第271回:英国グッドウッドから夢の報告
祝! 突然オレが“伝説”になった日(小沢コージ)
2006.08.01
小沢コージの勢いまかせ!
第271回:英国グッドウッドから夢の報告祝! 突然オレが“伝説”になった日
■急遽ドライバーとして出ることに
いやー、まいったよ、まいりましたっ! 遂に不肖、小沢コージが“伝説”になる日が来ちゃいました。それも突然に。
というのも先日ね。去年に引き続き毎年イギリス・サセックス州で行われてる世界最大級のヒストリックカーイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」に行って、最初は当然“観る側”だったわけだけど、急遽とある運命的出来事に遭遇、“出る側”、つまりドライバーとして出ることになってしまったのだ。
今まで日本人で出たのは確かトヨタの元副社長の斎藤明彦さんとか元F1ドライバーの片山右京さんとか、その手のVIPしかおらず、おそらく日本人ジャーナリストでは初! なんという幸運! なんという栄誉! オレってやっぱツイてるぅ♪
ちなみに運命的出来事っていうのは友人でもあるソニー・プレイステーションの『グランツーリスモ』プロデューサーの山内一典クンとの出会いで、要するにオレが出たクルマの枠は元々彼のもので、彼が3日目に帰ることになったがゆえオハチが回ってきたってわけ。
しかもオレは前もって山内クンに「もしや助手席に乗れるかもしれないから」って言われてグッドウッドにメットとツナギとシューズとグローブを持ってきておりそれが幸い。でもまあその昔、レーサーは自分が出ないレースでももしもの時のためにメットとツナギは持ってきとくって話があったけど、ホントだよね。幸運はいつ降ってくるかわからない。
■モス、スチュワート、サーティース、マンセル!
さて乗ったのはイベント最終日の日曜日の午後のピーカン照りのなか。結構、ドライバー登録に手間取り「やっぱりムリか?」って瞬間もあり、出れると確定した時は、観客からいきなり俳優になったようなもんで一瞬にして舞い上がりましたね。
とにかくそこはスターの宝庫! 今回は四輪界からは大御所のスターリング・モスをはじめ、ジャッキー・スチュワートにジョン・サーティース、そしてななんとグッドウッド初登場のナイジェル・マンセルも!
現役ドライバーでもジェンソン・バトンにジル・ド・フェランとそうそうたる顔ぶれで、ニ輪界からもランディ・マモラにロン・ハスラムなどなど有名ドコ勢ぞろい。まさしく“モータースポーツ界のオーシャンズ11”って感じで、そのなかで走るオレっていったいなんなのよという。NHKの紅白歌合戦で突然歌うことになっちゃったようなキブンかなぁ。
ちなみに乗ったのはジャガー本社のヘリテッジ部門が所有するアルペンラリー2連勝の50年式ジャガーXK120の実車で、元々創業者のサー・ウィリアムズ・ライオン氏の娘夫婦が所有していた超貴重車。
さらに同一グループで走ったのは元F1チャンプのジャック・ブラバム! ブラバムさんはなんと自ら最初にワールドチャンピオンシップをとったマシンとそっくりのクーパー・クライマックスT51に乗っておられ、まさに夢の組み合わせでありました。
そして会場は知る人ぞ知るイギリスのクルマ好き貴族のマーチ卿の自宅敷地内で、現行フォーマットでイベントが始まったのは93年からとはいえ、元々36年からモータースポーツをしていたという由緒ある場所。そのワラの塊ごしにコースとマシンを観る風景はまさにレース版フィールド・オブ・ドリームス! これまた夢のなかの世界でありました。
■“偉大なるコスプレ・イベント”
一応軽くインプレいっとくとXK120は、レーシングカーとは言え、基本は普通の足元の広い乗用オープンカーで、その3.4リッターDOHCのXKエンジンも5200回転がレブリミットの今となっては普通の奴。ギアも4速のHパターンで多少入りがシブめでゲートがあいまいなほかは今のと一緒。レーシングカーのわりにトルクも太めで扱いやすく、あえて言えば文句はハンドルがノーフィールだったくらい。
一方、コースはタイムを計測するとはいえ、1.16マイルの多少曲がった上り坂を一台一台思い思いに走るエキジビションスタイル。特に緊張はしなかったけど、最初はタコメーターが逆に回るわ、ブレーキが意外と効かないわでちょっとだけドキドキ。っていうかこんなんでコースアウトしても、なんのジマンにもならないんでゆっくり走りましたけどね。ふぅ〜。
しかしさ、有名ドライバーと一緒に歴史的マシンに乗って、アクセルふかして“同じ釜の飯”ならぬ、“同じアスファルトの上”を走る気分は格別。思わず走り終わったら、クーパー・クライマックスに向かって「ヘイ、ジャック!」とか言いたい気分でした。やらなかったけど(笑)。
まあとにかくモータースポーツはサッカーやテニスと違って、マシンに乗って動かすだけでかなりの擬似ヒーローキブン。つくづく偉大なるコスプレ・イベントだと思いましたね。ブラボー、グッドウッド!
(文と写真=小沢コージ/2006年8月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。
