第278回:ダイハツ・ソニカちょい乗り
“熟年デートカー”は成功するのか?(小沢コージ)
2006.09.01
小沢コージの勢いまかせ!
第278回:ダイハツ・ソニカちょい乗り“熟年デートカー”は成功するのか?
■スタイルが“今ひとつ”な理由
最近、「乗るとなかなか良い」って評判のダイハツ・ソニカに乗ってきました。
まずはスタイルだけど、パッと見、正直「うぅーむ……」。写真ではキレイなのに、実物は今ひとつ印象に残らない。個人的にはオレが持ってたスバルR2の方がよっぽどカッコいいような……なんつって(笑)。
理由をサラリと分析しますと、この手のワンモーションフォルムって美しいっちゃ美しいんだけど、印象に残るためにはある程度のボリューム、つまり長さと幅がいるんだよね。
逆に言うと、いくら顔がキレイでも背が低い女のコが目立たないようなもんで、軽自動車のようなサイズになると、全体のプロポーションよりも、ある種トンがったディテールというかクセが必要になるという。その点、スバルR2とか三菱iの方が優秀なのだ。
■乗ると素晴らしい、ただし……
ところがどっこい、乗ると確かに素晴らしいのよ。ソニカ。
まず驚くのは温泉に浸かってるかのような絶妙なドライビング・ポジション。実はソニカ、最近の背高ノッポ系スタイルに反旗を翻してて、全高わずか1.47メートルと低め。
加えて、床とシートが適度に低く、決してピュアスポーツカーのように完全寝そべりポジションではない、まさにフロ桶で寝そべるようなリラックス姿勢が取れる。
シートそのものの出来も大変いい。開発陣いわく「長さにこだわり、サイズを大きめにした」だけでなく「体に触れている部分が広くなるような形状」にし、クッションに低反発マットのように少し沈んでから形状を保つようなタイプを使ってるから、快適かつ自由度に富んだものになっている。
要はダラっと体を崩しても乗れるし、ピシっと背筋を伸ばしても座れる。ついでにヒジカケの形状、高さも絶妙で不思議とどんな体型の人にも合うという具合だ。
一方、走りなんだけど、基本的にはフロアパーツやサスペンションパーツはミラとタントのいいとこ取りだそうで、一部専用設計。結構、力入ってます。
そしてハンドリングは鈍感すぎず、スポーティすぎず、ゆったりしすぎない、「大型スクーターのような味付け」。つまり乗り心地を犠牲にしない範囲で、ギリギリスポーティな足まわりにしてるってわけ。
パワートレインも新開発の直3 DOHCターボ+CVTで加速はスムーズかつ十分。その結果、軽としてはなかなかにカッコよく、なかなか豪華で、なかなかスポーティかつ乗り心地のよいクルマに仕上がっております。
ただしやはり、これぞ! という特徴はない。
開発チーフの堀さんいわく「ある意味、これは熟年向けデートカー」だそうな。それはまさに言いえて妙で、80年代にあったホンダ・プレリュードや初代ソアラの軽自動車版みたいなもんで、すべての性能がほどほどに詰まった、熟年層にピッタリな豪華な軽である。
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■トヨタにとっての初代ソアラのようなもの
ところがどっこい、販売結果は今のところ月販約2000台程度と爆発的ヒットには至ってない。というのも軽自動車はまだなんだかんだで実用性重視。豪華さはほとんど求められてないからだ。
言わば「豪華な牛丼」というか、「リッチなファーストフード」のような存在で意義がわかりにくい。実際、我がIM(勢いまかせ(笑))読者様も“熟年向けデートカー”と聞いてもあんまりピンと来なかったでしょう。
つまりソニカは、ダイハツ軽自動車技術のショーケースであり、チャレンジスピリットそのもの。トヨタにとっての初代ソアラのようなもんで「軽でもこんなにいいのが作れるよ」とアピールしてる部分もあるのだ。もしや今後、軽自動車枠が撤廃された時のことも考えているのかもしれない。
考えようによっては、いまどきこれほどジミで中身の充実したクルマもあまりない。まさに「買えばお得」「気に入ればお得」、率直にそう思ったダイハツ・ソニカなのでありました。
(文と写真=小沢コージ/2006年9月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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