オペル・ヴィータ スポーツ(5MT-オートマチックモード付き)【ブリーフテスト】
オペル・ヴィータ スポーツ(5MT-オートマチックモード付き) 2002.01.24 試乗記 ……169.0万円 総合評価……★★★まじめに遊ぶ
いわゆる2002年モデルから日本でも販売が開始された「5段マニュアル but 2ペダル」の1.2リッターモデル。「イージートロニック」と呼ばれるマニュアルトランスミッションは、電子制御式油圧クラッチをもつので、クルマがヒトに代わって見えないクラッチペダルを踏んでくれる。フロアのシフターを前後に動かしてギアを変えられるほか、オートマチックモードも備わる。
ヴィータおまかせのオートマコースは、お味まあまあ。トルクコンバーターをもつ通常のAT車から乗り換えると、ギアを変える間合いに少々とまどう。全力加速では、シフト時に乗員がお辞儀する……が、実用レベルではある。一方のシーケンシャルモードは、操作に対する反応はいいし、ギアを落とす際には、中ぶかしを入れて回転まで合わせてくれる。
ヴィータスポーツは、にわかに1.2リッターとは信じられないトルキーな「ECOTEC」ユニット、力強い加速、高い直進性、そしてややバタつく足まわりを特徴とする。ギアボックスに目新しい機構をもちながらも、そこはオペルのクルマ、遊ぶときもクソまじめ、な感じだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年10月のパリサロンで発表された3代目コルサ(邦名ヴィータ)。オペルのボトムレンジを担う3/5ドアのハッチバックモデルである。2001年2月1日から、「1.4リッター+4段AT」モデルの日本への輸入がはじまった。
2002年モデルは、「1.4リッター+4段AT」の「Swing」(3ドア)と「GLS」(5ドア)に、いずれも5ドアの1.8リッター「GSi」と1.2リッター「Sport」が加わった。トランスミッションは、GSiが5MT、Sportが5MTながら2ペダル、オートマチックモード付きの「イージートロニック」である。
(グレード概要)
ヴィータ スポーツは、日本におけるオペルのボトムレンジモデル。とはいえ、単なる廉価版ではない証に「イージートロニック」を搭載する。装備面でも1.4リッターモデルと遜色ない、というより、むしろ「スポーティグレード」として、ルーフスポイラー、ひとまわり大きな15インチホイール、スポーツインテリア(シルバーパネル、ホワイトメーターなど)といった演出が施される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
右/左ハンドルに対応できるよう、左右対称なパーツが散見されるインパネまわり。グレーを基調に実用一点張りでまとめられるなか、GSiとSportには、「スポーツインテリア」と呼ばれる、センターパネル、シフトノブ、ドアインナーハンドルなどにシルバーを配した内装が採られる。計器類はホワイトメーターだ。3本スポークの革巻きステアリングホイールには、オーディオ操作ボタンが付く。
(前席)……★★★
ヴィータSportのインテリアは、グレーのクロス地のみ。有無を言わさぬ硬いシート。形状、シート地とも質素なものだが、運転席にはシート全体を動かすハイトコントロールが装備される。背もたれの角度調整は、無段階で選べるダイヤル式。シートバックの内側側面にモノ入れのポケットが付く。丈夫なヘッドレストは、追突されたときに前方に動いて頸椎のダメージを減じる「アクティブヘッドレスト」だ。
(後席)……★★★★
3.8mのボディ長にして、最大限採られたリアスペース。座面長は短めだが、大人用として使える。前席背もたれの後ろがえぐられ、またシート下に足先が入れられるようにして、膝前空間を稼ぐ。背もたれが立ち気味なので、後席の乗員は背筋を伸ばして座る必要がある。当たり前のように3人分の立派なヘッドレストと3点式シートベルトが装備され、センターシートにおいても安全性に遜色ないのは、さすが。立派なクソ真面目。
(荷室)……★★
床面最大幅108cm、奥行き65cm、パーセルシェルフまでの高さ45cmと、後席の居住性アップにスペースを取られ、ラゲッジルームは日常ユースレベル。もっとも、リアシートが6:4の分割可倒式(ダブルフォールディング時、座面は一体で前に折れる)になっているから、荷室容量は260リッターから最大1060リッター(VDA方式)まで拡大可能だ。それにしても、追突時に荷物がキャビンに飛び込まないよう、後席シートバックを固定する金具のゴツイこと! 使い勝手に考慮して、ハッチゲイト内側には取っ手が付く。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
オペル自慢のECOTECツインカム搭載。体感上は、75ps、11.2kgmというスペック以上にトルキー。加速のカギとなる5段MTのギア比は1.8リッターモデル「GSi」と同じだが、(当然ながら)ファイナルは3.735から3.944へと大幅に落とされる。100km/h巡航時のエンジン回転数は約3400rpmとやや高め。注目の「イージートロニック」は、LUKとボッシュの共同開発。渋滞にはまった際には便利なオートマモードをもつ。マニュアル(シーケンシャル)モードにしていても、条件が合えばキックダウンが効くし、エンジン回転数がレブリミットに達すればシフトアップする、優等生なセッティングだ。また、弱めながらクリープもする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
小柄なボディに似合わず、どっしりした乗り心地。高速道路での直進性は高い。一方、街なかではややバネ下がドタつく。少々荒いと感じるヒトがいるかも。ちなみに、ヴィータ スポーツのタイヤサイズは、1.4リッター車よりひとまわり大きな185/55R15。1.8リッターモデルと同じだ。ステアリングは正確で、挙動は安定志向。ただし、ピリリとホットなコンパクトスポーツ、を期待すると、ややサビ抜き。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月22日から23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年
テスト車の走行距離:2467km
タイヤ:(前)185/55R15 82H/(後)同じ(いずれもMichelin Energy)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:489.6km
使用燃料:42.3リッター
参考燃費:11.6km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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