サーブ9-3スポーツエステート【海外試乗記(後編)】
クールな爽快感(後編) 2005.09.01 試乗記 サーブ9-3スポーツエステート 2005年のジュネーブショーでデビューした「サーブ9-3スポーツエステート」。欧州の新型ワゴンは、どんな走りを見せるのか。![]() |
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トランスミッションとのマッチング
エンジンは、ガソリン6種類、ディーゼル2種類の計8種類が揃えられた。2005年、25万台に拡大した西欧のミドサイズ・ワゴン市場では、ディーゼルが70%を占めるというが、日本に輸入される計画はない。正規で入るのは、2リッター直4ターボが、チューンを変えて3種類(150ps、175ps、210ps)。そして2.8リッターV6ターボ(250ps)である。4気筒は5段AT、6気筒には6段ATが奢られる。
日本では、2リッターターボのチューンが低い順に、「リニア」「アーク」「ヴェクター」、2.8リッターV6には「エアロ」のグレード名が与えられる予定だ。価格は、375万円、430万円、470万円、520万円程度と予想される。セダンより30万から50万円高いことになる。
スウェーデンはイエテボリで開催されたプレス試乗会には、いずれもV6エアロながら、トランスミッションは6MTと6ATが用意された。
インテリアは、セダンと変わらない。ウッドパネルがふんだんに使われた先代と比較すると、現行のインストゥルメントパネルは少々素っ気ない。2トーンの洒落たシートは、ふっくらしたあたりで座り心地がいい。しっかりしたヘッドレストには、もちろん、サーブオリジンのSAHR(追突されたときに前方に移動して、ダメージを軽減する)が装備される。
V6に装着されたターボチャージャーは、ツインスクロール式で、ロスなく三菱製タービンを回す。最大ブースとは0.6バール。アウトプットにほんのりトルクを上乗せするタイプで、気になるタイムラグがない一方、爆発的な加速もない。吸気側可変バルブタイミング機構と相まって、ピークパワーより、フラットトルクの実用性を狙ったユニットである。
どことなくボンヤリしたフィールのエンジンだが、クルマは気づかないうちに速度がのる。MTより、ATとの方がマッチングがいい。
気になる部分
清楚なスタイルとは裏腹に、気になるドライブフィールも散見された。エアロはハイスペックモデルだけあり、「235/45R17」というスポーティなピレリ Pゼロ・ロッソを履き、サスペンションは硬められる。高速巡航は得意だが、舗装が荒れた道では乗り心地が損なわれがち。ステアリングを切りながらスロットルを開けると、明確にトルクの干渉がある。
……といったことは、まあ、職業柄の意地悪い視点から見た9-3ワゴン。一方、ハイスピードクルージングは、スポーツエステートのもっとも得意とするところ。ステアリングホイールを握っていると、インテリアに負けない、クールな爽快感がある。
9-3スポーツエステートは最新モデルらしく、なかなかのハイテックワゴンである。「ABS」、前後の制動力配分をみる「EBD」、発進時のトルクを制御する「TCS(トラクション・コントロール)」、コーナリング時のブレーキを司る「CBC」、そしてアンチスピンデバイス「ESPプラス」ほか、タイヤの空気圧を監視する「空気圧モニタリングシステム」も搭載される。
日本での発売は、11月初旬になりそうだ。
(文=webCG青木禎之/写真=ゼネラルモータース・アジアパシフィック・ジャパン/2005年8月)
・サーブ9-3スポーツエステート【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017100.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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