サーブ9-3スポーツセダン アーク2.0t(5AT)【ブリーフテスト】
サーブ9-3スポーツセダン アーク2.0t(5AT) 2003.04.01 試乗記 ……415.0万円 総合評価……★★★★
|
やや曖昧
「やっぱ高級車はセダンじゃないと」と、猫背気味のハッチバックボディを捨て、一般的な3ボックスになった新型「9-3」。兄貴分「9-5シリーズ」同様、本格派オルタナティブ(!?)への道を歩む。
顔つき以外は、いまひとつ“Saab”をアピールできないスタイリングなれど、心地よい革内装の運転席に収まれば、車内はまごうことなきサーブの世界。樹脂製パーツの露出の多さが、“プレミアム”との整合性に疑問をもたせるが、スロットルペダルを踏んでドライブを始めれば、再び“サーブ”に浸れる。
2リッターターボの、よくしつけられた、かつ“スポーツセダン”の名に恥じないアウトプット。フリーウェイを滑るかのごとく走るすばらしい乗り心地。しかもハンドリングはビビッドで、ドライバーをして飽きさせることがない。
新しい9-3は、「品のよさ」「高い動力性能」「路上における数の少なさ」といった価値はそのままに、「変わっている」と思われない特典付き。ただし、存在がやや曖昧。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年9月のパリサロンで正式にデビューした「9-3」(発表は同年5月)。ハッチバックボディを捨て、一般的な4ドアセダンとして登場、今回からスポーツセダンを名乗る。今後、順次「コンバーチブル」「ワゴン」などが加わる予定。“サーブ初のプレミアムコンパクトモデル”を謳い、「BMW3シリーズ」「アウディA4」「ボルボS60」を仮想敵とする。エンジンはすべて2リッター直4ターボだが、チューンによって210ps/175ps/150psの3種類に分けられる。2003年2月8日からわが国でも発売が開始され、当初「リニア1.8t」「アーク2.0t」がラインナップされる。トランスミッションは、本国では5/6段MTも選べるが、日本に入るのはシーケンシャルシフトが可能な「セントロニック」こと5段ATのみ。
(グレード概要)
2003年モデルのグレード構成は、「Linear(リニア)1.8t」「Arc(アーク)2.0t」、遅れて「Aero(エアロ)2.0T」が加わる。ハンドルは、いずれも左右から選択可能。アークは、リニアよりハイパワーで、足下も1インチ大きな16インチを標準とする。インテリアは本革仕様となり、控えめにポプラウッドパネルが用いられ、ラジオ+6連奏CDプレイヤー(7スピーカー)が備わる(リニアはシングルCDプレイヤー)。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
垂直に近く立ったダッシュボード。メータークラスターからセンターコンソールへと自然につながる造形など、先代のイメージを上手に引き継いだ。ダイヤル、ボタンといった操作系はシンプルで、よく整理される。北欧的簡潔さ。上部奥には、「平均速度」「燃費」「走行可能距離」などを表示するSID(サーブインフォメーションディスプレイ)が設置される。
新型においては、エントリーグレードのみならず、上級版「アーク」でも、ウッド(「エアロ」はアルミ調)パネルの使用が、シフターまわりとドアのごく一部に限られるのを残念に思うサーブファンがいるかもしれない。表に出る樹脂の面積が増えたことに対するエクスキューズ、あるいは新しい提案が、ニュー9-3にはない。センタークラスター上部の一等席に設置される小さなディスプレイが、オーディオ関係の情報を表示するだけなのも、(かつての)電子立国ニッポンのマーケットではアピールに欠ける。400万円超のクルマで、純正カーナビが付かないのか、と。サーブの母国スウェーデンは、IT先進国のはずだが……。
(前席)……★★★★
小ぶりだが、座り心地のいいシート。運転席、助手席とも、ダイヤル式のランバーサポートが備わり、座面、シートバックを別体でコントロールする電動シートだ。3段階に調節可能なシートヒーターが付くのは、寒い日にはありがたい。すぐに温まり、かつエアコンでのぼせ気味(?)になる心配がないからだ。センタークラスターおよびシフターの後ろに、ふたり分のカップホルダーが備わる。
(後席)……★★★★
やや低めの着座位置。適度に窪んだ座面、立ち気味の背もたれ、そしてガッシリしたヘッドレストと、前席に負けない座り心地を提供するリアシート。膝前、頭上とも空間はじゅうぶん。完全に実用的だ。頭の後ろまで延びた天井もいい。車検上は5人乗りで、法規上は後席には3人座れるが、センタシートにはヘッドレストが備わらない。この場所には、モノ入れをかねた広いアームレストもしくは、トランクスルーを活用したスキー板用とわりきるべきだ。
(荷室)……★★★★
容量421リッターを謳う大きなラゲッジルーム。床面最大幅140cm、奥行き104cm、高さ53cm。分割可倒式になった後席バックレストを倒せば、180cm程度の長尺モノも運搬できる。サーブに限らず、最近、トランク内に背もたれを倒すためのレバーおよびトランクスルー用ロックを備えるクルマが多くなったのは、バレーパーキング(係のヒトが駐車する)の際、室内から荷室にアクセスされないため(国によって、バレーパーキング専用キーが用意される場合がある)。世のなか、世知辛くなる一方である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1960年代にまで遡るトライアンフ由来の4気筒鋳鉄ブロックはついに捨てられ、86×86mmのスクウェアなボア×ストロークをもつ、GMグループのオールアルミユニットが採用された。サーブ独自の4バルブ、ツインカムのヘッドをもち、ギャレットGT20ターボチャージャーによって過給される。「リニア1.8t」より0.2bar高い0.7barの過給圧から、175psと27.0kgmを発生する。2000rpm以下で最大トルクの90%を得るのがジマン。自然な出力特性で、ことさら「ターボ」を意識させることはない、しかし十分に力強いパワーソースだ。アイシンAW製5段ATと組み合わされ、スロットルレスポンスも良好。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
GMグループ内FF(前輪駆動)車用の、いわゆる「イプシロン」プラットフォームを用いたニュー9-3。とはいえ、シャシーにはサーブ独自のチューンが施され、たとえばコーナリング時にリアがごくわずかながらトーアウトして回頭性を助ける味付けは、珍しい。先代から継承されたチューニングだが、今回「ReAxs(リアクシス)」と名付けられた。サーキットでタイムアタックするドライバーには納得いかない部分があるかもしれないが、一般的な使い方においては、街なかでも、高速道路でも、フラットライドにして活き活きとしたハンドリングが楽しい。ただ、以前より乗り心地は硬め。総じて“ドイツ車っぽく”なった感がある。ハイスピード時代を迎えて、サーブに限らず、“柔らかいスポーティ”を堅持することは難しくなっている。
(写真=清水健太)
|
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年2月20日-24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式: 2003年型
テスト車の走行距離 :2288km
タイヤ :(前)225/45R18 91W(後)245/45R18 96W(いずれもブリヂストンPotenza RE040)オプション装備 :−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態 :市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離 :463.4km
使用燃料:61.4リッター
参考燃費:7.5km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。

















