【スペック】全長×全幅×全高=4815×1795×1475mm/ホイールベース=2705mm/車重=1590kg/駆動方式=FF/3リッターV6DOHC24バルブターボ ・インタークーラー付き(200ps/5000rpm、31.6kgm/2500rpm)/車両本体価格=530.0万円(テスト車=553.0万円)

サーブ9-5 3.0t(4AT)【ブリーフテスト】

サーブ9-5 3.0t(4AT) 2001.01.26 試乗記 青木 禎之 ……553.0万円 総合評価……★★★★

遠赤外線クルーザー

9-5 3.0tは、サーブのアッパーミドルサルーン「9-5シリーズ」の廉価版。2001年から導入された。トップグレード「グリフィン」より60万円も安い。といっても、530.0万円もするけれど。ノーマルのインテリアはファブリックだが、オプションで革内装も可。
片バンクからの排気のみを利用する独特のターボユニットを搭載。過給機と3リッターの排気量でアウディA6に対抗し、V型6気筒で来るボルボS60を迎え撃つ。
全長4.8m、全幅1.8mのボディは、身も心も大きい。おおらかな乗り味。軽い過給が、低回転域からウェイト1.6トン弱の加速を加勢する。反面、ちょっと回すとウルサイ。
フリーウェイでは、水を得た大魚。とりたてて速さを感じさせずに、速い。ハンドリングもいいから、退屈しないリラックスクルージングを楽しめる。クルマ好きのココロをアツくはさせず、しかしほのかにあたためる遠赤外線クルーザー。

【概要】 どんなクルマ?

(シリーズ概要)
フロアパンの基本はオペルの現行ベクトラ。弟分に9-3があるが、そちらは旧型ベクトラをベースにしている。9-5のエンジンは自前の2.0/2.3リッター直4と、オペルオリジンの3リッターV6がグレードに応じて用意され、いずれもサーブ伝統のインタークーラー付きターボを備える。サルーンはすべて、エステートは2.3と3リッターが日本に入れられる。過給方式は大別してパワー追求型(ハイプレッシャー)と燃費重視型(ロウプレッシャー)に分かれ、片側バンクのみの排気で過給する3.0tの場合は後者に当たる。
(グレード概要)
2001年モデルになって、9-5サルーンの3リッターモデルは、ベーシックの「3.0t」、フル装備の「グリフィン3.0t」に分かれた。3.0tは、内装がファブリックになるのが最大の違い。ただし、セットオプションで、レザーシートを選択することができる。クルーズコントロール、ウッド&レザーのステアリングホイール、ベンチレーテッドフロントシートなどを備えるのが、「グリフィン3.0t」の特権。

【車内&荷室空間】 乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
落ち着いた色調のウッドパネルをたっぶり使った贅沢なインパネ。オーディオ、スイッチ類まわり、およびダッシュボードの樹脂類の質感は高い。しっとりと落ち着いた感じ。エアコン吹き出し口の奥に格子状の板を3枚重ねて、風向調節としている。無駄に凝っているところが、さすがはプレミアムブランド。
(前席)……★★★★★
厚い革を余裕をもって使ったシートは、座るとフカッと沈み、しかしその後はクッションがしっかりとお尻を支える。高級車としてあらまほしきもの。ラグジュアリーだ。座面、背もたれとも横方向のサポートはまったく期待できないが、それは期待する方が間違っている。
(後席)……★★★★★
ボディサイズ相応の、広いリアシート。居間のソファでくつろいでいるかのよう。フロアコンソール後端に、リア用のブロワーがあり、風量を調整できる。シートヒーターは、オプション装備。幅の広いセンターアームレストには、薄い小物入れと収納式カップホルダーが備わる。
(荷室)……★★★★★
床面最大幅×奥行き×高さ=135×110×52cmと広大なトランクルーム。ヒンジは、ダンパーを用い、荷室の外に設置される。そのためラゲッジルームに干渉しない。後席の座面を前に畳むダブルフォールディング、かつ背もたれは分割可倒式。こうなると、バカンスのない国のヒトには、「家族揃って夜逃げ」ぐらいしか、用途が思い浮かばない。

【ドライブフィール】 運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★
オペルの3リッターV6をベースに、片バンクからのみの排気を使ってタービンを回す独特の過給システムを採用。「急発進」「急加速」厳禁な雪国のクルマらしく、穏やかな過給機付きエンジンだ。中低回転域のトルクを厚くして、プレミアムサルーンらしくゆったりと走らせるための工夫だろう。ただ、2000rpmを越えると唸り声が一気に高まる。ストップ&ゴーの多い都会で、まわりのクルマに合わせて走るとウルサイ。マイペースを守れる、達観した紳士向き。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
路面からの突き上げ遮断が完璧とはいえない足まわり。しかし、デキのいいシートと、ゆるやかな挙動で、全体としておおらかな乗り心地を実現した。ロールは深く、サイドサポートのないシートゆえ、トバそうとは思わないが、けっして運転が退屈ではない。ステアリング操作と予想される動きが乖離しない素直なハンドリングだ。

(写真=河野敦樹)

【テストデータ】

報告者:webCG 青木禎之
テスト日:2001年1月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型(2001年モデル)
テスト車の走行距離:4686km
タイヤ:(前)215/55R1693V/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot HX)
オプション装備:Aパッケージ(20.0万円=レザーシート、ドアトリム、フロントパワーシート、後席ヒーテッドシート)+チャイルドシート(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:369.0km
使用燃料:46.0リッター
参考燃費:8.0km/リッター