面でも、一呼吸待つことも。それでも以前に比べると目立たなくなったのは事実で、これならATでも十分楽しめそうだ。
16インチはミスマッチ!?
一方、C3 1.6の走りっぷりは、やや硬めの乗り心地が“フランス車”らしくない。それ自体に不快さはないが、装着される195/50R16サイズのタイヤがこのクルマにはやや重く、荒れた道路で多少ドタバタする印象は否めなかった。高速道路などの目地段差でショックをかわしきれないのも残念。C3 1.4同様、標準サイズは15インチでいいのではないだろうか?
それ以外はとくに不満はなく、コンパクトなボディを感じさせない安定した高速走行性能と、コンパクトカーらしい街中での素早い身のこなしはこのクルマの美点である。パッケージングにも優れ、大人でも窮屈さを感じない後席や、2段収納の荷室など、使い勝手もまずまず。
最近は必要以上のパワーやスペースを、いろんな理由をつけて正当化するクルマが多いが、一方、それとは正反対のC3には潔さを感じる。どちらが日本の道路環境に似合うのか? そしてスマートか? その答えはいうまでもないだろう。
(文=生方聡/写真=峰昌宏/2006年5月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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