レクサスGS430/IS350バージョンS/IS250バージョンL/SC430【試乗記(後編)】
やり残した宿題をかたづけたレクサス(後編) 2006.09.14 試乗記 レクサスGS430/IS350バージョンS/IS250バージョンL/SC430 ……814万1750円/572万7000円/500万1000円/704万円 日本でのレクサスブランド誕生からわずか一年で実施された3車種のマイナーチェンジは微細な変更にとどまった。しかしながら、乗り心地の大きな変化を見いだしたリポーターは、先行試乗した「LS」を思い出したという。その理由とは……。乗り味が上質になった「GS」
GSも変更点はわずかだ。何しろ、全車にドアロック連動型のドアミラーの電動格納機能が付いたのがトピックとなるほど。ほかにはボディカラーラインナップのリニューアル、ナビ情報をもとにダンパー減衰力を変化させるNAVI AI-AVSのGS430への標準装備化、GS350への18インチホイールの設定が変更点としてアナウンスされている。
しかしGSも、試乗車は随分以前と印象が変わっていた。本当はこちらも公にしてない改良点があるのでは? しかし三吉茂俊チーフエンジニアも、笑ってそれを否定した。
「どこも変えてないですよ。違うとすればタイヤだけです」
そう、タイヤだ。GS430、そして新設定の18インチを履くGS350のランフラットタイヤ仕様は、乗り心地が明らかに向上していた。実は試乗車が履いていたこのタイヤ、GS450hのデビュー時に採用された進化型なのだという。今回、そのタイヤが全車に展開されることになり、それで印象が大きく向上したらしいのだ。正直、GS450hは乗り心地も操縦安定性も、まだ高い点数は与えられない。しかし、より車重の軽いGS430やGS350では十分に合格点。ランフラット特有の硬さも、しなやかさの中の適度なしっかり感としてプラスとすら感じた。
一方ランフラットではない18インチも、試乗車は新採用銘柄のタイヤを履いていた。こちらもカドの無い丸い乗り心地や、グリップの立ち上がりは穏やかながらも確かなライントレース性など、仕上がりは非常に良いバランスを見せていた。
これがレクサスの乗り味なのか
SC430についても記しておこう。変更点は、ETCユニットとSRSニーエアバッグが標準装備されたこと。しかし、実はこちらもタイヤに関してはGSと同じ事情で、乗り心地が随分と洗練されていた。トランクスペースのほとんどないSCの場合、ランフラットタイヤは事実上必須だが、従来それは乗り心地との大きなトレードオフだった。しかし、もはやその心配は不要だろう。
最初に書いた今回の一部改良の真価。それはレクサス車共通の走りの目指す方向の輪郭が、より明確なものになったということだ。言い換えれば、「レクサスとは、こういう乗り味だ」というのが、ハッキリ示されたということである。
8月にオーストリアのザルツブルクで「LS」に乗った時、実際には高いスタビリティを備え、応答性も悪くないのに、操舵感なり何なりという乗り味の部分で、その高性能をひしと感じさせる太い背骨が無いように思えて、僕は今ひとつ納得できずに終わった。それは従来のGSやISの、トヨタ的快適さより絶対的なスタビリティやハンドリングを重視したと思しきシャキッとした乗り味に、これがレクサスの目指すものかと理解していたからだと思う。
LS登場を前に世界はできあがった
しかし、改良されたGSに乗って、実は僕はついオーストリアで乗ったLSを思い出していた。ISの、特にバージョンLも含めて、その根底にあるのは、無用に刺激的ではない柔らかなタッチであり、しかもそれを、確固たるスタビリティやレスポンスと両立させるということなのだろう。今回の改良では、まさにそうした芯の部分が浮かび上がり、レクサスの目指す方向がハッキリ見えた気がしたのだ。そして逆にLS460の良さにも、改めて気付くことができたのだ。
もちろん、その乗り味に好き嫌いはあるだろう。特にドイツ車に乗り馴れた人には、最初の印象として薄味に感じられる可能性もある。しかし、ブランドに大切なのは、独自のしっかりした世界を築くことだ。従来、そこがやや弱く感じられたレクサスだが、LSの登場を前に宿題をしっかりこなしてきた。今回の一部改良は、そういう意味で、実はとても大きな意味を持つものだと感じられたのである。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年9月)
・レクサスGS430/IS350バージョンS/IS250バージョンL/SC430(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018624.html
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
NEW
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。 -
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?
2026.3.3デイリーコラム2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。 -
電動式と機械式のパーキングブレーキ、それぞれメリットは?
2026.3.3あの多田哲哉のクルマQ&A一般化された感のある電動パーキングブレーキだが、一方で、従来型の機械式パーキングブレーキを好む声もある。では、電動式にはどんなメリットがあって普及したのか? 車両開発者の多田哲哉さんに話を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.3.3試乗記「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。































