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【スペック】全長×全幅×全高=5008×1868×1467mm/ホイールベース=2837mm/車重=1990kg/駆動方式=4WD/2.8リッターV6DOHC16バルブターボ(300ps/5500rpm、40.8kgm/2000rpm)/価格=695万円(テスト車=721万9000円/メタリックペイント=8万4000円/U字カーゴレール=2万2000円/リアシートエアバッグ=2万3000円/電動ガラスサンルーフ=14万円)

サーブ9-5エアロXWD(4WD/6AT)【試乗記】

帰ってきた旗艦 2011.08.03 試乗記 竹下 元太郎 サーブ9-5エアロXWD(4WD/6AT)
……721万9000円


13年ぶりにフルモデルチェンジした「サーブ9-5」。“二枚目”なスタイリングに生まれ変わった新型の、走り方はいかに? 最上級のスポーティグレード「エアロXWD」に試乗した。

全長5メートル超の堂々たるボディ

すでに海外のモーターショーで見る機会があったので、実車に触れるのは今回が初めてではない。しかし、いざ東京の街中に置いてみると、新型「サーブ9-5」は思いのほかボリューム感のあるクルマだった。全長は5メートルを超えており、ボディサイズは「メルセデス・ベンツSクラス」や「BMW7シリーズ」に迫る。同じスウェーデンの大型サルーン「ボルボS80」(全長4850mm)が、引き締まって見えてくるくらいである。

ビジネス上はオランダのスパイカーの傘下に入ったサーブだが、クルマそのものはかつての宗主、GMのコンポーネンツで成り立っており、車両のそこかしこにGMの刻印が見られる。クルマの土台にあたるシャシーは、GMグループ内で「イプシロンII」と呼ばれているミドルサイズFF(および4WD)向けのもの。オペルが主体になって開発し、オペルブランドとしては「インシグニア」に使用されている……と言っても、大半の人がピンとこないことであろう。インシグニアとは、かつての「ベクトラ」の後継車である。あちらではなかなか評判が良く、2009年の欧州カーオブザイヤーに輝いた。

2.8リッターV6ターボエンジンも、スペックこそ若干の違いはあるが、基本的にはインシグニアと共用と見ていい。BMWなら「535i」(3リッター直6ターボ)に匹敵する、300psおよび40.8kgmというパワー・トルクを誇る。なかなか比出力の高いエンジンである。その他、日本では2リッター直4ターボも選べるが、さらに本国では1.6リッター直4ターボというストイックなダウンサイズエンジンも用意されている。それでは、まずはデザインから見ていこう。

日本に導入されたのは、2リッター直4ターボの「ベクター」(FFと4WD)と2.8リッターV6ターボの「エアロXWD」(4WDのみ)の2グレード。
日本に導入されたのは、2リッター直4ターボの「ベクター」(FFと4WD)と2.8リッターV6ターボの「エアロXWD」(4WDのみ)の2グレード。 拡大
メーター類のグリーンの針がレトロな雰囲気を演出している。
メーター類のグリーンの針がレトロな雰囲気を演出している。 拡大
300psを発生する2.8リッターV6ユニットは6ATと組み合わされ、0-100km/h加速を6.9秒でこなす。
300psを発生する2.8リッターV6ユニットは6ATと組み合わされ、0-100km/h加速を6.9秒でこなす。 拡大

新しいけど懐かしいインテリア

新型9-5のエクステリアは、コンセプトカー「エアロX」(2006年発表)で披露された“デザイン言語”が用いられている。いかにも空気となじみがよさそうな面質だけでなく、ノーズデザイン、キャビンをぐるりと取り囲むウィンドウのグラフィック、シャープな形状のリアコンビランプなどにも、エアロXの面影が見てとれる。

しかし、この新型をしてサーブたらしめているのは、何といってもリアのたたずまいだ。凝った顔つきのクルマはいくらでもあるが、ここまで雄弁なCピラーを持つクルマも少ない。直接的なモチーフはもちろん旧型9-5だろうが、かつての「900」や「99」の時代から、サーブのCピラーは個性的だった。それを“異端”なまま今によみがえらせるのではなく、ダイナミックで二枚目なカタチに定義しなおしたのが、このデザインのひとつの功績と言えるのではないか。

