第284回:ますます“雑貨化”するクルマたち
ライバルはMUJI?の三菱eKワゴン(小沢コージ)
2006.10.18
小沢コージの勢いまかせ!
第284回:ますます“雑貨化”するクルマたちライバルはMUJI?の三菱eKワゴン
■スライドドアの最大の問題
うーん、つくづく痛感しました。ますます“雑貨化”するクルマたちの現状を。これはほとんど止めようがないですね。なんせeKワゴン開発陣に聞いたところ、「雑貨チェーンの『MUJI』は意識しましたね。イメージ的に合ってるし」とか言うんだからさ。別にいいんだけど。
ってなわけで行ってきたんですよ、三菱eKワゴン試乗会。都内某所で行われたんだけど、ハッキリ言ってあんまり走りとかそういう部分で聞くことはなかったのよね。
ボディ、エンジンは基本的には初代のキャリーオーバーで、特に乗り心地と音が改善されてる。実際、乗ってみると今の軽自動車として過不足なく乗り心地はいいし、音も静か。クラスを超えたしっかり感ってほどのものはないけど、不満は全くない。
だから自ずと軽乗用車初の電動スライドドアに注目せざるを得ないのよ。こちらとしては結構驚きの装備なんだけど、三菱さんとしては例の不祥事もあったし、i(アイ)という別の軽自動車も作ってたし、根本からクルマ作りを変えるほどのお金もヒマもなかったんで、一種飛び道具たるスライドドアの採用は最初からすんなり決まったそうな。
最大の問題はスライドを電動にして、なおかつ価格を抑えることで、ハッキリ言ってノーマルモデルに対し、プラス10万円ぐらいだったら開発もラクだったらしい。要するにオプション装着のナビぐらいの価格だけど、あえてそこをプラス5万円と抑えることによって、クルマ全体の商品性として含ませることに注力した。
確かに軽自動車ユーザー、軒並みお金にゃ厳しいだけにプラス10万円と5万円じゃ大違い。5万円だったら、大抵の人は付けるでしょ。
■社内に「収納コワザ委員会」発足
実際の開発としては、スライド用レールをボディの外側ではなく、ドアの内側に付けるのが難しかったそうな。なぜならそれは軽のボディ長に限界があるから。一定のドアサイズを確保し、さらに開口部を最低でも50センチ強確保するとなると、ボディ外側付けではレール長が足りなくなる。
だからドア内側にレールを持ってきてるんだけど、そうするとドア全体の取り付け剛性がつらくなるし、内側レールへの指はさみも対策せねばならない。
そこでは以前にインナーレールを採用した三菱RVRの経験が役に立ったとか。つくづく感謝すべきは先達の努力よね。
で、そのほか気になったのは、CMキャラクターの江角マキコとシート裏のマルチユースフックだったってわけだ。
江角マキコは同じ雑貨ライクカーとしての最大のライバル、ダイハツ・タントがキムタク妻の工藤静香を起用して成功したのにも影響されたようで、すんなり決定。どちらも男勝りの強気美人って感じだよね。
マルチユースフックってのは、子供のお気に入りのハンカチやらぬいぐるみみたいのを簡単に付けられる装備で、まさに100円ショップ感覚。そこで冒頭のコメントが出てきたってわけだ。
加えて新型eKの話題といえば、新たにフタ付きになったプチゴミ箱とか容量3倍になった運転席側アッパーボックスとか、乗用全員にイッコはあるカップホルダーとかそんなのばっか。
だから一番驚いたのは今回eKワゴンを開発するにあたり、2年前に三菱社内で「収納コワザ委員会」なる会が発足したってこと。コイツは実に20〜30人からなる三菱エンジニアの集団で、常日頃から100円ショップやスーパーに通い、アイデアを養ったというのだ。
ライバルは日用雑貨! つくづくクルマも変わったものよのぅ。
(文と写真=小沢コージ/2006年10月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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