サーブのレトロフューチャーワールドは室内にも繰り広げられる。格子状のエアコンルーバー、アナログのターボブースト計、そしてセンターコンソールに配置されたエンジンスタートスイッチ(キーシリンダーではなくボタンに進化した)と、サーブらしいディテールが続く。ただし、あのぐるりと回ってスタンバイされる凝ったドリンクホルダーはやめてしまった。あれはわが社の歴史ではない、ということなのだろうか? 一方で、メーターには日本語もちゃんと表示され、ローカライズが結構しっかりしていて感心した。このクルマに対するサーブの力の入れようがヒシヒシと伝わってくる。

自分たちのシグネチャーというものを意識して、それをやや強めに前面に出したまとめ方は、なんとなくだが、「ランチア・テージス」や「シトロエンC6」に通じるものを感じる。元ネタを知らないまま乗ったって、もちろん問題ない。でも、知っていたほうがより楽しめる見せ方である。

クーペのようなフォルムを形成するCピラーが、独特の存在感を放つ。
クーペのようなフォルムを形成するCピラーが、独特の存在感を放つ。 拡大
HDDナビゲーションシステムやハーマンカードン・サラウンドシステムも標準で備わる。
HDDナビゲーションシステムやハーマンカードン・サラウンドシステムも標準で備わる。 拡大
イグニッションはボタン式に改められた。位置も旧型より前方に移されている。
イグニッションはボタン式に改められた。位置も旧型より前方に移されている。

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乗り心地は路線変更?

2.8リッターV6ターボエンジンは、始動とともに音と振動の両面で骨太な感触を伝えてきた。日本車やドイツ車の最新の基準からすればスムーズとは言えないかもしれない。しかし、このクルマは「エアロ」という、ラインナップの最上級に位置するスポーティなグレードであることを思えば、これぐらいの手応えがあってもいい。いや、あったほうがそれらしい。

もっとも、素性そのものにはクセはなく、低い回転域から力強い、扱いやすいエンジンである。トルクコンバーター付きのオーソドックスなATが組み合わされているおかげで、街中のストップ・アンド・ゴーは滑らかにこなすし、スロットルペダルを大きく踏み込めば、3000rpmあたりから気持ちのいい吹け上がりも見せる。もちろんスペックどおりの速さもある。

その一方で、やや乗り手を選ぶかな、と思わされたのが乗り心地だ。最近はスポーティなグレードでも、サスペンションがしなやかに動き、サルーン顔負けの快適さを誇るクルマは珍しくない。しかし、「エアロ」の乗り心地はずいぶんとしっかりしており、ゴツゴツとした硬めの入力を示す。サルーンベースのスポーティモデルで、最近ここまでソリッドな仕立ても珍しいように思う。同じスウェーデンのボルボが各モデルに設定する「Rデザイン」シリーズより、よほど骨っぽいセッティングである。

サーブ9-5といえば、しなやかで軽いタッチの足どりが好印象だっただけに、このオトコらしい足まわりにはちょっと面食らってしまった。9-5よ、帰ってくるなり、ちょっと攻めすぎではないか、と……。2リッターの直4エンジンを搭載するFF仕様の「ベクター」は、いったいどんな仕上がりなのか。それを試してから、もう一度、新型9-5のまとめをしたいと思う。結論は宿題とさせてください。

(文=竹下元太郎/写真=高橋信宏)

19インチホイール&タイヤを履く「エアロXWD」のサスペンションは、かなり硬めの設定だ。
19インチホイール&タイヤを履く「エアロXWD」のサスペンションは、かなり硬めの設定だ。 拡大
レザーシート(「ベクター」はコンフォートレザーシート、「エアロXWD」はパーフォレーションレザーシート)や前席パワーシート、シートヒーターは全車に標準装備される。
レザーシート(「ベクター」はコンフォートレザーシート、「エアロXWD」はパーフォレーションレザーシート)や前席パワーシート、シートヒーターは全車に標準装備される。 拡大
リアシートは6:4の分割可倒式。なおホイールベースの延長により、後席レッグルームは旧型より58mm広がったという。
リアシートは6:4の分割可倒式。なおホイールベースの延長により、後席レッグルームは旧型より58mm広がったという。 拡大
ラゲッジルームの容量は515リッター。
(画像をクリックするとシートアレンジが見られます)
ラゲッジルームの容量は515リッター。 
(画像をクリックするとシートアレンジが見られます)
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